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付喪神と過ごす日・1

かんたんなぷろふぃ〜〜る


ヤツカ・座敷童な幼女。作中では少女、で評価は統一してある。身長は142センチ、おかっぱ和服ロリだぞ!!!


八束漱・高校一年生、一般人さ!身長は180はあり、ガタイはそれなりに良い、程度で背丈の高さ以外は特筆すべきとこがない。成長期は中2で終わったらしい。

ちゅんちゅんと鳥の囀る声と、蝉の大合唱に、深く沈んでいた意識が引き摺り出される。

朝日は既に昇っていて、むわりとした熱気が肌にまとわりつく。

漱は不快そうに表情を歪めて、のそのそと立ち上がる。


鼻に届く、食欲をそそる様な、出汁と味噌の香りに誘われる様に、寝室から居間へと出る。


居間の中央に置かれたちゃぶ台には、出来立てなのだろう、ほかほかと湯気を立てている白米と味噌汁、卵焼きに切干し大根、それとアジの塩焼きが並べられていた。


「おはようございます、あるじさま。よくねむれましたか?」


「ん……、おはようヤツカ。お陰様でぐっすり眠れたよ」


ちょこんと座っている小柄な少女の声に、漱は柔らかな声音で答える。


彼女と出会っておよそ一月。共に暮らし始めてそれだけの時間が流れだからだろうか。

漱の中で、ヤツカの存在は自分の生活にすっかりと馴染んでしまった。


だから今日も、漱は彼女の対面に座って、手を合わせる。


「「いただきます」」


二人分の声が重なった。そうして、食事を手に取る。


こうして今日も、1日が始まる。



***



漱が越して来たこの町、津雲町は見渡す限りの田畑が広がる田舎町、という言葉がぴったり合う。

山と森と田畑に囲まれたこの町は、それゆえに娯楽施設というのは乏しく、山や森の中が地元の子供達のメインの遊び場で、次点が山の麓の商店街となる。


漱が住む家は商店街から離れた場所、森と田畑の境目の様な位置にポツンと建っている。


そんな、微妙な場所にある家になぜ越して来たか、と問われれば、この家が父親の実家であり、今は父親の所有する物件となっているから、というのが大きい。


一人暮らしに憧れた漱は、中学生の夏、ごねにごねて、遡れば江戸の時代から先祖代々住み続けていたらしいこの家に一番近い学園に通う事を許してもらった。聞けば祖父母の代には電気やガス、水道などのインフラはきちんと整備されていたらしく、家賃の問題をクリアするにはここしかないと、必死にごねた漱の粘り勝ちだった。


けれども、まあただでとは行かず、その条件として出来うる範囲は自分で家の修繕、補修をする事と、生活費はできうる限り自分で稼ぐ事、この二つが親によって指定された。


そうして、やっとこさ修繕を終えた矢先でヤツカと出会った。それが一月近く前のこと。


ヤツカに改めて話を聞けば、漱が住み着いて、また家を直した事により、力をある程度取り戻した、という事だった。


「まあ付喪神って物に付くものだしなぁ……」


「そうでございまする、あるじさま。わたくしども、つくものかみは、ものにやどり、あるじにつかえるものです。ひとがおらねば、わたくしどもは、うまれることすらできませぬゆえ」


会話の内容を思い返して、思わず呟いた言葉に、隣を歩くヤツカがこくりと頷いて答える。


その言葉が、きっと彼女が、漱を慕ってくれている理由なのだ。そう考えると、少し寂しい気持ちになってくる。

気分を変える様に、苦笑をこぼして、道の先に見えて来た自分達の家と同じ様に、ポツンと寂し気に建つ、木造の建物に意識を向ける。


「ヤツカ、ほらあそこ」


「りっぱなたてもの、でございますね。あれが、あるじさまのおっしゃっていた、"おみせ"でございましょうか?」


「そうそう、あそこが『万屋(よろずや)こくり堂』」


こてり、と可愛らしく首を傾げて、漱の顔を見上げるヤツカに、柔らかな笑顔を返す。

そして、それがこのまだ暑い日中に、ヤツカを連れて外に出た理由であり、目的の場所。


まあ、簡単に言えば買い物に来ただけである。



***



『万屋こくり堂』は4階建てのログハウスだ。コンビニ四つ分程度の広さの店内は階層ごとに違う商品が売ってある店だ。

1階は食料品、2階は衣類、3階は文具と本、4階は生活雑貨。

品揃えもそれなりに良いため、商店街から離れて暮らしている周辺住民がよく利用するのでそれなりに繁盛している、とは店主の言だった。


飾り気なく店名が刻まれた扉を引けば、ヒヤリとした空気が肌を撫でる。

店内は空調が効いており、中に入り扉を閉めれば、肌に滲んだ汗が徐々に引いていく。


「いらっしゃいませー」


カウンターの方にいる店員の声を聞きながら、漱はヤツカの小さな手を握って、先導するようにまっすぐにフロアの奥の方に設置された階段に向かう。

規則正しく並べられた商品棚の間を抜けて、テンポ良く階段を登り、2階に足を踏み入れる。


「あ」


2階、衣類のコーナーに足を踏み入れた途端、漱は思わず、と言った様子で声を漏らした。キョトンと、不思議そうにヤツカもそちらを見れば、身体を少しばかり強張わらせる。


「いらっしゃいませー」


こちらに気付いたのか、視線の先にいた、『こくり堂』とかかれた緑のエプロンの人物は、その中性的な顔に笑顔を浮かべてこちらを視界に入れて、ピシリと固まった。


「……」


「……」


「あるじさま……?」


ヤツカの言葉に、目の前の店員はすぐさまにポケットに手を伸ばし、携帯を取り出した。

その行動の意味を漱はすぐに察して、慌てて店員を止めにかかる。


「待て奏。お前は勘違いをしている」


「……もしもし警察ですか?」


「やめろって言ってんだろぉ!?」


「あの、あるじさま、おしりあいのかた、でしょうか?」


止めようとする少年、通報しようとする店員、そしてあわあわとした様子で戸惑う和服の少女。


控えめに言ってカオスだった。

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