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餃子子ちゃん

作者: 谷まどか

 餃子子ぎょうざこちゃんは小学6年生。餃子子ちゃんは前髪のだいぶ上で、ぱっつん、と切り揃えられていて、その横横一直線に真っ直ぐな前髪が、横向きの餃子に似ていた。顔もかわいい方なんだけど、なんとなく餃子みたいにほんの少しヒシガタっぽい顔の形だった。名前も「あん」っていうかわいい名前があるのだけど、なんだか餃子子ちゃん、の方がかわいいという理由で、本人の了承も得ずにいつの間にか、杏ちゃん、と呼ぶ者はおらず「あー、3組の餃子子ちゃんね!」と言われている。本人も餃子が好きだし、餃子ってかわいいからそれでいいやあ、と思っている。

 「行ってきまーす」

餃子子ちゃんが元気よく出かけて行った。これは毎朝の光景で元気よく「おはよう!」と家族に挨拶、「いただきます」「ごちそうさま」とにかく餃子子ちゃんは元気が良い。おばあちゃんの教えである。

「餃子子、挨拶をされて嫌な気持ちになる人は1人もいないよ、それに挨拶をすると自分も元気になる。だからどんな時でも、おはよう、いただきます、ごちそうさま、ありがとう、おやすみなさい、これは必ず言うこと。どんな時もね」

勉強が一番になれなくても、挨拶が出来れば損することはない、むしろ得をするから守ること。おばあちゃんはいつもそう言っていた。だから餃子子ちゃんは元気が良い。

「やよいちゃん、おはよう!」

「餃子子ちゃん、おはよう!宿題やってきたー?」

「うん、やってきたよー!やよいちゃん今日もかわいいぃぃ!」

やよいちゃんは餃子子ちゃんの友達でご近所さん。実は転校してきたばかりの時は小さい声でも挨拶が出来なかった。しかし、餃子子ちゃんと一緒に登校するようになり、元気に挨拶する餃子子ちゃんの様子を見ているうちにやよいちゃんも元気よく挨拶出来るようになった。餃子子ちゃんとやよいちゃんが「ふふふ」と笑い合い、昨夜のお笑い番組のここがおもしろかったとか、あのギャグは最高だったと話しながら歩いて学校に向かう。

「おす」

話しかけてきたのは同じクラスのりゅう、だった。りゅうは少年野球に所属して野球をしている。だから日に焼けて真っ黒く、練習や大会で忙しい日々を送っているらしい。りゅうはなにかと餃子子にちょっかいを出してくる。以前に餃子子を驚かそうとして、間違えてやよいちゃんを押して怪我をさせた事がある。転ばせたのだ。その時の餃子子ちゃんと言ったら威勢が良くてかっこいい。

「ちょっと、後ろから押すなんてどうゆうつもり?名前はりゅう、だったわよね?りゅうくん、もし、その子が転んで怪我をしたら責任を取れるの?やよいちゃんは女の子だよ。お顔に傷が付いたらりゅうくんはどうするの!」

りゅうは黙った。

「やよいちゃんにごめんなさい、って心を込めて伝えてみて」

餃子子ちゃんがりゅうに諭すと、りゅうは

「やよいちゃん、本当にごめんよ。転ばせるつもりはなかったんだ。怪我がなくてよかった。本当にごめん」

その日からりゅうも仲間に加わって3人で遊ぶことも多くなった。

 学校に着き、朝の会が終わると1時間目は国語だったが担任の本田先生が今日は休みだったので、6年生は花壇の手入れや世話をする事になった。餃子子ちゃんは花壇が大好きだった、球根に種に、前の年にみんなで植えたものが翌年にはきれいに花を咲かせている。花壇作りが得意なおばあちゃんの口癖が植物の世話は適当には出来ない、だった。黙々と手際よく畑や花壇のお世話をするおばあちゃんの手は、とても真っ黒くゴツゴツしていて餃子子は大好きなのであった。あまりにも太い指なので腹に糸が通さずに(目も悪くなり)

「餃子子や、ゼッケンを縫い付けてあげるから針に糸を通しておくれ」

おばあちゃんに頼まれて針に糸を通すのがとても好きなのだ。

だから、立派な手になるまで花壇の手入れは手を抜かずにやる事!と心の中で決めている餃子子ちゃんであった。

 そして授業をいくつか済ませて、いよいよ生徒たちがお待ちかねの給食の時間だ。今日は月に一度の「リクエストメニュー」の日だった。リクエストメニューとは児童に月に一回、食べたい給食メニューのアンケートを行う。そして毎月1人だけの選ばれたメニューはリクエストメニューの日に採用されるのだ。だから、みんな自分のリクエストメニューが採用されているかドキドキした。「給食便り」というお便りにもメニューは「はてなマーク」で伏せられておりサプライズ感があるのも子供たちに人気の理由だった。今日のメニューは、、、。

「皆さん並んでください」

給食当番が声をかけた。みんなそわそわして配膳の列に並ぶ。今日のメニューは!なんと餃子子ちゃんの大好きな「餃子メニュー」。もちろんリクエストしたのは餃子子ちゃん。焼き餃子に水餃子、デザートは杏仁豆腐だったのでみんな大喜びだった。

 偶然にも今日は餃子子ちゃんが日直の日なので「いただきます」を言うのは餃子子ちゃんの役割だった。皆、席に着く。そして餃子子ちゃんが今日も心を込めて大きな声で言う

「それでは皆さんご一緒に手を合わせてください」

「いただきます!」

元気の良い餃子子ちゃんの声が教室に響く。みんなも大きな声で

「いただきます!」

と言った。そしてみんなで一斉に机の上に並んでいるツヤツヤふっくらとした餃子を頬張る。楽しい食事の時間が始まった。

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