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付喪神と過ごす日・2

実はプロットとか特に定めず「ロリババー!!座敷童ー!!」だけで書いてるので細かい内容が定まってない(バカ)

「さて、言い訳くらいは聞いてやろう」


ところ変わり店の裏手にあるカフェスペースで、漱は先ほどの店員、九十九奏のじとりとした瞳を受けていた。

肩にはかからない程度に切りそろえられた、サラリとした黒髪に、黒い瞳。端正で、中性的な顔立ち。美人、とそう言えるその人に、冷たい瞳で見つめられるのはとても居心地が悪く感じる。


カフェスペース、と言っても簡易的な屋根を設置した場所に机を並べただけの場所。


そこで向かい合う様に奏と漱は向き合って座り、漱の隣にちょこんと、ヤツカが座っていた。


「お前俺をなんだと思ってるんだ」


「ロリコン」


「お前友達をもう少し信じろよ」


にべもなく告げられた言葉に漱は嘆息をした。


そう、友人。中学時代から付き合いのある友人が彼、九十九奏という男で、そして。


この世界で綴られるはずの物語の『主人公』が、今、漱の目の前にいる男だった。



***



「ふぅん、へぇ、従姉妹ねぇ」


まさか馬鹿正直に付喪神です、と言えるはずもなく、漱が苦し紛れに絞り出した言葉がそれだった。


いや、素直に言えば、ヤツカが空想の存在であることを、奏は疑わないことを、漱は知っている。


それは未だに一線を引いているように感じる彼との、友人として共に過ごした期間の問題ではなく、ゲームでの彼の設定面からのことだ。


「それにしては随分……」


訝しむように奏は漱を見つめると、その視線を一瞬ヤツカの方へと向ける。

向けられたヤツカはキョトンと、可愛らしく首を傾げて奏を見つめる。


疑って、その上で見透かすようなその視線には薄ら寒いものがあって、漱は思わず背筋を伸ばす。


すん、と鼻を鳴らせば奏は小さく息をついた。


「ま、そうだとしてもこんな小さい子に"あるじさま"って呼ばせるのはどうなんだ、って感じだけどな」


「テレビの影響でも受けたんじゃないかなぁ……」


「まあ小さい子供ならあり得る話だけどさ」


そう言うことにしといてやる、と態とらしく溜息をついたあたり、この件に関しては触れないことにしたらしい。

しれっと注文したパフェをペロリと平らげた奏は、立ち上がる。


「その子はあまり人目に出さない方がいい」


そう、すれ違い様に漱の耳元で囁くと、奏はこくり堂の中へと戻っていく。


残された空の器と伝票を見つめると、漱は緊張の糸が切れたのか、一気に息を吐き出した。

文句は色々と浮かぶが、仕方ないかと気持ちを切り替える。


「すいませーん、お会計お願いしまーす」



***



かぁかぁと鴉が鳴いていた。日は沈み始め、空は茜色に染まっている。


結局あのあと、買い物を済ませた漱は、両手に中身が詰め込まれた買い物袋を提げ、美味しそうにクレープを食べるヤツカと帰路を辿っていた。

両手にクレープを持ってパクパクと啄むように食べる姿は非常に愛らしく、見ているだけで和んでくる。


「あるじさま」


ふと、クレープを食べるのを一旦やめたヤツカが、漱の方を見た。漱が答えるようにヤツカの方を向くと、止めていた言葉の続きを紡ぐ。


「あのおかたは、なにものなのですか?」


その言葉には、奇しくも奏が自分達に向けていたのと同じような、疑念、それに警戒が含まれている。

その様子に漱は苦笑を浮かべる。


ヤツカはなんとなくだろうが、奏の異質さを感じ取っているのだろう、と漱は察した。

同様に、奏はヤツカの存在を察しているようであった。


お互いの懸念はどちらも正しくはある。弱くとも神の一柱がほっつき歩いているのは警戒に値するのだろうし、奏も真っ当な人ではない。


『マガツキノウタ』と言うゲーム内の設定、シナリオにおいて、奏は『マガツキ』と呼ばれる、怪物に取り憑かれながらも調伏し、その力を従える異能者でありながら、偉人の記憶、知識を持ち、その力を再現できる特異体質者、『再現者』と呼ばれる、前世を持つ人間。


そして、『勾一族』と呼ばれる、怪物殺しのプロフェッショナルの血族の一つ、浦曲家の長男である。


(しかもあいつ、安倍晴明の『再現者』じゃなかったかなぁ……)


思い返して、だからこそ、神秘の塊であるヤツカが正体を見破られたのは納得がいく。

実際に、ゲーム上では人に化けた妖や、怪物に取り憑かれた人、『禍ツ人(まがつびと)』を即座に見分けるなどの芸当をこなしていた。

相当擬態に精通している怪物や神でもない限り、その正体を隠し通すのは不可能に近い。


とは言え、彼は自分がそのことを知ってることを知らない筈なのだから、ごまかしたのはおかしくはない。


でも、少し解せないのは、人を遠ざけ、親しい仲を作ろうとしてない彼と、それなりに親しくなれたことだ。

漱の持つ、前世の記憶上、少なくとも本編開始後、彼が学園の高等部二年生になって物語が始まるまでに、彼が人を寄せ付けなくなってからはそんな人間はいなかったはずだ。


だから漱は、ゲームのシナリオについて深く考えるのはやめにした。これはゲームではなく、現実なのだから、設定も、ストーリーも参考程度でいいだろう。


「あるじさま?」


再度ヤツカに呼ばれて、また考え込み過ぎていたことに漱は気付いて、ヤツカの目を見て、笑って見せる。


「ああ、ごめんごめん。答えてなかったな。奏が何者か、ねぇ」


「ええ、あのおかたは、なんとも、ちぐはぐに、かんじますゆえ。きけんでは、ないのでしょうか」


問いかけるヤツカは不安げで、怯えているようにも見えた。だから漱は、安心させるように、袋を片腕に通し、残りを手に提げて、片手を開けると、その頭を優しく撫でる。


「大丈夫だろ、多分な。何者だろうと、俺の数年前からの友達なことは変わらないし」


「さようで、ございますか。であるならば、あんしん、でございますね」


「だろ?」


そう、友達だ。主人公でも、アホみたいに強くても、普通じゃなくたって、漱の友達であることには変わらない。


漱の返答にふわりとヤツカは柔らかな笑みを浮かべる。



***



かちり、かちりとピースははまり、歯車は回り出す。


くるくる、くるくる。


まだ、全ては予定調和でしかない。

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