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磁器人形  作者: ゆずさくら


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 燃えないまま紙が飛んでいかないよう、周りを薪で囲って中に火をつけた。

 薪を式神と晶紀で囲み、一人ひとりが、持った紙片を炎の中にくべていく。

 悪霊を含んだコピー用紙は、ただのコピー用紙よりも炎を多く上げながら燃えた。

 炎の中で、小さく爆ぜた火が、天に向かって上っていく。

「何か焼いてもいいのかな」

 晶紀が言うと、式神の天摩が言った。

「だめじゃ。炎は神聖で浄化してくれるが、芋を燃やすわけにはいかないじゃろ。炎の中で焼け残る芋には、紙から悪霊が移っておる」

 三倉が言う。

「マシュマロ焼くぐらいは?」

「なんじゃそれは?」

 三倉が説明する。

「正月のどんど焼きのように、串にさして火にくべて焼くんだよ。マシュマロは説明するより食べてみた方がいいよ」

「炎の上にかざすなら良いじゃろう」

 晶紀は知世を振り返る。

「マシュマロ、なんてないよね?」

 知世は下着姿のまま、上に防寒用のコートを羽織っていた。

 知世はそのままパーカーを振り返った。

「すぐ、ご用意します」

「ありがとう」

 パーカーが大きな袋に入った、キャンプ用大型のマシュマロを抱えて帰ってきた。

 晶紀と知世が割りばしに突き刺して火に近づける。

 適度に焼けてきたところを食べる。

 焼いて固くなった外側と、熱で溶けた中身の触感が楽しい。

 紙が残っているので知世は声を出せなかったが、楽しそうにマシュマロを食べている。

 晶紀は風間達が自分たちと同じようにマシュマロを口にしないのを不思議に思って尋ねる。

「あれ? 食べないの?」

 風間は晶紀たちの顔を見ずに言う。

「俺たちに味は判らない」

 少し間があき、天摩が風間の代わりに話し出した。

「食べること自体が無意味なんじゃよ。お前さんの霊力を受けて動いている機械のようなものじゃから」

「……」

 三倉は晶紀の手に握られているマシュマロを不思議そうに見つめている。

 三倉は手元の紙をすべて焼き尽くすと、晶紀に寄ってきた。

「食べる?」

 尋ねると三倉は小さくうなずく。

 晶紀は割りばしにマシュマロをさして手渡す。

 マシュマロを指で触れ、眺めまわした後、火であぶる。

 煙があがり、火に近い方が黒焦げになってしまった。

「……」

 パクっとまるごと口の中に入れてしまう。晶紀は思わず「熱いよ」と言いかけたが、式神に熱さが理解できるかわからなかった。

 三倉は不思議な顔をして首を傾げた。

「そっか。ごめんね」

「だから味は判らない、といったろう」

「まあ、よいではないか。何事も経験じゃ」

 風間は自分の分の紙をすべて焼き尽くした。

「ばばあ、持ってる紙半分かせ」

 天摩の分の紙を半分引き受けると、薪の炎の中に次々と入れていく。

「紙がなくなればそいつも喋っていいから」

 紙が燃えるまでは悪霊が紙の中に吸着された状態なので、言葉を発してしまうと、全身に『経』を書き込んでいる知世でも悪霊に見つかってしまう。

 微力な悪霊だとしても、知世の体を乗っ取ってしまえば、その体自体を人質にとれる訳で、非常に危険だった。

 だから、紙をすべて燃やしてしまうまで、知世が話すことを禁じていたのだ。

 晶紀は風間に「ありがとう」と言った。

 三倉はもう一度割りばしにマシュマロを刺して、炎であぶる。

 今度は煙が出ない程度の焦げ具合に収めることが出来た。

 三倉が口を開けたときに、晶紀は神楽鈴を抜いて、小さく振った。

「美味しい」

 三倉の表情が笑顔になると、風間が手を伸ばして晶紀の神楽鈴を抑えた。

「おい。やめろ」

 どうやら、晶紀が三倉にしたことが気に入らなかったようだ。

「どうして?」

 天摩が風間を押し返しながら、言う。

「風間、やめるんじゃ」

「生きてないのに生きてるように誤解させるのはよせ」

「……」

「俺たちは機械と同じだ。生きていると誤解すると、余計辛くなる」

「けど私と一緒にいるときぐらい。楽しい思い出を……」

「それが余計だって言うんだ!」

「式神が主人(あるじ)に逆らうでない」

 風間の手が神楽鈴から離れる。

 天摩は風間に紙を手渡して、再び紙を焼き始める。

 紙が焼き尽くされると、天摩が言った。

「晶紀様。われわれを鈴にもどしてくだされ」

 さみし気な表情をした晶紀が口を開き「戻れ」と言うと、三人は小さくなって宙を飛び、晶紀の手元に戻ってきた。

 三つの鈴を見つめて黙っている晶紀に知世が近づいてくる。

「皆さんは神楽鈴の鈴だったんですね」

「あっ……」

 今までは、第三者に式神を見られる度にその人の記憶を消してきた。が、さすがにこれだけの長い時間の行動を、記憶から消すことは不可能だった。

 ここまで見られてしまっては、ごまかすのも無理がある。

「この秘密は、厳守いたしますわ。パーカーも同じです」

 知世が目配せすると、執事のパーカーは深々と頭を下げた。

「う、うん。お願いだよ」




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