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飯坂温泉珍道中(前編)

 時は七夕賞終了後の夕刻。バレットの道明を見送った後、岡西は押切達が待つ待ち合わせの場所へと向かっていた。待ち合わせ場所は福島競馬場の関係者のみ入れる駐車場である。


(温泉かぁ~、どれくらいぶりだろ? 競馬会に入ってからというものほとんどと言ってもいいほど休みなんてなかったからなぁ。競馬関係者とのイベントもほとんど無縁だったけど……)


足を進めながら岡西はしみじみと今シーズンの上半期のことを回顧していた。4年ぶりのG1制覇から始まり、ドバイでの屈辱、ユーロステイテッドとの出会い、オンリーゴールドの故障、ダービージョッキーになったことなど、岡西にとって順風と波乱がミックスした密度の濃い上半期であった。


「お~い、岡西君! こっちやでぇ!」


岡西が駐車場に着いたのと同時に押切の呼びかけが聞こえた。押切達がいるところを見つけて岡西は小走りで向かっていった。


「すいません、お待たせしました」

「ええでええで」

「みなさん勢揃いですか?」

「最後に岡西君が来てみんな揃ったで~! 車3台で旅館に直行や。それぞれの運転手はワシと大林と外岡の3人。ほな、行くで~!」


押切の呼びかけでそれぞれの車に乗り込んだ。大林が運転する車には助手席に小橋・後部座席に谷口と渡部が入り、外岡が運転する車には助手席に古村、後部座席に増本とちゅんが入った。小倉橋と岡西は自動的に押切の車に乗ることになった。


「ワハハハハ、岡西君はVIPやなぁ。1人で後部座席に広々と座れるさかい。他の連中も岡西君に気を遣ってるんやろうなぁ」


得意げに大笑いしながら自慢の愛車マスタングの運転席に乗り込む押切。実際の理由は押切の運転する車にスタッフは誰も乗りたがらないからである。もちろん押切はそういう認識は全くない。岡西が後部座席に乗ろうとした時、小倉橋が岡西にさりげなく耳栓を差し出してきた。小倉橋はジェスチャーですぐに耳栓をするように岡西に言った。


(耳栓? なんでこれつけないといけないんだろ? まあ小倉橋さんが言うんだからなにかあるんだな)


半信半疑の気持ちで岡西は小倉橋に渡された耳栓を装着した。その後、自分の荷物を押切の車のトランク内に入れた後に後部座席に乗り込んだ。押切の車は現在の乗用車に比べてかなりレトロな内装のため岡西は首をかしげながら周りを見渡していた。


「ん? 岡西君、ワシの車珍しいかいな?」

「そ、そうですねえ。日本車にしてはなんか違うなあと思いまして……。僕、あんまり車詳しくないんですけど……」

「ワハハハハ、このマスタングはアメリカ製、つまりアメ車やぁ。ワシがハタチの時に中古で安値で買って改造を重ねてそれ以来10年以上の付き合いなんやぁ。最近の車はごっつダサいのばっかでなぁ。買い替えようなんて思えへんわぁ」


しばらく押切は車の性能などを得意げにマシンガントーク調で語っていたが、岡西にとってはなにがどうすごいのかサッパリわからなかったという。


「あの~、先生。そろそろ出発しないといけません」


絶妙のタイミングで小倉橋が押切の話に割ってきた。


「あ~、せやった。ごっつ腹減ってる思うさかい目的地まで飛ばすでぇ」


そう言って押切は車のエンジンをかけた。


「!!!!!!!!!」

(な、なんだこの爆音は! 工事現場の音よりもタチ悪い! これほんとに車のエンジン音か? 押切先生はいったいどんな改造をしてるんだ……)


エンジンをかけたのと同時にこの世のものとは思えない爆音に岡西は絶句した状態で両手で自分の耳を塞いだ。実は押切のマスタングには直管4本出しマフラーを装着してるため、ただでさえ騒音がひどいのである。


「ワハハハハ、今日のワシのマスタングも絶好調やぁ! ほな、出発!」


押切はアクセルを踏んで一気に加速を始めた。後部座席に座っている岡西はバランスを崩しそうになったがどうにか両足で踏ん張って耐えた。


(小倉橋さん以外が誰も乗りたがらなかったのはこのためか……。悪夢だ……。さっきもらった耳栓なかったらもっと地獄だった……。ミッチを連れてきていたら確実にKOだったよ……。アイツを連れてこなくて正解だった。しかしマジでこの爆音は尋常じゃない……)


岡西は出発してからしばらくの間、マスタングのエンジン音と心の中で闘っていた。


(そういや小倉橋さんは平気なのかなあ?)


岡西は耳を押さえた状態でちらっと助手席に座っている小倉橋の後姿を見たが、小倉橋はどっしりと落ち着いていて平常心を保っていた。また、小倉橋の耳元をよく見るときっちりと耳栓をしていた。


(すげぇ、これだけの爆音なのによく平然としているなぁ。俺なんか耳栓しててもまだ厳しいのに……)


岡西は小倉橋の驚異的な精神力に脱帽状態だった。


 出発して30分後、最初はマスタングの爆音に苦悶していた岡西もどうにか普段の会話ができるようになったが、今度は押切の運転のスピードの速さに困惑の色を出し始めた。


「押切先生、ずいぶん飛ばしますねえ……。スピード違反で捕まりますよ」

「ワハハハハ、心配いらへんでぇ~。警察なんかブッチすればええさかい」

「む、無茶な……。違反切符切られたことないんですか?」

「あれへんなぁ、警察に追われても条件反射で振り切るのが日常茶飯事やったさかい。逃げ切れれば結果オーライやさかい安心し~や。ワハハハハ!」


心配する岡西の言葉も全く聞かず自信満々に高笑いする押切。岡西はあまりの押切の交通マナーの悪さに唖然とするしかなかった。


(俺はとんでもない先生から騎乗依頼受けてるんだなぁ。事件沙汰になって俺の騎乗依頼に影響が出たらどうしよう……)


押切の非現実的な一面を知り先々にいろいろと不安を感じる岡西。その時、小倉橋が岡西にふと携帯のメールを送った。メールの内容は以下の通り。


【本文】

 岡西君、この先生に対して常識を求めても無駄だよ。あまり深く考えると体に毒だし、わたしがついてるから大丈夫だよ。せっかくの温泉旅行を楽しまないとね。


(小倉橋さんの割り切り方すごいなぁ。至る所で神様だよ。廃業寸前の押切厩舎を支えてたのもうなずける。小倉橋さんの言うとおり気持ちを切り替えないと……)


小倉橋からのメールを見て岡西は周りの風景を見ながら話のネタを探し始めた。すぐ気づいたことだが大林・外岡の運転する車が自分達が乗ってる車から確認できないことがわかった。


「あの~、押切先生。他の2台の車が追いついてないみたいなんですけど……」

「なんやて? ったくトロい奴らやわぁ。ちょっとどやしつけてやるわ。まずは大林に飛ばすように同乗者にかけてやっか……」


押切は舌打ちしながら大林の運転する車の誰かに電話をするために携帯メモリを検索しはじめた。そこで見つけたのが谷口だった。押切は谷口に電話をかけはじめた。「はよワシに追いついてこんかアホタレ! トロいんやボケ~!」と一喝して電話を切った。必殺の通話時間2秒の電話である。その後、外岡の車に同乗してるちゅんにも同じ内容の2秒の電話をかけたという。残りの2台の車の運転手の大林と外岡はもちろん大困惑である。というのも押切の運転する車は通常の規定速度の40キロオーバーで進んでるのにたいして他の2人は通常速度なので追いつくこと自体物理的に不可能である。つまりスピード違反してでも追いついて来いという無茶振り指令である。


(この先生は自分が飛ばしすぎという認識ないのだろうか? おっとイカンイカン! 俺が滅入ってはダメだ! ん?)


ちょうどその時信号待ちでとまり、岡西の目の先にコンビニエンスストアが見えた。


「あの~、押切先生。あそこのコンビニでトイレ休憩しません? ちょうど喉も渇いた頃だと思いますし」

「お~、せやなぁ。ほなあそこのコンビニに寄るかぁ。そんでもって便所した後にコーヒーのブラックでも買うかぁ。ワハハハハ!」


押切は岡西の提案を快く承諾してくれてコンビニに車を止めた。押切は一目散にトイレに向かっていった。岡西と小倉橋も続けて車を降りた。岡西は店内に入り飲料水コーナーでスポーツドリンク500ミリリットルのペットボトルを手に取った。


(うん、これが無難なところだな)


岡西は商品を手に取った後、店員がいるレジに持っていった。会計をしてもらおうとした時、岡西は接客に当たった若い男性店員に話しかけられた。


「あれ? も、もしかしてJRA騎手の岡西さんですか?」

「ええ、そうです。わかりました?」

「す、すげ~、本物だ~。今日の七夕シリーズ競馬場に行きたかったんですけどバイトはずせなくて…。でも電話投票で馬券買って9~11Rで3つとも馬券取れたんですよ! 岡西騎手の馬を軸にしててよかったです! ほんとにお世話になりました!」

「いえいえ、今日はたまたま調子がよかっただけですので」


岡西と店員が雑談してる時にちょうど押切がコーヒーのブラックの缶を2つ持ってきた。


「ん~? 岡西君、どないしたんやぁ」

「あっ、押切先生。この店員さんが今日の七夕シリーズで馬券を3つともとったらしく感謝されまして」

「ワハハハハ、そうなんやぁ。ちなみにその勝ち馬3頭の調教師はこのワシやでぇ。兄ちゃん! ええ仕事してるやんけ~、ワハハハハ!」

「あ、ありがとうございます……」


突然名乗ってきた押切に困惑するコンビニ店員。彼はいきなりトイレを借りに来たこのガラの悪い客がまさか中央の押切調教師とは夢にも思っていなかったのである。


「あっ、会計をしてもらわないといけませんね」

「せやな、岡西君のペットボトルの分もワシが出すさかい」

「えっとお会計357円になります」

「よっしゃ、ちょうどあったでぇ。袋はいらへんでぇ」

「はい、ちょうどお預かりします。毎度ありがとうございました。これからも頑張ってくださいね」


会計後、押切は2本の缶コーヒー、岡西はスポーツドリンクを持って店内を後にした。押切の車の助手席にはすでに小倉橋が待っていて、押切と岡西はそれぞれの席に乗り込んだ。


「いや~、押切先生。まさか立ち寄ったコンビニで競馬ファンの人がいたのは予想外でしたねえ。しかも僕の顔が知られていたとは……。普通競馬関係者の顔は競馬場外ではパッと見てもすぐ気づかれるものではないんですけど」


岡西は手に持ってるペットボトルのスポーツドリンクのふたを開けて一口飲んだ後に語った。


「ワハハハハ、せやな。レース中やったら馬柱表見ればどの競走馬に誰が乗ってるのかはわかるんやが、馬乗ってへんやったら基本的に誰なんかわかれへんからなぁ。まあ名の売れたジョッキーやったら気づかれやすい思うが、岡西君の実績から行って十分顔知られてるやろう。今年ダービー勝ってダービージョッキーにもなれたんやから」


そう言って押切は缶コーヒーの1本を空けて一気に飲み干した。


「馬券外した人だったらどんなこと言われてたことやら……」

「ワハハハ、そないな奴はこのワシがシバいたるさかい安心し~や! ほな旅館に向けて出発~!」


押切がマスタングにエンジンをかけたのと同時にまたもや轟音が鳴り響いた。スポーツドリンクを飲んでいた岡西は不意を尽かれて危うく噴き出しそうになった。


(くっ、このスタートのエンジン音は慣れん……。早く旅館に到着してもらいたいものだ…。小倉橋さんは相変わらず冷静だな)


押切が運転するマスタングは、車道に出るとき右か車が来てるのも確認せずに勢いで一気に飛び出て走りはじめた。歩道と車道の段差のところでガクンと揺れて、後部座席に乗っていた岡西はバランスを保ってどうにか転倒を免れた。


「あ~、すまんな~。後続の連中に抜かれたかもしれへんからちょい急ぐわ~」

「そ、そうですか……」

(ったくこの先生はもっと丁寧に運転できないものかなぁ……。鞍上にいるときよりもこっちのほうがよっぽど危険だよ……)


押切の危険運転に大困惑の岡西。彼は後にさらに恐ろしい目に遭うことはこの時は知る由もなかったという。



──20分後──


 押切の運転するマスタングは無事に目的の旅館に到着した。時計は17時半をさしていた。大林・外岡の運転する車はまだ旅館には到着してなかったという。


「なんや~、あのアホ共まだ着いてへんのかいな~。ホンマにトロい奴らやわぁ。岡西君、スマンなぁ」


押切は車を降りて舌打ちしながらもう1本の缶コーヒーを飲み始めた。


「いえいえ、あっそうだ。押切先生、だいぶ前に福島出身の美浦の厩務員の人からもらった飯坂温泉割引チケットを持ってるんですけど、これが適用されると10人以上の団体割引プラス地元の名酒が夕飯の時に付くみたいなんですよ」

「ホ、ホンマかいな! そらすごいなぁ!」

「ちょっと旅館の人に聞いてきますので」

「ウンウン、どうせ来てへん奴ら待つのおっくうやから岡西君に確認お願い頼むわ~」

「ではちょっと行ってきます」


岡西は駆け足で押切と小倉橋がいるところを離れて旅館の受付に向かって行った。


「いらっしゃいませ。ご予約のお客様でしょうか?」


数人の従業員が岡西を出迎えていた。


「はい、あの~、1泊2日で予約を取っていた押切厩舎一行のものですけど。この割引チケットはこの旅館でも適用されますか?」

「ちょっとお待ちください」


岡西から割引チケットを受け取った受付の女将はチケットの確認をした。裏側には紹介者の名前がフルネームで『草野秀樹』と直筆で書かれていた。あのギガクロスブレイクの厩務員をしてる草野のことである。


「お客様は草野さんとお知り合いで?」

「ええ、そうです。僕は草野さんが世話をしてる競走馬に乗せてもらってる騎手です。あの人にはいつもお世話になっていまして……」

「まあ、そうでしたか。ちょっとお待ちになってもらえますか?」

「え? それはかまいませんけど……」

「ちょっと~、みなさん~。秀樹さんが世話してるお馬さんの乗り手さんがお客様で来たわよ~」


受付の女将の呼びかけで年配の5.6人の従業員が駆けつけてきた。


「へぇ、この若い人が」

「秀樹さんはなんか大きいレース取って大喜びしたと○○さんから聞きましたわぁ~」

「確か秀樹さんにはお子さん2人いて育てるの大変だったみたいだけど大きいレース勝てて生活安定したみたいですわぁ」


駆けつけた従業員達と受付の女将が懐かしそうに草野厩務員についての井戸端会議を始めて、ポツンと取り残された岡西は割引についての話を出しづらい状況になった。


(オ~イ、オバちゃん達~。なんか忘れてね~か~?)


「ちょっと皆さん! お客様をないがしろにしてどうするんですか?」


突然ピシャリと鋭い一言が飛んできた。旅館の総女将である。服装が他の従業員に比べて明らかに上質のものを着ていてのですぐにわかった。困惑していた岡西にとってはいいタイミングでの助け舟であった。


「ス、スイマセン……。総女将……」


井戸端会議をしていた従業員達は萎縮して平謝りしはじめた。


「お客様、申し訳ありません。従業員がとんだ失礼をいたしまして……」

「いえいえ、お気になさらずに」

「あっ、割引についてですが当旅館でも適用されます。お客様は10名様以上でしょうか?」

「ええ、僕を含めて11人です」

「それなら大丈夫です。あとお客様にお願いがあるのですが……」

「なんでしょうか?」

「あの~、この色紙にサインをしてもらえないでしょうか?それと記念写真も撮りたいのですけど……。著名人の方が来たということで旅館の宣伝にもなりますし」

「ええ、いいですよ」

「ありがとうございます~」


従業員達は嬉しそうだった。


「まあ、お待たせさせた上にお手数までかけさせましたのにほんとにスイマセン。本来1.5割引なんですが2割引にします。あと地酒は2種類あるのですが本来はどちらか1つしか馳走になれませんが2種類お楽しみできるように手配致します」


総女将は岡西に深々と礼をした。


「いえいえ、これくらいお安いごようですよ」


岡西は笑顔で答えた。撮影の準備の間に岡西は色紙にサインを書いて隅のところに『△△旅館さんへ』という締めくくりで色紙サインを書き終えた。そして写真撮影は中央に岡西と総女将、さきほどの従業員6人が二手に別れて横一列に並んだ。写真を撮ってくれたのは番頭さんらしい男性従業員であった。その後、岡西は待たせている押切達のところへと戻っていった。


「オマエらはなにチンタラしとんのじゃボケ! ワシらをどんだけ待たせれば気が済むんじゃ! あぁ?」


大林・外岡の車はちょうど岡西が割引チケットの確認に行ってる時に到着していた。押切の車がついて約20分後だったのだが、それでも押切の説教の対象になるという。


「い、いや~、その~。ちょうど夕方のラッシュ時でけっこう車が混んでまして……」


大林は頭をかきながら押切に到着遅れの理由を語り始めた。


「はぁ? オマエそんなん追い抜いていけばえ~だけの話やんけ~! そんな単純なこともオマエらはわかれへんのか~! あぁ? ワシの車は20分ほど途中でコンビニに立ち寄ったんやでぇ。そんでもワシより到着遅いってどないなっとんのやぁ!」


大林・外岡は普通に運転して旅館に到着したのになぜか説教されるという理不尽さ。ちょうどその時、岡西がみんなが集まってるところに駆けつけてきた。


「押切先生、割引チケットのことなんですけど団体割り引きで1.5割引から2割引まで引き上げました」

「おぉ」

「さらに地酒は本来2種類のうちのどっちかしか選択できないものですが、総女将さんのはからいで2種類楽しめるようになりました」

「な、なにぃ! 岡西君、それはホンマかいな?」

「ええ、僕が色紙にサインしてなおかつ旅館のスタッフの人達との記念写真撮影に協力したら、手配してもらえました」

「かぁ! 岡西君はレース外でもやってくれるわぁ! よっしゃ! ほなオマエらいくで~!」


押切は岡西の報告と同時に説教モードから脳天気モードへと瞬時に入れ替わった。


(助かった~)

(す、すげぇ。ウチの先生の機嫌が一気によくなった……)

(岡西君は神だなぁ……。小倉橋さんでもあそこまで瞬時に一変させれないのに……)


小倉橋以外の厩務員達は岡西という助け舟に救われた。実際は押切が割引と地酒に釣られただけの単純なことである。押切の呼びかけと同時に一行は旅館の入り口へと各自の荷物を持って向かって行った。ちょうど岡西は後方で小倉橋と並行して歩いていた。


「岡西君、いいタイミングだったよ」


小倉橋は右手の親指を上に立てて頭を2.3回軽く縦に振って笑顔で岡西に話しかけた。


(???)


岡西は押切の説教のところに出くわしてなかったため、小倉橋の言ってることがしばらくの間、理解できなかったという。

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