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魔狩り集会

「あるじさまあるじさま!げんだいは、おいしいものが、たくさんございますね」

「だろ?」


(キャッキャしながらお茶会する2人)

あの事件の翌日、委員会で水上先輩と顔を合わせたが、どうも事件のことを忘れている様子はなく、奏に鬼電を掛けた結果、半ギレになりながら電話を切られた挙句、その後家に出撃されぶん殴られた後に説明を受けた。


水神の血を継ぐ家にして、神の器たる家系、水上は水の神。代々瀬織津姫(せおりつひめ)のヨリシロとして適性を持つ、虚の庭のことを知る家系である、とのことだった。


奏もこの事は知らず、水上先輩自身もこの事を知らなかったらしいが、なんでも先輩自身先祖返りだったらしく、ご先祖様……宇治の橋姫の血が目覚めた、と言う事で記憶処理は行われなかった、との事。


ちなみにこれは後からバイト先の店長で水上先輩の母親でもある梢さんから補足して貰ったことでもある。


店長アンタ、ヨリシロだったんですか!と叫びたくなったが、必死に堪えた自分を褒めた。なお俺がマガツキであること自体は薄々勘付かれていて、先輩経由で完全に確信を得た、とのことだった。まあ、だから連絡をくれた、ということだったのだが。


そんなこんなで時は流れて11月も末の頃。紅葉も枯れ落ちていき、枯れ木が増え始めた今日この頃。寒さも増してきて、冬の訪れを強く実感する。


吹き付ける風も冷たく、手先も悴んでくるようになってきて、暖かい部屋の中から出たくなくなる。


「冷えるなぁ……」


本日は土曜日、学園は普通に休みである。であるというのに俺は吹寄学園まで訪れていた。


いつもの学ラン……ではなく今日は黒いフード付きの紺色のジャケットに、薄茶色のカーゴパンツ。このジャケットも都合良く胸元にポケットがついていたため、ヤツカの分身を潜ませている。


他の中学、高校と同じように、ジャージ姿の生徒達が声を上げながら部活動に勤しむ姿を横目に見つつ、そのまま昇降口へとまっすぐに向かう。


校舎内でも、ちらほらと学園生の姿が目に入る。吹奏楽部と思しき、楽器を運ぶ生徒達や、恐らくは生徒会だろう、腕章を腕に付けた生徒達が廊下を通る姿が見えた。


それらの生徒達は自分と同じように、私服姿のようで、だからこそ、制服を着た姿は逆に目立つ。


「おはよう漱、悪いな呼び出して」


「本当にな、学校なら平日の早朝か放課後でいいだろうに」


使われてない、校舎の端の方の空き教室前、そこに、今日俺を呼び出した張本人、九十九奏が立っていた。


悪いな、と言いつつも特に悪びれた様子がない彼女に悪態を1つ吐けば、苦笑が返ってくる。


「仕方ないだろ、予定を合わせるのも大変なんだからな」


肩を竦めて見せた奏は、そう言って、空き教室の扉を開く。


教室の中には今は使われていない机や椅子が並べられていて、その中に複数の人影があった。


背丈の高い、何処か軽薄そうな男が1人、育ちの良さを感じさせる、深窓の令嬢と言った感じの少女が1人、見覚えのある人影……というよりは水上親子の計4人。


「まあ、とりあえず顔見せ、ってことで」


若干一名を除いて、『魔狩り』を生業とする超人が、その場に集まっていた。



***



水上親子以外の2人は初めて会う。けれど、2人のことを、俺はよく知っていた。


男の方、暗い茶髪を耳にかける程度まで伸ばし、前髪を真ん中分けした、札のような飾りのついたイヤリングをつけた、190はあろうかという高身長の彼は勾本家にその籍を置く傑物、勾柘榴(まがりざくろ)だ。


がしゃどくろのマガツキであり、彼は自ら望んでがしゃどくろにその肉体を差し出し、気に入られた結果、マガツキとなったタイプであり、シナリオ中ではその力を存分に奮い、奏のために暗躍し、時に障害として立ち塞がった、『九十九奏の元兄貴分』、それが彼だ。


奏が心を閉ざすことになった過去にガッツリと関わり、そのことを未だに後悔している、そんな男だった。


奏への償いをするためだけに、分家筋から本家に籍を移されるまで成り上がった執念の人。


対して少女の方、胸元辺りまで亜麻色の髪を伸ばした、翡翠の瞳を持つ少女は、この中ではダントツで背が低い。とはいえ、160近くの背丈はあり、またその顔つきは少し大人びている。


コノハナサクヤヒメと契約した、神をその身に降ろせる、と言ったヨリシロと呼ばれる特異体質者。魔狩りの任を請負いながらも、マガリを襲名しない神仏に関わる側の人間。


神の代行者、あるいは神の器としての適性者が彼女、『マガツキノウタ』におけるメインヒロインのうち1人、木暮咲耶(こぐれさくや)


水上親子はさておき、この津雲町における、オカルトに関わる最高権力者、それがこの2人だ。


「ふーん?君が九十九君の友人で、妖刀遣いか」


真っ先に口を開いたのは柘榴だった。見極めるように、髪と同じ色の気怠そうな(まなこ)を細めて、俺へと視線を向ける。


「素人だねぇ……、君本当に妖刀を屈服させたのかい?」


柔らかく、親しみやすい、けれどどこか胡散臭さが拭いきれない調子で投げ掛けられる疑問に、俺は苦笑を返す。


夢の中でレスバしてます、なんて言っても信じてもらえる気はしない。それに、一般人が妖刀に憑かれて無事、なんて皆無に近しい事案、疑うなという方が無理であるので、疑念を抱かれるのは仕方のないことだと割り切ることにする。


「屈服させられた……かはともかく、俺を乗っ取ろうとする動きはもうないですし、自由に取り出せますよ」


口頭だけでは信用できないのだから、と指先から小さな刀を出して、引っ込めて、とリズムを刻みながら繰り返してみせる。


「柘榴さん、妖刀なんて絶望と憎悪の塊に呑まれたらその時点で理性なんて吹き飛ぶんですから、目の前に彼がいる、その事実が信じられない事実を保証しているんですよ。わかりきったことは聞かないでください」


時間の無駄です、と淡々と語る姿は、ゲーム序盤での彼女の周りへの対応と何ら変わりがない。ハキハキと、それでいて辛辣な物言いは特定の層に大ウケしていた。

そのことを思い出して、少しばかり懐かしい気持ちになっていると、柘榴は大口を開けて笑い、それもそうだと賛同する。


「なっはっは!災難だったねぇ漱。うちの娘の時も含めて」


「お、お母さん!!」


そんな様子を眺めていた店長は愉快そうに笑い、付け足された言葉に、水上先輩は顔を赤くして、店長の肩に手を置くと揺さぶって余計なことを言わせないようにする。


騒がしく、カオスになり始める空気感は、しかし次の瞬間には一気に引き締まり、音が消えたような錯覚すら覚えた。


「良い良い、若人達はかくあるべきであろうからの」


柔らかく、可愛らしい声に反して、どこまでも重苦しい言葉に、誰もがその動きを一瞬止める。


そうして、ゆっくりと視線を動かすと、ここにいるはずのない人間がいた。

伊勢斎宮、そう呼ばれる神子服に身を包んだ、小さな人影、1人の少女。

腰まである長い銀の髪に、勝ち気な印象を受ける少しつりあがった眦に、こちらに真っ直ぐ向けられた、魂まで見透かされそうな真っ赤な瞳。


「ご足労頂き、ありがとうございます、日輪殿下(ひのわでんか)


__皇位継承権第一位保持者、既に虚の庭周りの権限を掌握した狡猾な皇女にして、天照の器、皇族である日輪が、そこに立っていた。

Qなんで橋姫の血筋なのに瀬織津姫なの?

A宇治の橋姫と同一視されてるからです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 皇女殿下…自然とのじゃロリとして想像してしまうのは、この作品のヒロイン()のロリ率の高さゆえか…
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