東京某所の高層ビル内のオフィス。
TV画面でアナウンサーが悲壮な顔で記事を読んでいる。
「今日、午後二時頃、自電車に乗っていた15歳の少年がトラックに轢かれま……」
ノルマ達成が読み上げられる度に俺は心が震える。そして、いつもの様に激甘コーヒーに口を着けた。
「にんむかっ」
「アレレレレ、センパイ。ちょっと、ちょっと」
大食い爆乳女が今日も元気な声で溌溂としていた。コイツの声は耳に残るから無視、無視。
顔は可愛いのだが、ズボラな性格のせいで彼氏は出来ていないようである。つまり、処女(未確認)。
なお、俺は童貞である。
爆乳女はマジマジとTV画面から目を離せない様である。
「センパイ。これ……」
「どうだ。俺の仕事は完璧だろ。異世界の神々の注文が多くてだな。グチャグチャの場合、アニメ化に向かないから、綺麗な状態で轢いてくれって。あのドライバーは他社のやり手でな。それに……」
「センパイ。そういう御託は良いっすから、早く。マジでヤバいっすよ。どうするんですか。センパイの案件っすよね」
爆乳女の焦る声に急かされた俺はTVを見た。
「もう一度、繰ります。自電車に乗っていた15歳の少年がトラックに轢かれましたが、命に別状はありませんでした。しかし、運転手の存在は確認されましたが、不思議な事にトラックが忽然と姿を消しました」
「……」
「センパイ。これ……」
言い訳を考えねば、前代未聞の不祥事である。クソドライバーめ。待てよ。全責任をドライバーに押し付ければワンチャンあ……。
「おい。神田。分かってんだろ。さっさと社長室に来い」
社内放送が無慈悲にも流れた。