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ジョッキー達の休日

 時は2005年シーズンの6月4週。2005年シーズン上半期のレースはすべて終了した。上半期に行われたG1は合計11レースで、そのうちの4つ、全体の約3分の1を岡西が制覇した。ここ4年間G1勝ちに見放されていた岡西にとってはまさに大飛躍と言ってもいい成績である。当の本人はもちろんこの成績だけで満足はしていない。夏競馬・秋のG1戦線に向けてさらなぬ飛躍、そして武井匠からリーディングジョッキーの座を奪取することを常に心の中に秘めている。また調教師では本岡や押切にとっても飛躍の年であった。本岡はオンリーゴールドで重賞初制覇とG1初制覇。オンリーゴールドはレースの反動で怪我を負い療養中だが、夏競馬はユーロギャラクシーとちゅんのコンビで障害重賞を狙っているという。一方押切は4月に岡西と出会い、その後ユーロステイテッドで重賞初制覇を達成。厩舎経営も開業当初に比べて断然よくなっている。目標はユーロステイテッドでのG1制覇と夏競馬で1つ重賞を取ることである。このようにそれぞれ夏に向けて着々と準備を進めている。


 なお、今回の話は競馬から離れてジョッキー達の休日の過ごし方にスポットを当てようと思う。


──6月4週月曜日17時頃、栗東市内某所──


「カンパーイ! お疲れ~~~~!!!」


ある居酒屋で若い男女12人の団体が幹事の挨拶の後に、ジョッキを合わせてそれぞれ思い思いに生ビールの味を楽しんでいた。男性陣はみんな現役の騎手で女性陣はみんな一般の人である。この合コンに参加してる騎手のメンバーは合コン部長の福沢・副部長の武井幸・14期生から池越・現在2年目の若手騎手の川辺・藤波・ちゅんの3人であった。騎手の休日は基本的に月曜日しかないため福沢がこの日にセッティングをしたわけである。


「祐介先輩、まずは自己紹介からしますか?」

「せやな、ほな男性陣も女性陣も全くの初顔合わせなので野郎のほうから自己紹介してこ~か?」


ある程度飲み食いが進んだのを見計らって、武井幸の一言で福沢が順番に自己紹介をするように言ってきた。男性陣は順番にそれぞれ自己紹介して最後にちゅんの出番が回ってきた。


「えっ、え~と……鈴木中といいます。名前の部分の漢字からちゅんと呼ばれています…。他のメンバーは親族の方に競馬関係者の人がいますけど僕にはいません。いずれはG1勝ちを取れるように頑張ろうと思いますので…よ、よろしくお願いします。ち、ちなみに師匠はとんでもなく怖いです」


ぎこちない口調でちゅんなりに自己紹介を終わらせた。


「ちゅん君、堅いし長~い!」

「この場でも超万馬券しでかすつもりか~?」


他の男性陣からの冷やかしが飛んで来てそのたんびに笑いが起こる。ちゅんは基本的にいじられキャラである。その後、女性陣の自己紹介もスムーズに進んだ。6人ともタイプが違う女性で、ホステス・看護師・保母・インストラクター・美容師・OLという顔ぶれ。気が強そうなのはホステスとインストラクター、優しそうなのが看護師と保母と美容師、最後に性格が控えめなのがOLである。


「ねえ、この中で今年G1勝った人おるん?」


インストラクターの女性が男性陣に尋ねてきた。


「ハーイ!」


即で挙手をしたのは3人。福沢・武井幸・池越の3人であった。


「ちょい待て! オマエちゃうやろ? 俺と謙は1つずつ勝ったけど!」

「いや~、あの~、アイツの代理言うことで」

「アイツの代理って……。オマエ、アカンやろ?」


福沢は武井幸のボケにすかさずツッコミを入れる。武井幸にとってインストラクターの女性が自分好みだったのか? それとも場を盛り上げるためにふっとボケをかましたのか? いずれにせよ2年目の3人に比べて武井幸は場慣れしてることは確かである。


「アイツって誰なん?」


インストラクターの女性はすかさず武井幸に尋ねてくる。


「ん~、俺らの株を下げた大元凶や。今年ダービー勝ってすましてるヤツ。ねえ、祐介先輩!」

「なんでそこで俺にふるんや? そら俺は今年上半期のG1でアイツの2着を2回も味わったけどなぁ」

「そ、それって岡西さんのことですか?」


ふとちゅんが話に加わってきた。


「おいおい、ちゅん君~。アカンやろ~。そこで名前言ったらオモロないやろ~」


武井幸は待ってましたといわんばかりにグラスにビールを注ぎ始めた。


「えっ、えっ!」


ちゅんはわけわからずに焦り始める。


「うわ、幸治先輩ひでぇ。後輩いじめだ~」


武井幸の横にいた池越はそう言いながら笑っていた。


「あ、あの、僕、岡西さんには大変お世話になってまして……」

「はいはい、ヤツからどれくらい金もらったかなぁ~?」


武井幸はちゅんの言動を計算したかの如く2つ目のグラスにもビールを注ぎ始めた。


「いやいや、お金なんてもらってませんよ……。ただ騎乗技術の師事をしてもらっただけで……。騎乗停止期間中はいろいろと教わってらっただけで……」

「ん~? そういやちゅん君はダービーの週の時、斜行したんやったなぁ~? ちょうど俺の兄貴もそのレース出てて不利被ってやたら怒ってたのでその分もっと。しかもそのレースの勝ち馬はアイツが乗ってたということでなおさらやな」


武井幸が注いだグラスはこれで3つになった。


「そ、そんなぁ」

「はい、駆けつけ3杯!!」


間髪もいれず武井幸の音頭でちゅんは飲まされる体制になった。ちゅんはやけくそながらもどうにか飲み干した。周りは割れんばかりの拍手だった。


「お~、お疲れ~。ちゅん君おいしいなぁ。自分ばっか目立って。同期のオマエらはコイツにリードされとるやんけ~」


福沢は空気気味の川辺と藤波にふと喝を入れる。


「いやいや、福沢さん。僕らは昔からちゅん君にはおいしいところばっかり持っていかれてるんですよ~」

「騎手学校時代ではある意味でエースでしたから」

「ある意味って一体どんなことしでかしたんや?」

「うわ~、勘弁して~。僕の暴露話~」

「ちゅん君のサクセスストーリー聞きた~い」


最後に女性陣の1人が言い出した。


「女性のリクエストに答えてやるのが男ってもんだぜ。お前らのどっちかはよ話せや」


催促する福沢に川辺と藤波はいろいろと話し始めた。内容は基本的にちゅんの騎手学校時代の日常に関するもの。20期生の中では落ちこぼれのほうだったのはもちろんのこと、教官からの飯抜き指令のトータル数は歴代ダントツの1位。体重オーバーになりかけて退学になりそうだった数も歴代1位。これらが基本的なステータスでエピソード的なものは空腹に耐えかねて脱走しそうになった回数も週2くらいのペースで起こしていたという。こんなちゅんでも騎手学校を卒業できたというのが7不思議の1つに挙げられるくらいである。それ以外の内容でも川辺と藤波から次々と話が出てそのたびに笑いが飛び交ってくる。


「そういやちゅん君が障害レースで落馬してケツに大穴空けて医務室に運ばれた時、全身黒レザーのいかがわしいグラサンのおっかない人がねりわさび持って不敵な笑みで向かってたのを見て俺ビビったぜ」

「え、ええ~! 押切先生が持ってきたのはあれ薬じゃなくてわさびだったんですか~~?」

「その後アイツに乗り替わりだったよなぁ?」


福沢から聞かされたお笑いエピソードで会場の爆笑はピークに達した。


「まあ最近のエピソードといい、騎手学校時代の話といい確かにすごいと言えばすごいわなぁ。だが、お前達の世代はまだ可愛げあるからええで。俺の代の時なんか笑えん問題ばっか起こってたからなぁ」


そう言ってきたのは武井幸であった。


「え? 幸治さんの時はどんなんやったんですか?」

「まあ原因の十中八九はアイツ絡みだからなぁ。俺が話すと丸1週間使うぞ。それだけネタは豊富なんやから」

「うわぁ~、メッチャ気になる~!」

「幸治さん、岡西さん呼ぼうよ~」


女性陣と池越・2年目の川辺と藤波は完全に岡西指名体制に入った。武井幸と福沢は苦笑いの表情で対応に困っていた。


「まあとりあえず俺がアイツに電話かけてみるわぁ。アイツ今なにやってんだろ?」


そう言って武井幸は携帯メモリの中に入ってる岡西の携帯番号を探し始めた。



──同時刻、都内歌舞伎町にて──



 栗東で合コンが盛り上がっている時、こちらでは2人の騎手が歌舞伎町に来ていた。正確には岡西が1人の後輩騎手につき合わされていたと言ったほうがいいだろう。


「おい、マス。お前の稼ぎで飲み代払えるのか?」

「大丈夫ですよ。なんかあった時は頼りになる岡西さんがいますので!」

「お前、俺が酒飲めないの知ってるだろ?」

「いやいや、飲めない人がいるからこそ重要なんですよ。どっちも酒飲みだったら記憶飛んでえらいことになりますので。帰りの足にも困ってしまいますし」

「全く調子のいいことばかりいいやがって……。飲みすぎて帰りがけに俺の車の中で吐いたりした承知せんからな」


岡西と行動してる『マス』という呼び名で呼ばれた騎手の本名は増岡正和という美浦所属の騎手で、2年目あたりから着々と勝ち鞍を伸ばし続けている現在売り出し中の若手騎手である。増岡は大のキャバクラ好きでも知られていて本業で稼いだ賞金をかなり浪費するという。


「大丈夫ですって! 岡西さんの好みの女の子だっていますから」

「ほんとかよ? お前の情報は基本的に当てにならんからなぁ」

「まあまあ、まずは軽く一杯いきましょう!」

「ったく……」


増岡に引っ張られるように岡西はめんどくさそうな表情でキャバクラの店へと入っていった。


──それから約50分後──


「いや~、やっぱ女の子に酒注いでもらえて楽しく会話できるっていいですねぇ」

「そんなもんかなぁ?」


ホロ酔いも入って上機嫌で店から出てきた増岡と、腑に落ちない表情で出てきた岡西。


「あれ? 岡西さんについてた女の子は僕がついてた女の子より顔も可愛かったしスタイルもよかったやないですか」

「一般的にはな……。俺的には口説く気ゼロだったけど」

「うわ~、岡西さん相当硬派なんですか?」

「硬派というより好みがうるさいだけだと思う。まあ俺が酒飲めないからイマイチ盛り上がれなかったものあるけど」

「ひょっとしてお触りのほうが好きなんですか?」

「どっちかというとそっちのほうがいいかな……」

「うわぁ、岡西さんけっこうエロいですね」

「エロって言うなよ……」

「まあとりあえず無料案内所あたりに行って案内してもらいましょうか?」

「そうだな……」


そう決まって近くの無料案内所に向かおうとした岡西と増岡。その時、岡西の携帯から関西の重賞入場行進曲の着信音が鳴った。


「スマン、電話がかかってきた。ちょっと待っててくれ」

「あっ、は~い」


「誰だろ? ん? タケコーだ……。なんだろこんな時に……」


岡西の携帯のディスプレイの着信者には『武井幸治』と出ていた。不思議に思いながらも岡西は電話に出た。


「はい、もしもし」

『よ~、摩那舞~! 今なにしとんのやぁ!』


いきなりの武井幸のハイテンションぶりに迷惑そうな表情をする岡西。岡西から聞こえる先には店の客の騒音で相手の話が聞き取りにくかった。


「なんだいきなり、ずいぶん騒がしいなぁ。俺は今後輩と出かけてる最中だ」

『いやなぁ、今栗東市内で祐介先輩のプロデュースで合コンやってるんやけど話の展開でお前を呼び出せと女性陣からリクエスト来たんやぁ』

「呼び出し? 冗談だろ? 今から栗東なんて行けるわけないだろ……」

『そう堅いこと言うなって。お前好みのボインの女の子もおるで~』


電話越しで多数の男女の笑い声が聞こえてきたので岡西はなんかあるなと察知した。


「嘘を言うな。お前や福沢先輩が俺好みの女を用意できるわけがない。多分また俺の過去のことを餌にしてウケ狙ってるんだろ? その手には乗らん。というわけで……」


そう言って岡西は電話を切って電源をオフにした。


「あっ、アイツ切りやがった! もう1回かけてみるか!」


武井幸は再度岡西に電話をかけた。


《アナウンス》


 おかけになった番号は電波の届かないところか、または電源が切ってあるためかかりません……。


「アイツ携帯の電源切りやがったわ!」

「え~、岡西さん来ないの~?」


女性陣の残念そうな声に困惑する武井幸。


「まあこの通りアイツは案外性格悪いんやでぇ~。てなわけで師匠の粗相を弟子のちゅん君に飲んでもらうことにしよう~」

「え~、そ、そんなぁ。僕関係ないのに~」


岡西呼び出しが不可になったため替わりに夜遅くまで飲まされるちゅんであった。しかしちゅんにとってこの合コンは騎手生活における1つの転機でもあった。詳細は後の話で…。


 場所は戻って再び歌舞伎町。気難しい表情の岡西に増岡が話しかけてきた。


「岡西さん、誰からの電話だったんですか?」

「西側の連中だ。栗東市内で合コンやってるみたいだ。あるヤツが今から俺に栗東まで来いとかぬかしやがった……。俺は合コンは大の苦手なのに」

「岡西さん、合コン行った事ないんですか?」

「ああ、ないね。ああいう場はいるだけでも嫌だから。いくら自分好みの女がいてもどうも落ち着かん。そろそろ案内所だな。あそこに入るか?」

「そうですね」


そう言って2人は案内所に入っていった。案内所にはいかにも夜の街で案内役をしてるホスト風の店員がいた。


「いらっしゃいませ! どんな店をお探しでしょうか?」

「えっと、お触り系の店はありますか?」


増岡が店員に聞いてみた。


「ええ、このへんがお触りの店です。今ならキャンペーン中でお安くなってますよ! ご案内しましょうか?」


店員は笑顔で紹介してきた。


「岡西さん、どれいきます? お任せしますよ」

「う~ん、そうだなぁ」


店の看板を見ながら考え込む岡西。女の子の写真を見ても岡西はイマイチしっくりいかなかった。


「お客さん、この店は胸の大きい子けっこういますので今お勧めですよ」


店員は今オープンキャンペーンをやってる店を紹介してきた。岡西は考えた末にそこに決めた。


「では今から店の人を呼びますのでしばらくお待ちください」


そう言って店員はその店に電話を入れていた。


「あっ、お疲れ様です。2名様ご案内お願いします~。はい、失礼しま~す。しばらくしたら案内の人が来ますのでしばらくお待ちくださいね」


そうして数分後、チーマー系の案内係がやってきた。岡西と増岡はそのチーマー系の男性についていって店へと向かって行った。



──約1時間後──



「いや~、やっぱり興奮しましたねえ」

「う~ん、やっぱダメだ……」


増岡のほうはテンションは高いが岡西のほうは全くの正反対。


「え? あれでダメなんですか?」

「あの案内係にだまされた気分だよ……」

「うそ~、岡西さんの好みって一体……」

「わからんのか? あの案内係はさっき胸が大きい子がけっこういるって言ってただろ? それなのに出てきたのはせいぜいEカップくらいしかいなかった。最低でもFはないと……」

「岡西さんって大の巨乳好き?」

「ああ、俺は相手の胸がでかくないと異性として見れないんだ……」

「うわ~、厳しいなぁ」


岡西の意外な新事実を聞いてリアクションの取り方に困惑する増岡。さきほど案内所で岡西が考え込んでいた時があったと思うが、あれは自分好みの女がほんとにいるかどうかというのを考えていたからである。入った結果がハズレだったので岡西のフラストレーションは溜まる一方であった。


「そうなると残ってるのは……ヘルス系ですかね……」

「無料案内所の紹介では俺好みのはいそうにないなぁ。お前どっか知ってる店あるか?」

「う~ん、そうですねぇ。そういや僕が気になってた店があったんですよ」

「ほう」

「えっと確か……。あっ、これだ!」


増岡は岡西にポケットの中に入っていた広告を見せた。


「なになに? ふむ……」


その広告には『良質の美巨乳女性多数』・『騙しや振り替えは一切ありません』・『初回のお客様指名料無料』などいかにもという内容のものばかりだった。


「どうです? ここ行ってみます?」

「う~ん、お前は行ったことあるのか?」

「僕はないですけど友達がここに入ってすげーよかったとか言ってましたので……」

「そうか、なら行って見るか」

「では、行きましょう!」


半信半疑の岡西とその岡西の機嫌を良くしたいと必死の増岡。2人は目的地の店まで徒歩で歩いていった。


 場所は再び栗東に戻ってこちらの飲み会はお開きになった。参加したメンバーの中で最も酔っ払ってたのはちゅんだった。同期の川辺と藤波に支えられながらどうにか店を出る。こちらはそれなりに盛り上がって企画は大成功だった。


「おい、お前ら大丈夫か?」

「あっ、はい。僕らがちゅん君についてますので」

「そんなら運転手さん。こいつらを栗東の若駒寮まで送ってください」


このタクシーに乗ってる客のメンツは後部座席にちゅん・川辺・藤波の3人。そして助手席に控えめなタイプのOLの女の子だった。この子はちょうど家が若駒寮と同じ方向だったので同乗することになった。


「福沢さん、今日は楽しかったです。またよろしくお願いします」

「ああ、ええよええよ。ちょっと後ろはむさ苦しい男が3人もおるけどなんかあった時はお願いしていいかな? 特に真ん中の酔っ払いに対して」

「わかりました、では失礼します。またお願いしますね」

「あいよ、気をつけてな~」


福沢が見送る中、4人を乗せたタクシーは若駒寮に向かって走り出した。他のメンバーもそれぞれ帰った後で残ったのは福沢と武井幸だった。


「祐介先輩、みんな帰りましたね」

「そうだな、俺らも帰るか」


そう言って福沢と武井幸は家に向かい歩き始めた。


「それにしても今日はちゅんが大フィーバーやったなぁ」

「そうですね、だってゲームはほとんどちゅんがチョンボかまして粗相でしたからねえ。そういや奴は1人の女の子をやたら気にしてましたね」

「誰や?」

「ほら、さっき2年目の連中と一緒にタクシーに乗って帰った女の子」

「ああ、あの子かぁ。他の5人に比べてあんま目立たなかったから俺はあんまり印象残ってへんやったわぁ。ちゅんもなんやかんやでスミに置けんヤツかもしれんな」

「これでカップル成立とかなったら……」

「どうなんやろ? ちゅんとあの子の組み合わせ……。想像つかへんわ……」


福沢と武井幸の談笑は自宅に着くまで続いたという。


 再び場所は歌舞伎町に戻る。岡西と増岡が入ってから1時間が経過。先に出てきたのは増岡のほうだった。


「いや~、すごかった。俺にとっては強烈だった。まだ岡西さんは出てきてないなぁ。しばらく待っておこう」


増岡は店の出口の階段に座って岡西が出てくるのを待っていた。そして10分が経過したときに岡西が出てきた。岡西の表情は極めて厳しいものだった。


「あっ、岡西さん。どう……でした?」


増岡は岡西の厳しい表情を見て、恐る恐る岡西に感想を求めてきた。


「どうもこうもあるか……。完全に騙された……。俺についた女はバストのサイズ2つもサバ読んでた……。挙句の果てにドラム缶……。やってられんわ……。マス、帰るぞ!」

「あ~、岡西さん。待ってくださ~い」


岡西は怒りのオーラの状態で自分の車を止めてる駐車場へ早足で向かって行った。岡西の無言の圧力に恐れながらも慌てて岡西の後を追いかける増岡。車を止めてるところまで歩いていくのにしばらく気まずい雰囲気が続いた。


 それから数10分後、岡西と増岡は駐車場に到着。そして車に乗り込んだ。岡西はエンジンをかけて車を出し始めた。そしてしばらくして無言を貫いていた岡西が増岡に語り始めた。


「お前なぁ、巨乳の女性というのはなぁ」


その後、歌舞伎町から美浦の若駒寮に着くまでの約3時間、岡西は増岡に自分好みの女性の理論を懇々と叩き込んだ。1つ1つの内容が非常に密度が濃くて増岡にとっては地獄の3時間だった。また岡西のとんでもなく恐ろしい一面を知ってしまった日と増岡は後日談として語っている。

《モデル騎手紹介》


増岡正和→松岡正海(騎手)

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