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ぬるい空気の廊下を歩いて教室に向かう。空腹が胃を蝕んでいる。次の授業は絶対にお腹が空くに違いない。
それでもなぜかトクトクと胸が高鳴っていたし、足取りは軽かった。
教室に戻ると、当然沙耶香と実里はお弁当を食べ終えていた。二人に何か言った方がいいかと思い足を向けようとした瞬間、彼女らが目配せをしたのに気づいた。
廊下を歩いていたのとは別の音を立てながら鼓動が速くなる。二人の方へ踏み出しかけた足は、結局自分の席の方に向けた。
背中に嫌な視線を感じる気がするのは、きっと気のせいじゃないんだろう。聞こえるはずないのに二人の会話が聞こえるような気がした。
5限目の授業の先生はいつも少し遅れてくる。おにぎりひとつくらいは食べる時間はあるはずだ。しかし、当たり前だけどそんなものを食べる気にはならなかった。
嫌な視線を耐えている数分間は、まるで身体中をちくちく針で突かれているようだった。
教卓側のドアががらりと開く。ようやく先生が来たのかと顔を上げるとそうではなかった。入ってきたのは、あの小さな部室から戻ってきた清水さんだった。自然とクラスの視線が教室の前に集まる。清水さんは、誰の視線も構うことなく自分の席へとついた。
誰がなんと言おうが彼女は美しい。
心から、そう思った。




