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蒼き彗星

 時は2005年9月3週金曜、場所は押切厩舎の事務所内。押切はのんびり椅子に腰をかけて退屈しのぎをしていた。数日前にジャパンダートダービーを制したこともあって機嫌のよさは頂点を極めているという。


「ワハハハハ、これで優勝レイ4つ目やなぁ。これも岡西君のおかげやわぁ」


ニタニタしながら壁に飾られてる優勝レイを眺める押切。岡西と出会う前ではまず有り得ない事務所の光景にご満悦の様子。


「さ~て、今週の楽しみはなんかあるかいなぁ」


押切は次にテーブルに無造作に置いてあるスポーツ新聞を手に取り、競馬関係の記事を眺めていた。その中に1つ目についた内容の見出しが押切の目に止まった。


『仁藤雄厩舎、最後の名牝デビュー!』


「ん? なんやこの土曜の阪神5Rの新馬戦は6番の馬に印グリグリやなぁ。おっ、この馬の騎手は岡西君やんけ~。そういや今から1ヶ月前くらいにワシと本岡さんが厩舎の外で世間話してた時に岡西君に騎乗依頼打診しに来たベテラン調教師と有力馬主のコンビがいたなぁ。ひょっとしてこの馬のことやろか?」


────約1ヶ月前、押切&本岡厩舎前にて────



「押切先生、今日も暑いですね」

「ホンマですなぁ、ワシなんて夏バテしまくりですわぁ。ところで本岡さん、今週新潟ジャンプS狙ってるみたいですなぁ。仕上がりはどないでっか?」

「ええ、馬の仕上がり自体は順調です。ちゅん君も夏に入って順調に勝ち鞍を挙げてるので久しぶりの重賞勝利行けそうです」

「なるほど、だがあのアホのちゅんがまたいらんことせーへんかワシは心配なんですわぁ。先週かてワシんとこの馬でクイーンS乗せた時にいろいろとポカやりおったさかい……」

「ハハハ、でも初重賞で連対できればたいしたものですよ」

「う~ん、ホンマは岡西君乗せたかったんですけど先約がおったのが痛かったですわぁ。しかもその岡西君に重賞持っていかれても~たから……。あの~、岡西君が確実に確保できる秘策みたいなの知りません? 本岡さんはワシより岡西君との付き合い長いさかいどうしても知りたいんですわぁ」

「秘策ですか? う~ん、わたしの場合3週くらい前から出るレースを決めて騎乗依頼を打診しますからねえ。岡西君の騎乗場所の傾向としてその曜日に重賞レースがあるところに必ず出てきます。今年の夏競馬の重賞でも常に出続けてまので」


本岡はポケットから1枚の紙を取り出して押切に見せた。その紙には2005年シーズンの8月3週時点までの岡西が出走した重賞レースの記録が記されていた。


「うわぁ~、ホンマ重賞レースの常連やなぁ。岡西君の名がない時ってドバイに行ったときくらいであとは全部出てますなぁ」

「そうです。だから押切先生もなるべく重賞がある週にレースをあわせてみてはどうでしょう?」

「ウンウン、やってみますわぁ。ホンマにおおきにです~」


その後しばらく押切と本岡は競馬関連のことで談話を続けていた。



「やあ、本岡先生。いい厩舎経営ができてるみたいだね」


突如1人の70歳前くらいの男性が本岡に話しかけてきた。


「あっ、これは仁藤先生! 大変ご無沙汰してました!」


話しかけてきたベテラン調教師の姿を見るや否や本岡は丁寧にお辞儀をし始めた。そばにいた押切は状況が読めずポカンとしていた。このベテラン調教師の名は仁藤雄一郎調教師(68歳)、これまで数々の名牝を輩出してきたことから『牝馬の仁藤』の異名を持つ名調教師として競馬会では知られている。


「ハハハ、そんなにかしこまらなくてもいいよ。ところで本岡先生にお願いがあって来たのだが」

「わたしにお願い? なんでしょうか?」

「ここにいるマンデーレーシング代表の赤石さんの希望で岡西摩那舞君にぜひとも乗ってもらいたい2歳牝馬がいて、本岡先生を介して彼を紹介してもらいたいと思って足を運んできたのだが彼はいるかな?」

「お、岡西君ですか? 今ウチの厩舎のプレハブ室で後輩の騎手と勉強会してるところですけど呼んできましょうか?」

「ああ、よろしく頼むよ」


本岡は自厩舎に向かおうとした時にちょうど厩務員の西田と鉢合わせになった。


「あっ、西田君ちょうどいいところに……」

「ん? 先生どないしました?」

「今から厩舎に入るところかな?」

「あっ、ハイ」

「ちょっとプレハブ室にいる岡西君を呼んできてくれないかな?」

「はい、わかりました。では呼んできますわ」


本岡に用件を頼まれた西田は駆け足で厩舎内に入って岡西を呼びに行った。


(約5分経過……)


「本岡先生、お待たせしました。西田さんから話を聞いてやってきたのですが……」

「ああ、岡西君来たね。紹介するよ、この人は仁藤雄一郎先生。わたしが調教師試験に合格して半年間の厩舎研修の時にお世話になった先生だよ」

「あっ、どうもはじめまして。仁藤先生のことはよく存じ上げております」

(ホントにあの仁藤先生だ……本岡先生の調教師試験合格後の厩舎研修の受け入れ先だったのはこの先生の厩舎だったんだ……)


岡西は驚きの表情を隠しながら丁寧に一礼した。


「わたしと面と向かって話すのは初めてだね。君の活躍ぶりはよく知ってるよ」

「恐縮です……。ところで僕になにか?」


岡西は緊張した面持ちで切り返す。


「うん、ここにいる赤石さんの願いでぜひとも君に乗ってもらいたい2歳牝馬がいてやって来たんだ。デビューは9月の中旬くらいになると思うが」

「はい、僕でよろしければ……。その2歳馬を見せてもらいたいのですけど?」

「では今からわたしの厩舎に来るかね?」

「あっ、はい。ぜひとも」

「本岡先生、ちょっと彼を借りるよ」

「あっ、はい。岡西君がよければ」

「ではちょっと行ってきます」


そう言って岡西は仁藤と赤石の後をつけて仁藤厩舎へと向かって行った。



「ひえ~、本岡さんはあの有名な仁藤先生の元で厩舎研修やってたんですかぁ。ごっついですなぁ」

「ハハハ、あの先生にはほんとにいろいろとお世話になったんですよ」

「なるほど、ワシは厩務員上がりやからなぁ~。それにしても岡西君はごっついですなぁ。今みたいに名調教師がわざわざ足運んで騎乗依頼にやってくるくらいやからなぁ」

「彼はダービージョッキーになって何皮も剥けましたからねえ」


押切と本岡は岡西を見送った後にそれぞれの厩舎に戻っていったという。



──仁藤雄一郎厩舎内にて──


(ここが仁藤先生の厩舎の管理馬達かぁ。美浦の藤枝先生のところにも負けず劣らずいい馬揃ってるなぁ。中には見覚えのある馬もいるし……)


ここは仁藤厩舎内の馬房。馬房には30頭ほどの競走馬が管理されていたがどれも目移りするほどの競走馬ばかりであった。岡西は1頭1頭自分の目で観察しながら仁藤と赤石の後をついていった。


「真壁君、いるかね?」

「先生どないしました? おっ、ひょっとしてアイツのパートナー連れてきたんですか?」

「うむ、そういうことだ」


仁藤は真壁という厩務員を呼び、岡西と顔合わせをさせた。


「彼が今度君が乗る馬リディアスルーンの世話をしてる真壁厩務員だ」

「どうもはじめまして。よろしくお願いします」


岡西は真壁に丁寧に一礼した。


「先生、株急上昇中のジョッキー連れてくるとはこの先オモロなりまっせ! 俺が買ってる株も同時に値が急上昇してくれれば生活楽になりまっけどね!」

「まったく君は相変わらず株に手を出してるのかね? そんなんだから奥さんに逃げられるんだよ……」

「あ~、先生! シー! シー! そこはシークレットでお願いしまっせ! 岡西君今の聞かなかったことにして~な! まあとにかくよろしゅう頼むわ~」

「あっ、はい……」

(また個性強そうな人が俺の知り合いに増えたなあ……)


岡西は苦笑いしながら真壁の様子を観察していた。真壁厩務員は岡西より10年上で無造作な無精髭とオリックスバファローズのベースボールキャップをかぶってるのが特徴。趣味はギャンブル全般、特に株に目がなく給料のほとんどを投資するほどの浪費家。株で失敗したためにできた借金を返すために現在は仁藤厩舎で厩務員として働いているという。


「真壁君、彼のことは君に任せる。わたしは他の馬のチェックに行ってくるので」

「あい、了解です~」


そう言って仁藤と赤石は岡西と真壁を残して別の場所へ向かって行った。


「ほな、ルーンのところいくか」

「あっ、はい。お願いします」


岡西は真壁にリディアスルーンがいる馬房へと案内された。


「岡西君、コイツがリディアスルーンや。性格は相当気まぐれな奴やけど能力はごっつええの持ってるさかい、たぶん乗ったらホンマに2歳の牝馬なのかと錯覚するでぇ」

「ずいぶん落ち着いてますね……」


岡西はリディアスルーンの毛ヅヤのいい青鹿毛の馬体を1つ1つ丁寧に観察していた。


「初夏くらいに入厩してきた奴なんやけど体絞れてから坂路走らせたらごっつええタイム出してたでぇ。たぶん2歳馬の中ではダントツの1番時計やと思うで~」

「なるほど……。ん? 真壁さん、コイツの首かなり長いですね。他の馬に比べて20センチほど長く見えるんですけど……」

「お~、よ~気づいたなぁ。コイツの首の長さは際どいゴール前勝負でええ武器になるでぇ」

「それは心強いですね」

「それとウチの先生って日頃あんまりしゃべらへんのやけどコイツにはぎょうさん思い入れしてるみたいなんやわぁ」

「思い入れ?」

「せや、ウチの先生はいろんな名牝を輩出してきた名調教師としてごっつ有名なんやが、1頭の馬での牝馬三冠は達成したことあれへんのやぁ。まあ三冠自体が気が遠くなる記録なんやけどなぁ、しかもあと2年で定年やから残された期間の間で達成できればと思っとるみたいなんよぉ」

「そうだったんですか、それは僕自身も責任重大になりますね」

「まあ岡西君は立派なダービージョッキーやぁ。匠さんにも引けとれへんと思うでぇ」

「いや、それはちょっと買いかぶりすぎだと思います……」

(真壁さんもけっこう俺を立ててくるタイプだなぁ。まあ押切先生の極端な過保護ぶりよりは断然マシだけど……)


リディアスルーンや仁藤調教師の裏話などを真壁からいろいろと聞かされて聞き入る岡西。日頃謙虚な性格もあるためか、武井匠と自分を比べられて自分自身を大きく評価してくる人にはどうしても気が引けてしまう傾向がある。


「あんな、ここだけの話なんやが……。リディアスルーンの主戦騎手として岡西君を迎えようとしたのは赤石さんの強い願望って聞いた思うんやけど、その提案を赤石さんに進言したのは俺なんやでぇ」

「真壁さんが?」

「せやで。厩務員の立場から調教師に進言するのはカドが立つからなぁ。そこである日コッソリ俺が赤石さんに進言したんよ。普通ウチの先生やったら匠さんなど関西の有力どころ起用してくるけど、その匠さんは知っての通りいろんな有力どころの厩舎からオファーがぎょうさん来るさかい確実に確保できるとは限らへんやろ?」

「確かに……」

「他にも幹久さんや祐介君などエエ騎手はおるんやけど、幹久さんは今期限りで引退して調教師に転身するし、祐介君は実績とか技術に関しては申し分ないんやけどフリーじゃあれへんのやぁ」

「松山さん引退するんですか? まだまだ現役でやっていけるはずなのに……」

「ああ、話によると幹久さんの所属厩舎の先生が定年で引退するさかいその厩舎の後を継ぐというのが引退の理由らしい。普通厩舎ってのは調教師が引退すると解散させられる決まりやからなぁ」

「確かに考えてみれば厩舎内に跡継ぎがいれば解散させられずに厩舎経営できますからねぇ。そういう理由があるなら仕方ないですね」

「まあなぁ」

「ところでさっき真壁さんが言っていた福沢先輩がフリー騎手でないことの関連性がイマイチわかんないんですけど……」

「あ~、騎手ってさ~プロになってからは誰でもどっかの厩舎に所属するやろ? あるレースで騎乗依頼が自分のところと他厩舎でかぶった場合って絶対自分のところの厩舎の馬を優先的に受けなアカンのやぁ」

「なるほど……」

「なるほどって……。あれ? 岡西君もデビューの時はそないな感じやったんちゃう?」

「僕はデビューして3日後に所属厩舎の先生が急に事故で亡くなってその厩舎は解散させられまして、それ以来今日まで僕はずっとフリーなんですよ。だからそういう所属厩舎の騎手の立場の実感って自分自身ではイメージがわかないんですよ……。同期や後輩の騎手からはいろいろと苦労話聞かされたことはありますけど……」

「ホ、ホンマかいな~! てことは実質上最初からフリーやったっちゅうことかいな?」

「そ、そういうことになりますね……」

「おそろしいわぁ」

(あの匠さんかて最初の5年は厩舎に所属してたのに……。こりゃごっつオモロなりそうやなぁ。それでなおかつこれだけの実績なんやからヘタするとこの岡西君は匠さん越えるでぇ……)


真壁は岡西から衝撃の事実を知って唖然とした。それと同時に岡西が競馬会に革命をもたらしそうな予感を真壁は肌で感じていた。ここまでのいきさつが岡西とリディアスルーン陣営との出会いである。


────レース当日────


 こちらは土曜日の阪神競馬場。この時期は毎年秋のトライアル戦線や期待の2歳馬のデビューについての話題が目白押しとなる。この日注目だったのは阪神5Rで新馬戦を迎えるリディアスルーン。父は毎年種牡馬リーディング独走、母はG1レース5勝の実績を持つ名牝と血統では全くと言っていいほど文句のつけどころのない馬である。それに調教師は言わずと知れた数多くの名牝を手がけてきた仁藤、そして鞍上の騎手は株急上昇中の岡西と競馬ファンからみるとまさに夢のような組み合わせである。馬柱表は以下の通り。


阪神5R 2歳新馬戦(牝馬限定) 芝1400M(内周り) 良 12:20〜発走


1枠 1番 ライネデボネア   牝2 54.0  安城勝 美・下原

2枠 2番 ウーマンコンドル  牝2 54.0  幸田  栗・西村

3枠 3番 マリンカリン    牝2 54.0  福沢  栗・瀬戸内

4枠 4番 アルマイヤベロニカ 牝2 52.0△ 川辺  栗・松木博

5枠 5番 サーチライトシティ 牝2 54.0  佐渡哲 栗・笹見晶

5枠 6番 リディアスルーン  牝2 54.0  岡西  栗・仁藤雄

6枠 7番 コスモスプララ   牝2 54.0  十和田 栗・仲村

6枠 8番 スミゾメザクラ   牝2 54.0  下村  栗・芦口

7枠 9番 ショウエイルシア  牝2 53.0☆ 藤波祐 栗・萩

7枠 10番 マリノエメラルド  牝2 54.0  新川  栗・梅津

8枠 11番 タイガプリマドンナ 牝2 54.0  柴川  栗・田仲

8枠 12番 ダイヤアモーレ   牝2 54.0  蛇奈  美・池下


 岡西が乗るリディアスルーンは単勝1.2倍ダントツの1番人気で他の11頭は単勝オッズに差はあるものの能力自体はほぼ横一列という状態。馬券を買うファンにとっては相手絞りが難しいレースである。


────レース発走10分前────


(やれやれ、やっと輪乗りに合流できたよ。しかしコイツは今までにないタイプの変わり者だな)


岡西は苦笑いしながらスタート地点前の輪乗りに合流した。パドックから本馬場入場までリディアスルーンは圧倒的な存在感を見せていた。パドック内ではイレ込んだりチャカついたりする馬がほとんどの中、リディアスルーンだけは全く周囲に物怖じすることなく堂々と周回していて、圧巻だったのは返し馬の時で、他の馬はぎこちない走りでもターフを駆け抜けていくのに対して、リディアスルーンはターフに入っても誘導馬が歩くペースでラチ沿いをゆったりと優雅に歩くだけだった。岡西が合図を送っても首を横に振って走ろうとしない。その光景を見てた正面スタンドの観客からは「ホンマにあいつ走るんかいな? 親の七光りに溺れた不良債権なんちゃうか?」という声も飛び交ったという。


(返し馬で走らない2歳馬なんてはじめてだよ……。普通は観客の歓声に煽られて騎手が抑えるのも聞かずに走るのが普通なのに……)


岡西があれこれ考えてるうちにスターターの係員が位置について合図の旗を振り関西の一般のファンファーレが鳴った。そして各馬係員の誘導で次々とゲートへ入っていった。


(ん? ファンファーレが鳴ったのと同時にルーンの雰囲気がガラリと変わった感触が……。まさかコイツは実戦モードのオンオフの切り替えの合図がファンファーレなのか?)


《実況アナ》


 お待たせしました阪神5レース2歳牝馬限定の新馬戦、芝1400Mの内回りコース12頭で争われます。圧倒的1番人気リディアスルーンもゲートにおさまりました。最後に12番の関東馬ダイヤアモーレが入りまして体勢完了……。スタートしました! リディアスルーン絶好のスタートを決めました! まずポンと先頭に立ったのは6番のリディアスルーン、2馬身から3馬身のリードを取ります、その後ろに1番ライネデボネアと8番スミゾメザクラが並んで追走、1馬身後ろに3番マリンカリンと4番アルマイヤベロニカが併走、その外9番ショウエイルシアはかかり気味、2馬身ほど離れまして5番サーチライトシティ、半馬身後ろ内に2番ウーマンコンドル、半馬身後ろ外に10番マリノエメラルド、お終いから3番目に7番コスモスプララ、最後方はピンクの帽子2頭12番ダイヤアモーレと11番タイガプリマドンナ、先頭から最後方までかなり縦長の展開になりました……。


(キッチリとスタートも決めてペースは速過ぎず遅過ぎず……。俺があれこれ指示出さなくても無駄のない走り……。はじめて出会った時からただものではない雰囲気を感じていたけど、これは予想以上にとんでもない馬だな……)


返し馬の時とは全く違うリディアスルーンの気配に岡西は驚きを隠せずにはいられなかった。


《実況アナ》


 さあ先頭は早くも3コーナーから4コーナーのカーブに差し掛かりました。先頭は依然リディアスルーン、3馬身から4馬身のリード、2番手にスミゾメザクラ、3番手争いにライネデボネアとマリンカリン、アルマイヤベロニカ、ショウエイルシアもペースを上げてきた! さあ4コーナー最後の直線に入った! 先頭はリディアスルーン、徐々にリードを広げていく! 2番手争いはライネデボネア、マリンカリン、スミゾメザクラ懸命に追っている! 残り200を切った先頭はリディアスルーン! これは強い! 持ったままゴールイン! 圧倒的1番人気に答えました! 勝ち時計は1分23秒フラット!


(ムチ一発も入れてないのにちょっと追っただけで2着以下に同じ歳の牝馬とはいえこんなに差がつくとは……。ここまで楽に勝てたレースは今までになかったぜ。余力を十分に残して次走に望めるな)


ふたを開けてみれば2着に1秒差をつけての圧勝。鞍上の岡西もリディアスルーンの驚異的な能力に驚いていたが、それ以上に正面スタンドの観客達はリディアスルーンの走りに釘付けだったという。

《モデル調教師紹介》


仁藤雄一郎→伊藤雄二(元調教師)

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