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むちむちお姉さんと共同作業

「はい、未返却の本のデータ、印刷してきたよ」


作業を開始して数分後、水上先輩は一枚の紙を持って来てくれた。

ぴらぴらとそれを揺らしながらやって来た彼女は、俺の隣に座ると、そのまま紙をこちらに差し出してくる。


「有難うございます」


「いえいえ、えーと、中等部のからやってくれてるんだ。じゃあ私は逆からやっちゃお」


俺は礼を言ってそれを受け取ると、先輩は大学部の生徒の貸し出しカードに手を伸ばすのを横目に紙面へと目を向ける。


と言っても特に変なことが書かれているわけではなく、彼女が言った通りまだ返却されていない、つまりは貸し出し中の本のタイトルと日付が記載されており、いつ、何が貸し出されたかがわかるようになっている。


ならこれだけ確認すればいいのでは?となるのだが、返却されているのに貸し出したままになっていたり、またその逆が起きるためアナログ、デジタルでそれぞれ記録を残して時折こうして確認するようにしている、ということらしかった。


この辺り、ゲームでもこういうシーン自体はあったのだが、細かく説明を入れていたわけではなく、これを知ってるのは委員会活動の始めの頃、まだ図書委員長ではなかった水上先輩に教わったからだ。


パッと見るだけでわかる貸し出し数の多さ、これを確認していく必要があるのか、と考えていくとかなりげんなりしてしまうが、放置して後から文句を言われるのも癪なもので、紙を一度テーブルの上に置いて、作業を終わらせるために手を動かす。


貸し出しカードの山から数枚取って、返却済み、あるいは何も書かれていないなら箱へ、貸し出し中の本がありまだ返却されていないなら机の上に。


返却済み、未返却、未返却、返却済み、まっさら、まっさら、まっさら、まっさら。


この学園の中等部の生徒、本を読まない人間、あるいは図書室で本を借りない人が多いのだろうか、半数くらいは2〜3冊借りた程度、もしくはまっさらな図書カードが結構存在している。


「大学部の先輩達はみんな借りてるみたいだねぇ……。この学園の大学部講義はともかく課題面倒らしいし、資料用とか論文用かな」


「あー、その辺り理由で大学部の生徒、生徒会とか委員会に入ってないんですっけ?」


この学園、中高大一貫ではあるものの、ゲームにおいて大学部の生徒、つまるところ大学生が顔を出すことは殆どない。

学園内においての生徒会、及び委員会活動、部活動も高等部、中等部の生徒ばかりであり、大学部に関しては基本的には一切関与しない。


その理由が単純な『レベルの高さ』にある。校風の自由さ、規律の緩さに反して大学部に上がった途端に一切の容赦がなくなる。


課題、試験、そのどちらに関しても一定の基準を満たさなければ即座に退学となるらしく、その基準の高さのせいで大半の生徒は他にかまける暇もなく日々勉学に励んでいるらしい。遊び呆ける大学生、というのはこの学園に限っては存在しないものである。


そのかわりに大学部においては学費はタダ同然で、学部も豊富な為、学ぶ、という一点においては良いところなのかもしれないが。


「そうだねぇ……。っと、こんなところかな?」


とんとん、と貸し出しカードを纏めて箱に入れる水上先輩。


「こっちも終わり……っと。あとはリストと照らし合わせれば取り敢えず確認は終わりですかね?」


未返却分のリストを目の前にあらためて置けば、テーブルの上に備え付けられていたボールペンを取り出す。


すると水上先輩は、仕分けされた貸し出しカードを手に取った。


「んじゃあ、私が読み上げてくからチェックお願いしてもいい?」


「お願いします」


どうやら読み上げてくれるらしい。


有難い申し出にそう返して、こくりと頷く。そうして、水上先輩が淡々と貸し出しカードに書かれた本のタイトルを読み上げて、そのタイトルと未返却の本のデータのものと間違ってないか、その照らし合わせを進めていった。



***



読み上げて、チェックしてを繰り返して10分程度。選り分けていた分のタイトルは全て読み上げが終わる。

紙面の方につけたチェックも全てのタイトルの上につけられていて、不足はなく、問題なく確認は終わる。


「現状パッと確認できる分で不足はなし!」


ぐいーーっと、水上先輩は頭の上で両手を組んで、伸びをする。

たゆん、と存在を主張するように揺れる胸に視線が吸い寄せられそうになるが、鋼の意志でそちらへと視線が行かないように固定する。


こんな無防備な姿で何人ものプレイヤーの純情が弄ばれたことか。唯一確認された告白が出来るルートでもその答えを聞く前に突然現れた禍ツ人にぱっくんされる、という衝撃的な末路を見せつけ、トラウマになったという人も少なくはなく、ライターが用意した最大級の罠と語る人も少なくはない。


脳内にトラウマシーンを自ら思い浮かべることで人のいい、この先輩への邪な気持ちを打ち消す。


「ですね。あとは実際の蔵書の確認の方……ですけど」


すぅっと、視線を後ろの本棚へと向ける。


正直な話、一冊一冊確認するのは不可能ではないが、一日でやるのは無理な領域である。非常にやる気が出ない。

水上先輩の方を見ると、あははは、と乾いた笑い声をあげて、目を逸らすように残りの貸し出しカードも箱の中へと戻しながら、口を開く。


「まあ、放課後の確認はざっと見て違う分類の本が紛れ込んでないかの確認と返却された本を元の棚に戻す事くらいだから」


「あ、流石に二人でこれを全部確認はしないんですね」


「しないしない!やるにしても年度末に全員で、って形だよ。大変だからね」


そりゃそうだよなぁ、と納得と安堵で小さく息を吐けば、カードが全て詰められた箱を手に持つ。


時計を見ればそろそろ昼休み終わる頃合いだ。


「戻りましょうか、あとは放課後に」


「そうだね。そろそろ戻らなきゃだし」


談笑をしながら二人揃って図書室から外に出る。


……放課後の仕事、図書室、と言うことに嫌な引っかかりを覚えながら、教室に戻ることにした。

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