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オイリュートの魔法の本 9
石鹸が買えなければ、しばらくは洗濯物を煮沸することで凌げばいいが。
今日は石鹸などの雑貨の他に、とても大事な物を買いに来ていた。
その為に2,000ゴールドもの大金を持ち歩いていたのだから。
店主が、呆れたような顔をしたのがシャルルにも見えた。
シャルルはどうでもいい男に2,000ゴールドの入った布袋を差し出し、
「これでその本を私に売ってくださいませんか?」
と優しく微笑んだ。
男は飛び起き、女の子の気が変わらないうちにとばかりに布袋をひったくり、あとは頼んだぜ!と店主の肩をポンと叩くと、
通りの雑踏の中に姿を消した。
「良かったのかい?」
ポカンとするシャルルを見かねて店主が声をかけた。店主の手には男が置いていった分厚く高そうな、見たこともない紋様が描かれた表装の本があり、シャルルに差し出している。