表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/51

プロローグ

 この物語の基本的な展開として主人公の押切調教師の視点と準主役の岡西騎手の視点のいずれかで話は進みます。視点を2つにした理由といたしましてそれぞれ別の役割を担っているためです。押切調教師が読者の笑いを取りに来るタイプで岡西騎手はシビアな勝負の緊張感を読者に伝えるタイプです。

 ここは滋賀県栗東市にある栗東トレーニングセンター。1969年11月11日に開設された西日本の中央競馬の調教拠点である。このトレセンが開設される前の関西所属馬は京都・阪神・中京のいずれかの競馬場で調教が行われていたが、当時は平坦なコースばかりで調教トラックも少なく十分な調教ができなかったため、長らく関西馬は劣勢に立たされ続けていた。この劣勢を打開するためにこの栗東の地に本格的な調教専用トラックが開設されたわけである。


 現在は「トラックA〜D」と「坂路」の5つから成り立っていて、そのうちトラックのC・Dと坂路コースには木片を敷き詰めた「ウッドチップコース」を採用している。これは競走馬の脚部負担を抑える効果があると期待されている。敷地面積やトラックコースの数こそ東の美浦に比べて一歩劣るものの、1985年に設置された坂路コースをはじめ様々な調教設備を美浦に先んじて質的に充実させた結果、関東圏の競馬場でも関西馬が地元の関東馬を圧倒するようになり、このため「西高東低」という天気予報の気圧配置になぞらえた言葉を言われるようになった。


 この「西高東低」の裏付けとしてまず施設面で美浦と比べると水質がものすごくいいことがあげられる。例えば関東馬が関西圏のレースに出走するために栗東に滞在するが、その際栗東の水を飲むと通常の倍も飲むくらいである。また逆に関西馬が関東圏のレースに出走するため美浦に滞在し、そこで水を飲もうとするとあまり飲まないという現象が実際に起きている。次に挙げるのが地形の差で、美浦はほとんどが平坦に対して栗東は起伏が多いのが特徴。つまり関西馬は歩いてるだけでも負荷がかかり、自然に鍛えられると言われている。最後に決定的に東西で違うのが坂路コースの高低差である。美浦は17メートルに対して栗東は32メートルと倍近くも差がある。人間の世界でも体力トレーニングで坂道ダッシュをすると思うが、坂道の高低差が厳しい所で走るほうがより体力がつくように馬の世界でも同じことが言える。しかも美浦は坂路コースを設置したのが栗東より8年も後になるのでその間に力の差が開いてしまったと思われる。


 これだけ抜群の環境にも関わらず開業して4年経つが、常に低迷を続けている迷厩舎、それが本編主人公の押切知良調教師率いる押切厩舎であった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ