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北陸遠征

 時は2005年シーズンの10月2週、場所は石川県金沢市にある金沢競馬場。日本海側で唯一の競馬場である。この日はちょうど交流重賞の白山大賞典が開催される日で、中央からはユーロステイテッドが遠征できていた。『3歳ダート三冠馬の緊急参戦』という話題のため、平日の月曜にも関わらず例年の倍以上の客が来ていた。重賞実績のハンデ(内訳G1勝×2の6キロ+重賞2勝以上による1キロ)を背負わされてるユーロステイテッドは3歳馬ながら通常の54キロにプラス7キロの合計61キロを背負わされての出走。他の馬の斤量はどの馬も4歳以上の56キロでの出走。5キロのハンデを背負わされた中央のG1馬に地元金沢の馬が勝てるかどうかというのも地元ファンの間での楽しみの1つであった。


《実況アナ》


 さあ4コーナー直線に入ってユーロステイテッド先頭に立った! 2番手の位置にメヌエット、外からアルマイヤバトル迫ってきた! しかし先頭はユーロステイテッド! 1馬身のリード! ユーロステイテッドゴールイン! 2着に11番のアルマイヤバトル! 3着に4番のメヌエット。今年も中央の馬が上位を独占しました。勝ち時計は2分14秒フラット! 1番人気の出走馬唯一のG1ホース・10番のユーロステイテッド61キロのハンデも苦にせず快勝! 確定までしばらくお待ちください……。


(脚元は元々丈夫だったから心配はしてなかったが、斤量を背負わされても勝つとはたいしたものだ。ちょっと走りにくそうな走りだったけど……。そうか、押切先生は行きたがるコイツの癖を考えてあえてハンデを背負わされるこのレースをローテに選んだんだな。行こうとしても背負わされてる斤量がうまく抑えていたので結果的にコントロールできたんだ。日頃はノー天気な押切先生も考える時は考えるんだな)


岡西はユーロステイテッドを着順ゲートに誘導させながら押切のローテの意図を自分なりに解釈していた。岡西は当初、不安材料を抱えていても間隔を置いてユーロステイテッドを交流G1重賞のJBCクラシックに出走させると思っていた。しかし10月1週の追い切りの日の時、押切に伝えられたのは格下の白山大賞典出走。これにはさすがの岡西も最初は納得いかなかったが、レースが終わってどうにか理解ができたという。


「いや~、お疲れさん! ハンデ背負っても楽勝やったなぁ」


押切はいつもの気さくな振る舞いで馬を降りた岡西とガッチリ握手した。


「斤量がうまい具合にユーロを抑えていたので結果的にいいレース運びができました。同斤量だったら間違いなく抑えるのが厳しかったと思います。最初はこのレースの出走に僕は正直疑問に思ってたんですけどレース終わってようやく謎が解けましたよ」

「ワハハハハ! そんな面と向かって褒められても照れるわぁ。いつもワシのほうが岡西君に世話になってばっかやから。せや、せっかく北陸に来たんやからどっか飯食いに行かへんか?」

「食事ですか? 僕はかまいませんけど……。どこかいいところ知ってるんですか?」

「う~ん、実は数日前に本岡先生から聞いた情報でうまいソースカツ丼の店があるみたいなんや。そこ行かへんか?」

「それはいいですけど場所は調べればわかりますかね。あっ、そうだ! 確か今休暇で西岡さんがこっち方面に来ていたんだった。確か同窓会があるとか言っていたので……」

「おっ、ホンマかいな! せやったら西岡さんも呼ぼうでぇ」

「では僕は後検量済ませてきますのでまた後で……」

「おうよ! ほなな!」


そう言って岡西は後検量に向かって行った。そして後検量も無事にパスしてレースは確定した。



──レース終了から約1時間後、押切の車内の中にて──



「いや~、驚きましたわぁ~。まさか押切先生がこっちに来てるとは~。部外者のわてがおってもええんですか?」

「ええでええで! 食事は人数多いほうがオモロいんやから~! 今からソースカツ丼のうまい店に行くところやったんやぁ」

「ホンマでっか? 確かこの地域のどっかにウチの先生オススメの老舗の店があったはずですわぁ~。名前は思い出せへんのですけど……」

「まあどうにかなるやろ! 小倉橋さんや岡西君もいることやし」


押切一行は西岡と某所で合流後、目的の店を目指して車を走らせていた。西岡が加わってからというもの押切のテンションはうなぎのぼりに上がる一方だった。ハイテンションな押切と西岡とは対照的に岡西は1人黙々と携帯の検索エンジンで該当する店を検索していた。そしてこれではないかという店を発見した。


「押切先生、該当の店らしいのを見つけました。かなり近い位置です」

「おっ、ホンマかいな! さすが岡西君やぁ」

「えっと、次の交差点を左に行って踏み切りを過ぎてまっすぐ行けば左手に見えるんですけど、そこの交差点は左折禁止なのでちょっと遠回りしないといけません。あっ、そこの交差点ですね」


後部座席の左側に座ってる岡西は運転する押切を的確にナビゲートしていた。


「なるほど、この交差点かいな……」


交差点に差し掛かったのと同時に押切は急ハンドルで左に曲がって無理やり左折した。


「ちょっと押切先生! ここ左折禁止ですよ?」

「ワハハハハ! 距離の節約やからかまへんやろ~! ノープロブレムやぁ」

「そ、そんな無茶な……」


突拍子もない押切の交通違反に焦る岡西。


『そこの左折した車止まりなさい!』


交差点で交通違反者を摘発していた福井県警のパトカーが警告をしながら迫ってきた。


「うわ、最悪だ……」


岡西は面倒なことになることを覚悟した。


「なにぃ? 警察やてぇ? このワシを捕まえれるもんなら捕まえてみぃ! ちょっとみんな捕まってて~なぁ。ブッチするでぇ」


一方の押切は警察の警告が来たのと同時に振り切り体勢に入った。


「押切先生、なにやらかすんでっか?」


テンションが高かった西岡もさすがにこれには焦り始めた。


「ほないくでぇ!」


そう言って押切はアクセルを一気に踏み、ボタンを押してニトロ噴射をさせてロケットのような超加速をはじめた。急発進によって後部座席に座ってた二人はガクンとバランスを崩しそうになったが必死にこらえる。前方はちょうど長蛇の貨物列車が通っていてもはや袋のねずみかと思っていた。押切は電車通過待ちをしてるキャリアカーに向けて車を突っ込ませる。ちょうどキャリアカーがジャンプ台みたいに斜面になっていた。


「ま、まさか……飛び越えるつもりですか?」

「そ、そんな無茶苦茶やぁ! 押切先生、気が狂いましたか?」


後部座席の西岡と岡西は恐怖感と絶望感で頭が一杯だった。一方助手席に座ってる小倉橋は顔色1つ変えずに冷静に黙っていた。


「ワシは極めて普通や~! 行くでぇ!」


押切のマスタングはキャリアカーの斜面にきれいに斜面にのって加速の勢いで宙を舞った。マスタングは通過してる貨物列車のコンテナに激突するかと思いきや、ちょうど通過する時にコンテナが載ってない車両部分をきれいに通って向こう側へと着地した。まさにアクション映画のスタントそのものだった。一歩間違えば億単位の損害賠償ものの大事故に繋がることを押切は天性の勘で切り抜けたのである。


(コンテナのギリギリの隙間を抜けた……。しかもリアルで走ってる列車を相手に……。信じられん……)


あまりにも衝撃的過ぎる光景に岡西は目を疑った。着地したマスタングは再び加速して通過電車待ちをしてるパトカーと一気に差をつけ始めた。


「このワシを捕まえようなど100万年早いわぁ! 危機が迫った時は大船に乗ったつもりでいてくれ~な。ワハハハハ!」


恐怖でひきつる同乗者3人と正反対に高笑いしながら車を飛ばす押切。押切の言う大船は戦艦をイメージしてるが、他の同乗者3人は同じ大船でも沈没寸前のタイタニック号にしか思えなかったという。



──ソースカツ丼店にて──


 福井県警のパトカーを振り切って数分後、押切一行は該当する老舗のソースカツ丼店に到着した。押切だけは意気揚々だったが他の3人は顔色が悪かった。


「みんなどないしたん? 辛気臭い顔して? いまからうまいもん食えるんやから景気よくいかなアカンでぇ」


(あれだけの危険なことやっておいてよく平気でいられるなぁ……)


他の3人はまだ衝撃の現実を受け入れるのに時間がかかっていた。ちょうどその時、福井県警のパトカーが押切達を通り過ぎて行った。さきほど押切を追いかけていたパトカーだった。


「ワハハハハ! お勤めご苦労さん! ほな行くかぁ」


パトカーが通り過ぎるのを満面の笑みで見送った後に押切は店内へと入って行った。他の3人もどうにか平常心を取り戻して押切に続いて店内に入って行った。


「いらっしゃませ~。お客様は4名様でしょうかぁ?」

「な、なんや……」


押切は出迎えた店員の独特の福井弁のイントネーションにタジタジになった。


「ええ、4名です」


押切に割り込むように岡西は冷静に店員に人数を伝えた。その後、押切達は4人がけのテーブル席に案内された。しばらくして別の店員が人数分の水を持ってきた。


「あの~、ご注文のほうは~どうなさいますか~?」

「ちょっ、ちょっと待って~な。あっ、あとで呼ぶさかい……」


不意打ちの福井弁のイントネーションに再び調子を狂わされる押切。


「し、しかしキッツいなぁ。なんなんやこの独特のイントネーションは……。あんなかわいい子であの訛はないわぁ」

「押切先生、こりゃ福井弁でっせ……。わてもこの訛には大苦戦しましたでぇ。慣れるまでが大変でっせ」


アタフタする押切を冷静になだめる西岡。結局その後、店員の福井弁口調に推されて『スペシャルミックスカツ丼セット』を4人前取ることになった。


(うっ、スペシャルミックスカツ丼はいいとしてこれ小皿にタクアンと梅干あるやつじゃないか……。嫌だなぁ……。この場で俺だけ注文かえるというのはかなりのKYになってしまうからなぁ。西岡さんが食べてくれれば助かるんだけど……。押切先生に見つかったらどう説明しよう……)


岡西は注文された料理の中に苦手な食べ物があることにかなり困惑していた。飯坂温泉の時は苦手な食べ物が出た時は押切の隙を狙って別の人にあげれたが、今回は回避手段がないことに焦り始めていた。


それから約10分後……


「お待たせしました~、スペシャルミックスカツ丼セットです。ご注文のほうは以上でよろしいでしょうか~?」

「あっ、ああ……ええでええでぇ~」

「それでは~ごゆっくり~」


押切は未だに福井訛のイントネーションに慣れない様子。


(よし、今のうちに……)

「あっ、西岡さん。これあげますよ」

「ん? 岡西君、漬物類アカンのかいな?」

「あっ、シー! シー!」


押切が戸惑ってる隙に岡西は隣に座ってる西岡にタクアンと梅干が入った小皿を渡そうとしたが西岡の一言が押切の耳に届いてしまった。


「あれれれれ~? どんな癖馬でも乗りこなす岡西君にも食べ物の好き嫌いあるんや~」

「え、ええ。ちょっと……」

(うわぁ~、西岡さんが余計な事言ったせいで押切先生立ち直ったよ~)


押切は岡西の思わぬ弱点を知ってしまって満面の笑みで岡西に注目し始めた。岡西は食べ物の好き嫌いがバレてしまって精神的に危機一髪の状態に陥った。ちゅんみたいになんらかの拷問刑を科せられるのではないかと今までの出来事から推測して覚悟を決めるしかなかった。


「あ~、そうなんやぁ。ちゅんやったら無理やり捕まえて口の中に押し込むんやけど、いつもいろんな面で世話になってる岡西君にはさすがにそれはできへんしなぁ。まあ今回だけやでぇ」

「あ~、スイマセン。なかなか苦手が克服できないのってあるんですよね……。いろいろ試してはいるんですけどなかなか踏み込めなくて…」


岡西は申し訳なさそうに西岡にタクアンと梅干が入った小皿を渡した。


「しかし岡西君は不思議やなぁ。鬼畜レベルの激辛料理食べれるのにお酒飲めないとか、日本人の主食である漬物類苦手とか……」

「ええ、僕は昔っからかなりの変わり者って人から言われてましたので……」

「食べ物の好き嫌いはともかく、自分の個性は大事にしたほうがええでぇ。どうも日本人って昔から個性豊かなのを叩くという嫌な習慣あるからなぁ。お国柄って奴なのか知らんけど……」

「それは僕も西岡さんと同意見です。個性を抑えつけようとする人ってほんと苦手です」


西岡の意見を聞いた岡西はスペシャルソースカツ丼を食しながらしみじみと語った。


「ワハハハハ、その点このワシは常に個性むき出しやでぇ」

「そ、そうですね……」

(出しすぎるってのも問題ありなんだけどなあ~。芸術センスのないところといいさっきのリアルスタントといい……)


ノー天気に胸を張る押切に対しては岡西は苦笑いで対応する。


「せや、押切先生。この後どないするんでっか?」

「ん? まだなんも考えてへんのやけどなんかあるんすか?」

「実はウチの先生オススメの餃子のごっつうまい店があるんですわ~。せっかく北陸に来てるんですから行きません?」

「ほう、そんな店あるんかいなぁ。餃子だけやったらつまみ程度で気軽に食べれるからええんちゃうか? 西岡さん、ワシその提案乗った! 小倉橋さんと岡西君はどないします?」

「ええ、わたしはかまいませんけど」

「僕も付き合いますよ」


こうして食事の2次会があっさりと決まった。


「そうそう、岡西君の大好物のキムチ漬けあるみたいやから行ったほうがええでぇ」

「そうですか、それは楽しみですね」


漬物類が苦手な岡西はなぜかキムチ漬けは食べれるという。楽しみが1つ増えたことでさっきまでテンション下降気味の岡西も元気を取り戻した。



──食事終了後──


 ソースカツ丼を楽しんだ押切達は次の目的地である餃子の店に車を走らせていた。店を後にしてしばらくして西岡がしゃべり出した。


「あ~の~、押切先生~?」

「な、なんやいきなり……。しかもなんやねんその訛……」

「買ってきたCDの音楽を~聴きたいんですけど~かけてもいいでしょうかぁ~?」

「勝手にせい~~!!!」


押切は西岡の福井訛の物真似で狂乱し始めた。西岡は厩舎のムードメーカーらしく物真似を得意としていてよくいろんな物真似をして人を笑わせているという。この福井訛はさきほどの店員のしゃべりから自分なりにアレンジして習得したという。


「あ~の~、押切先生~?」

「今度はなんや?」

「3種類あるんですけど~、どれにしますか~?」

「どれでもエエわ!」

「では~、コイツをかけま~す」

「調子狂うわホンマ……」


そして数分が経過して…


「あ~の~、押切先生~?」

「あ~、なんやねん!」

「あんまり~神経質になりますと~体に毒だと思うんですけど~」

「誰のせいや思っとるんやぁ! アンタしつこいとそこのコンビニで降ろすで~!」

「いや~、こんなところで~降ろされても~わたしは~困ってしまいます~」

「やかましいわぁ!!!!!」


ソースカツ丼の店を出て餃子の店に到着するまでの間の約1時間、押切と西岡の掛け合い漫才がエンドレスで続いていた。わざと福井訛で話す西岡と狂乱する押切。この光景に助手席に座ってる小倉橋は呆れる一方だった……。


(この2人、年末近くに毎年開催されてるM-1に出したほうがいいかも……)


岡西は呆れてるのと同時にしょうもない打診を考え始めたという。


──餃子の店にて──


「ご注文はいかがいたしましょう?」

「餃子4人前と漬物盛り合わせ1つとキムチ漬けで」


岡西は店員に注文の品を伝えた。


「お客様申し訳ありません……。今日はキムチ漬け品切れになってまして……」

「マジっすか……。うーん、ついてないなぁ」


お目当てのキムチ漬け品切れにしょんぼりする岡西。


「んじゃ漬物盛り合わせ2つ!」


押切はしょんぼりする岡西を尻目に満面の笑みでピースサインをして漬物盛り合わせ2つを注文した。


(くっ、屈辱だ……。夏の探偵業といい、さきほどのリアルスタントといい……そしてここでも……。人の気も知らないで……。いつか押切先生に復讐しないと……)


岡西は日頃の鬱憤が溜まってたためか、心の中で押切への復讐を誓った。


「あれ? ひょっとしてお兄さんJRAの岡西騎手?」


餃子店のマスターらしき中年男性が岡西に声をかけてきた。


「はい、そうですけど……」

「おお、今年のダービージョッキーがウチの店に来店とは。あとでサインと記念写真写ってもらえないでしょうか?」

「ええ、いいですよ」


岡西は笑顔で承諾した。


「岡西君、さきほどの店でも記念写真とサイン書いてたなぁ。ワシも競馬関係者やから便乗してサイン書かないとなぁ」

「ハハハ……」

(ほんとこの先生は自分が注目されないといつもこうなんだよなぁ……)


押切のノー天気ぶりには相変わらず苦笑いの岡西であった。その後、押切達は餃子の味を楽しみながらいろいろと雑談をして時間を過ごした。そして会計時へ……。


「ふう、食ったなぁ~。ん? 大将、ここはお土産送れるんや」

「はい、全国各地に注文があればどこにでもウチの商品をお届けできます」

「おぉ~、ホンマでっか? ほなさっそく注文してもエエかいな?」

「あっ、僕もキムチ漬け大量に注文したいです」

「それではお届け先をこの用紙にお書きください」


押切と岡西は店主に渡されたお届け先の紙に押切は本岡厩舎、岡西は自宅の住所と注文の品を書き込んだ。そして記念撮影の後、押切一行は店を後にした。帰りは岡西が公共機関がある駅まで送ってもらって、他の3人は押切の車で直接栗東に帰って行ったという。



──数日後、本岡厩舎にて──


「先生、なんかお届け物が来ましたよ」


宅配業者に応対した西田がかなり大き目のダンボールを運んできた。


「ん? 誰からだろう? え? 押切先生? なんだろう……」


本岡はダンボールの中を開けてみた。すると箱の中には500個入りの餃子が入っていた。


「うわぁ、ずいぶんたくさんあるわね。押切先生もキップがいいというかなんというか……」


中身をみた菅野はビックリ仰天。


「あのチンピラは加減というのを知らんのか……。ウチはスタッフ8人しかいないのに……」


節操のない押切のプレゼントに大西は相変わらずの険しい表情。その後、余った餃子は周辺の厩舎におすそ分けされたという。


一方こちらは本岡厩舎と押切厩舎の間を挟む通路。ちょうど押切と西岡が鉢合わせになった。


「あっ、押切先生。おはようございます」

「おお、西岡さんかいな。おはようさん」

「あ~の~、この間は~大変ご馳走になりました~」

「エエ加減にせい~~!!!!」


忘れた頃の不意打ちの西岡のわざとらしい福井弁に狂乱する押切。周りにいた人は聞き慣れない独特の福井弁のイントネーションに対して腹を抱えて笑い捲くったという。

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