表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/51

思わぬ苦戦

 時は2005年シーズンの9月2週水曜日、場所は岩手県盛岡市にある盛岡競馬場(通称:オーロパーク)、岩手県競馬組合が管理する地方競馬の競馬場で、1996年に旧競馬場から移転新設されて現在に至る。この競馬場はダートコースの内側に芝コースが設けられていることで、地方競馬のみを施行する競馬場で唯一芝コースを有していることで知られている。この日は3歳馬限定の地方交流G1重賞ダービーGPが行われる。G1レースが行われるということでOROパークにはいつもより多くの客でにぎわっていた。注目の的で話題の中心はなんといっても中央のユーロステイテッドのダート三冠が完成するかどうかである。前走JDダービーを快勝、短期放牧を挟んで急仕上げでこの大一番に挑む。枠順は以下の通り。



盛岡10R ダービーGP ダート2000M 良 16:05~発走


1枠 1番 ウインドミル    牡3 56 村下  盛岡

2枠 2番 テオドラ      牝3 54 里崎  大井

3枠 3番 トップマウンテン  牡3 56 立花  盛岡

3枠 4番 ミストルティン   牡3 56 蛇奈  JRA

4枠 5番 ヴィオレッタ    牝3 54 迎山  笠松

4枠 6番 シャトルベース   牡3 56 木枯  北海道

5枠 7番 カンフーアキレス  牡3 56 大牧  JRA

5枠 8番 フジコウデュラハン 牡3 56 池越  JRA

6枠 9番 カラークリムゾン  牡3 56 雨島  佐賀

6枠 10番 ダイダロス     牡3 56 菅田勲 盛岡

7枠 11番 ユーロステイテッド 牡3 56 岡西  JRA

7枠 12番 マリエントス    牡3 56 内山  水沢

8枠 13番 スカイハイ     牡3 56 御厨  大井

8枠 14番 ネオワイバーン   牡3 56 柴畑善 JRA


 出走馬のメンバーの質は岩手枠の関係とジャパンダートダービーの2~5着馬が出走していないため、かなり見劣りしてしまう。そのためG1ホースのユーロステイテッドに当然のごとく人気が集まり単勝1.1倍という状態。2~5番人気は中央の馬が占めていて地方所属の中の馬で最も人気があるのは現在6番人気の地元盛岡所属馬のトップマウンテン号、前走トライアルレースの不来分賞を快勝してきた馬である。中央馬断然優勢のこのレースで地方馬がどれだけ太刀打ちできるか?発走時刻は刻一刻と迫っている。


《ユーロステイテッド陣営》


「暇人の客共がぎょうさん来とるわぁ。地方の雑魚ホースなんか岡西君が目つぶって乗っても勝てるやろ、ワハハハハ!」

「ちょっと押切先生……。他の陣営に失礼ですよ……」


既に勝ちは見えていてレース前から完全に浮かれてる押切とそれを諌めようとする岡西の姿があった。


「大丈夫やって、岡西君は数日前にサマージョッキーシリーズで優勝もしてるし、ユーロも万全! 死角なんてウイルスチェック100回行っても出てけ~へんって」

「ウイルスって……。それとこれは別ですよ……」


岡西は今から3日前のセントウルSで5着に入りポイントで追う隅田や武井匠を振り切り最終的に39ポイントでサマージョッキーシリーズチャンピオンとなった(※注釈)。岡西が重賞勝ちなどなんらかのタイトルを制するたびに押切に持ち上げるネタにされ、押切の岡西に対する過剰なほどの過保護ぶりはエスカレートするばかりで、さすがの岡西もこれにはかなり困り果ててるという。


「そういやオーナーどこいったんやろ?」

「あれ? さっきまでいたんですけどね……。あっ、あそこに! な、なにやってんだあの人は……」

「ん? な、なんやぁ?」


押切と岡西から20メートルほど離れた位置で村山はおなじみの迷彩一式の服装で仁王立ちして精神統一していた。村山の前にはなぜか13枚重ねられた瓦が無造作に置いてあった。瓦の色をよく見るとゲートの枠順の色をしていて上から順に白1・黒1・赤2・青2・黄2・緑2・橙1・桃2という配分で重ねられていた。


「エイヤー!!!!」


村山の気合の叫びと手刀の一撃で重ねられていた瓦はすべて見事に真っ二つに割れた。


「ち、ちょっと村山さん! なにやってるんですか?」


村山の現実を超越した行動に慌てて駆け寄って注意する岡西。一方押切は開いた口がふさがらなくてただ立ち尽くしていただけだった。


「ん? 岡西殿か。これは余の肉体と精神の鍛錬の1つである」

「場所考えてくださいよ!」

「うむ、戦いを前にそのように取り乱してはならぬぞ。では健闘を祈る、グッドラック!」


村山は岡西の注意にも全く動じずマイペースで関係者席へと悠々と去って行った。なお、無残に割られたは村山と迷彩格好の付き人らしき人が数人来て人間業とは思えない速さで片付けて去っていったという。


(取り乱すなって誰のせいだと思ってんだあのオーナーは……。今さっき割れれた瓦の破片をチラッとみたけど11番の瓦が入ってなかったなあ。あれはおまじないのつもりかな? どっちにしてもあんな人騒がせな行動はどうにかしてもらいたいものだ……)


過保護な押切にミスター理解不能人の村山。ユーロ絡みの馬に騎乗する時の岡西の悩みは尽きることを知らないという。そのありえない光景を目の当たりにした地方所属の他陣営は「中央の馬主ってすごい人いるんだな」と摩訶不思議な目、そして同じ中央所属の他陣営には「なんであんなハチャメチャな陣営の競走馬がG1勝てるんだ?」と猜疑の目でそれぞれ見られたという。



《トップマウンテン陣営》


(あっ、あの迷彩の勝負服の騎手は……。ううう、昔の僕の罪悪感が……。あの時僕が1つ上の先輩達に脅されて仕掛けさせられた石灰のタオルを誤って使って視力が低下してしまった彼は無事なのだろうか?)


遠くの位置で岡西がパドックに向かって歩いていく姿を見たのと同時に気が重くなった1人の若い騎手がいた。この若者の名前は立花 昇という盛岡所属の地方騎手。歳は岡西より1つ上で元騎手学校12期生だったが、タオル石灰事件という当時のある1年生が誤って使って失明寸前まで行って大問題になった事件があった。学校側の調査の結果、立花は先輩に脅されてやむなくやったということを言っていたが、結局1人の生徒の人生をダメにしたという理由で退学処分になり情状酌量の余地で地元の盛岡の騎手養成学校に編入したという過去を持つ。当時の騎手学校12期生の仲間達はこの処分に不服を申し立てたが、退学取り消しの願いは叶えられなかったという。


「おい、昇! レース前に何を気負ってる? そんな気持ちでは中央入りなんて夢のまた夢だぞ」

「あっ、いえ……。なんでもありません……」


自分が騎乗するトップマウンテン号を管理する調教師に喝を入れられる立花。立花は盛岡に入ってからひたすらいつかは中央のターフの舞台で12期生の仲間達と一緒に走ることを夢見ながら今まで10年間努力を続けてきて気がついたら1000勝以上の勝ち鞍を挙げていた。しかし交流重賞の舞台ではからっきし弱いという欠点が立花にあった。


「とにかくしっかりしてくれよ。お前はできる奴なんだから。中央の馬達にいいようにさせるなよ! 特にあのスチャラカな迷彩の勝負服の陣営には……」

「は、はい……では行って来ます……」


昔の罪悪感を背負ってる立花はパドックに向かう時の足取りがいつも以上に重く感じたという。



────パドックにて────


(自分の馬の状態は押切先生に聞くより手綱を引いてる小倉橋さんに聞いたほうがいいだろう。押切先生はどうせまともな騎乗指示出さずに俺に一任するだけだから。今頃、この競馬場の名物のジャンボ焼き鳥でも頬張りながらのん気に観戦してるだろうな。さて、ライバル馬のチェックだ……)


岡西はいつも通り他愛のないことを考えながら他のライバル馬の様子を注意深く観察し始めた。


(うーん、特に目立った馬はいないけどちょっと気になるのは3番の馬かな。やけによく見える。メンツは前走に比べて質は落ちてるはずだからここは落とせないな。あとひっかかるのはユーロの様子かな? なんかいつもより威圧感を感じられない。普段はもう少しチャカついてもいいのになんかモッサリとしてる……)


「とま~~~~~れ~~~~~!」


透き通った声で響く騎乗指示の合図と同時に出走馬達は脚を止め、騎乗する騎手達は1列に並んで一礼した後にそれぞれの騎乗馬に小走りで向かって行った。岡西も小倉橋に支えてもらってユーロステイテッドに騎乗した。


「岡西君、今日も頼むね」

「はい、ところで小倉橋さん……。僕、パドックでコイツの様子観察してたんですけどなんかいつもの威圧感を感じなかったんですけど」

「う~ん、食べる飼葉の量とかは特に異常はなかったんだけどねぇ。短期放牧でちょっとレース勘が鈍ってる可能性があるかも。飯坂温泉に行った時に話した不安要素がひょっとしたら出てしまうかもしれない。スタートには気をつけたほうがいいかも」

「なるほど、わかりました」

(俺の取り越し苦労ならいいんだけどな。やっぱ小倉橋さんはこういう時に頼りになるな)


小倉橋の助言を取り入れた岡西とユーロステイテッドのコンビは滞りなく誘導されて本馬場入場へと向かって行った。ダートコースに入り、小倉橋が手綱を離したのと同時にユーロステイテッドは返し馬に入った。


(ん? やっぱりなんか気抜けしてる走りだなぁ……。なんか引っかかる……)


素人目ではわかりづらいが、コンビを組んで5戦目の岡西は「騎手の勘」でユーロステイテッドの走りに違和感を感じていたが、具体的な内容までは理解できずにいた。



──レース発走10分前──


 14頭の出走馬がスタート地点前で輪乗りをしてファンファーレが鳴るのを待っていた。ほとんどの鞍上の騎手がリラックスして待ってる中、岡西だけは自分の心の中で引っかかってることについて考えていた。そして考え込んでいるうちにオーロパークのG1ファンファーレが鳴り、出走馬が係員に誘導されて次々とゲートに入っていった……。


《実況アナ》


 お待たせしました。2005年シーズンダービーグランプリ、今年は14頭で争われます。圧倒的1番人気は11番中央のユーロステイテッド、今ゲートに収まりました。その他の馬も次々とゲート入り、最後に14番中央のネオワイバーンが入りまして体勢完了…。スタートしました! あっとユーロステイテッドあおって大きく出遅れ! ユーロステイテッドは最後方からの競馬になりました!


「アァ~~~~~~~~!!!!!」

「ゲッ、岡西が出遅れた! 嘘だろ?」

「なにやってんだ~!!!!」


断然1番人気のユーロステイテッドが大きく出遅れた瞬間を見たのと同時に正面スタンドの客達から悲鳴やどよめき、怒号などが飛び交った。



(くっ、しまった……。いろいろ考えすぎて小倉橋さんの助言のことを忘れてた……。だが俺は諦めない。逆境の中でも勝機はあるはずだ……。どんな状況でも勝ち負けに持っていく……。それがプロだ!)


5馬身ほど後手を踏んでしまった岡西とユーロステイテッドは前の馬に離れすぎないように慌てて追い始めた。正面スタンド前を駆け抜けながら岡西は瞬時に策を練り始める……。


──競馬関係者席にて──


「ウ、ウソや~~~!!!お、岡西君が出遅れるなんて……。ああ、どないしよどないしよ……。ホンマにアカンわぁ!!!」


出遅れの瞬間を見たのと同時に押切は青ざめた表情で両手を頭に抱えながら1人取り乱し始めた。さきほどのノー天気モードとは全く正反対である。


「押切殿、うろたえるでない! 勝負とは最後までわからぬもの。岡西殿の勝利への執念のオーラは輝いてる!」

「オーラってそんなんで勝てたら誰も苦労はせ~へんですよ! ああ、どないしよどないしよ! 時間よホンマに戻って~な!」

「Be quiet!」


村山は一言つぶやいた後に右手を上に掲げた後にパチンと指を鳴らした。すると3人の迷彩武装の部下達が即座にやってきて押切の手足と口を押さえた。


「な、なんやぁ、モ、モガモガ……」


不意を突かれた押切はあっという間に身動きが取れなくなった。


(まったくウチの先生は……)


その光景をそばで見ていた小倉橋は押切の醜態にただ呆れるばかりだった。押切とは正反対に小倉橋は寡黙に戦況を見つめていた。



《実況アナ》


 まず先手を取ったのは地元盛岡の3番トップマウンテン、すぐ後ろに4番ミストルティンと8番フジコウデュラハンと中央勢が続きます。1馬身ほど後ろ内から7番カンフーアキレスと14番ネオワイバーンが並んで追走、各馬コーナーを周り向こう正面へと向かって行きます…


(スプリント戦ならあの出遅れは致命傷だが2000では挽回できる可能性はある……。向こう正面に入ったら徐々にポジションを上げていかないとな……。いくら地方の競馬場の中では直線が長く坂がある珍しいコース形態とはいえ直線入ってゴボウ抜きはまず無理……)


押切が関係者席でアタフタしてても岡西は冷静沈着にレースに集中していた。


(そういや一昨年の京成杯だったかな? 匠さんが抑えきれずに暴走してしまった馬がいたなぁ。あれをうまくここで利用できないだろうか? 元々コイツは暴走癖のある奴だから。ほんとはこんな乗り方をすると馬が壊れる確率が高いんだが、ユーロは超がつくほどの脚が丈夫な馬、きっと耐えてくれるはずだ)


岡西は騎乗中に1つの策を思いついた。それはユーロステイテッドを残り1000Mのところでワザと暴走させる方法である。勝ち負けに持っていくだけでなくユーロステイテッドのレース勘を取り戻し本来の闘志あふれる走りを復活させるためという目的もある。他にもこんなずさんなレースをしてるようでは宿敵の米国三冠馬サディスティックディザイアには一生勝てないという思いもこめられていた。



《実況アナ》


 先頭はトップマウンテン、1馬身後ろに4番ミストルティン、8番フジコウデュラハンが並んで追走、そのすぐ後ろに7番カンフーアキレスと14番ネオワイバーン、中央勢が続きます。1馬身半ほど離れまして1番ウインドミル、2番テオドラ、13番スカイハイ、そのすぐ後ろに10番ダイダロスと5番ヴィオレッタとほぼ一団になって追走、半馬身後ろに9番カラークリムゾン、6番シャトルベース、12番マリエントスと並んで追走、そしてなんとその3馬身後ろ最後方に1番人気11番のユーロステイテッドが追走。果たしてこの位置から届くのか?各馬残り1000Mを切ったほぼ平均ペース……。



(よし、今だ! いい加減目を覚ませ! お前はこんな連中に敗れるつもりか?)


残り1000Mの標識を過ぎたのと同時に岡西は鐙にかけている両足のかかとでユーロステイテッドを鞍越しにをガツンと一発蹴り上げた。その瞬間ユーロステイテッドの眠っていた闘志が目を覚ましてその気迫が岡西の手綱に伝わり、そしてユーロステイテッドは伝説の一部をこのOROパークで創ろうと走り始めた。


「オォォォォォォォォォ!!!!!!」


突如客席から響くどよめき。それもそのはず向こう正面で1000Mを通過したのと同時にユーロステイテッドが通常ではありえないくらいのペースで捲くりに出たからである。その勢いはまるで他の競走馬の脚が止まって見える感覚に陥るくらいであった。


(な、なんだと……)

(あの迷彩の勝負服の馬は化け物か?)

(こんな捲くりはじめてみた……)


ユーロステイテッドにあっという間に抜かれた地方の騎手達は岡西&ユーロステイテッドの騎乗ぶりに顔面蒼白になった。


《実況アナ》


 先頭集団は早くも3コーナーから4コーナーの間に差し掛かりまして先頭は依然トップマウンテン、2番手にミストルティンとフジコウデュラハン、3番手争いがネオワイバーンとカンフーアキレス、おっと後方から観客のどよめきを掻き分けてユーロステイテッドが外から猛然と上がってきた! さあ最後の直線に入った! 先頭は3番トップマウンテン、2馬身のリード! ミストルティン、フジコウデュラハンも懸命に追走! ネオワイバーン、カンフーアキレスは伸びないか? ユーロステイテッドはまだ来ない! 残り400を切った! 先頭はトップマウンテン、逃げ切れるか? さあユーロステイテッド中から追い込んできてようやく4番手まで上がってきた! 残り200を切った! 先頭はトップマウンテン! 2番手はユーロステイテッドに替わった! トップマウンテン! ユーロステイテッド! トップマウンテン! ユーロステイテッド並んだ! ゴールイン! わずかに11番ユーロステイテッド体勢優位か?


(多分差し切れたはずだ……このシチュエーションはドバイの時と全く正反対だな……)


岡西はゴールした瞬間前を走るトップマウンテンを差し切ったと確信した。ちょうど半年前のドバイWCで、キタノアルタイルが勝利目前でサディスティックディザイアに差し切られた時と今の状況が類似していたからである。あの時はギリギリでシューメイクのサディスティックディザイアが岡西のキタノアルタイルを差し切って勝利に確信を持ったが、今回は岡西のユーロステイテッドが立花のトップマウンテンを差し切った。岡西はこのレースでその時のシューメイクの心理を理解できたという。


(に、逃げ切れたかなぁ? 最後すごい勢いで本命馬来たから……)


一方のトップマウンテン騎乗の立花は勝てたかどうかは半信半疑。



「おお、差してる! 差してる!」

「よく届いたなぁ……」

「あんな捲くりありかよ……。俺は応援馬券で立花の単勝勝ってたのに……」


メインモニターの写真判定でわずかにユーロステイテッドがクビ差で差し切ってるシーンが出て、観客は思い思いにぼやいていた。


(どうにか勝てたが勝利ジョッキーインタビューの時に困るな……。本来なら圧勝レースでいかないといけなかったのに大きく出遅れてどうにか最後の最後で差し切ったという不格好なレース内容だったから……)


岡西の表情は勝っても険しかった。


(ああ、ダメだったかぁ。また僕の弱さが出てしまった……)


一方の立花はガックリと肩を落として着順ゲートへと引き上げていった。



──着順ゲート前にて──



着順掲示板の1着に11番が点灯したのと同時にさっきまでアタフタしてた押切は一気にノー天気モードに逆戻り。上機嫌で岡西が戻ってくるのを待っていた。しばらくしてユーロステイテッドに乗った岡西が引き上げてきた。


「いや~、岡西君、ご苦労さん! ワシはどんな状況に追い込まれても必ず勝利を呼び込んでくれると信じてたでぇ! ワハハハハ!」

「ずさんなレース内容でしたけど今回はメンツに恵まれましたね。反省点も多かったですがコイツのレース時の位置取りにもいろいろと融通が利くことがわかったことについてはよかったと思います」


岡西は馬を降りた後に、押切とガッチリ握手をした。


「ウンウン、まあ今後のコイツのローテについては後日ゆっくり話すかいな」

「ええ、そうですね。では、僕は後検量に行ってきます」


岡西は一言言い残して後検量に使う馬具一式を持って後検量に向かって行った。その後、レースは無事に確定してユーロステイテッドは『ダート三冠』を完成させた。また押切・岡西・小倉橋の3人は2週間後、『ダート三冠達成』の名目で村山の主催するパーティに招待されてとんだ災難に遭ったという……。

※サマージョッキーシリーズランキング(最終集計)


1位 岡西  美浦・フリー  39ポイント 七夕賞・小倉記念・新潟記念

2位 隅田  栗東・フリー  31ポイント 函館SS・キーンランドC

3位 武井匠 栗東・フリー  29ポイント 札幌記念

4位 安城勝 栗東・フリー  24ポイント 北九州記念

5位 藤井  栗東・フリー  22ポイント 函館記念

6位 大牧  栗東・フリー  19ポイント セントウルS

7位 小西  美浦・フリー  13ポイント アイビスSD



該当全重賞レースの詳細内訳(ポイント数は第31部の後書きを参照)


函館SS 7月1週


1着 隅田 2着 三井 3着 安城勝 4着 武井匠 5着 藤井 8着 岡西


七夕賞 7月2週


1着 岡西 2着 中竹 3着 蛇奈 4着 秋川 5着 柴畑善


アイビスSD 7月3週


1着 小西 2着 吉井豊 3着 大牧 4着 石田 5着 勝田 15着 岡西


函館記念 7月4週


1着 藤井 2着 横井典 3着 武井匠 4着 中田勝 5着 三井 7着 岡西


小倉記念 8月1週


1着 岡西 2着 武井匠 3着 隅田 4着 安城勝 5着 石田


北九州記念 8月3週


1着 安城勝 2着 隅田 3着 石田 4着 大牧 5着 下村 9着 武井匠


札幌記念 8月4週


1着 武井匠 2着 藤井 3着 石田 4着 福沢 5着 岡西

7着 安城勝 8着 隅田


キーンランドC 8月5週


1着 隅田 2着 安城勝 3着 藤井 4着 勝田 5着 三井


新潟記念 8月5週


1着 岡西 2着 中田勝 3着 江戸照 4着 武者 5着 蛇奈


セントウルS 9月2週


1着 大牧 2着 池越 3着 福沢 4着 武井匠 5着 岡西

7着 隅田 11着 安城勝 15着 小西

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ