6 出発
そうと決まればすぐに出発の準備をした。
と言っても、準備をしていたのは終始男の人だけで、
私は言われるがまま、男の人から渡されたボロボロの鎧と槍、所々錆び付いている兜を身につけた。
これらはすべてこの家の中にあったものらしい。
男の人が言うには、家主のいない家の物だから有効活用してやった方が道具も喜ぶとのこと。
この家廃墟だったんだ。 ずっと男の人の家だと思ってた。
さて、そんなことは置いておいて。
私はこのボロボロ三種の神器の他にも、替えの服二着に、わらじ、短い小刀を持たされた。
ちなみに、これら全ても当然の権利のようにボロボロだ。
小刀は懐にいれて、その他のものは大きな布でくるんで手に下げた。
ここから那古屋までは休みなしで歩き続ければ、八時間くらいで着くらしい。
なので、途中休憩を入れながら、今日と明日の二日をかけて目指す予定だと聞かされた。
自分の知っているところだと、こういう長距離の移動の時は何か道具を使ってすばやく移動していたと思うんだけど、それがなんだったのか全く思い出せない。
男の人に聞いたら、馬ではないかと言われたが、私は馬に乗った記憶がない。 他の記憶のように忘れてしまっているだけかもしれないが、なぜだかこれははっきりとわかる。
他の思い出せない記憶の全ては、なんだか靄のようなものがかかって、ぼんやりとしか頭に浮かばないような状態だ。
歩きながら、ああでもない、こうでもないと考えていたが、結局よくわからなかった。
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二度の休憩を挟み、朝食べた魚が完全にお腹の中からいなくなってしまった頃。
「そういえばお前、槍と刀は扱えるのか? 」
男の人がふと、そうに聞いてきた。
言われてみれば、なんとなく受け取ったこの重たい刀と槍。 どちらも振った経験がないように思える。
なので、両方ともよくわかりません。 と返す。
「まぁ、そう言っても俺からたいそうなことを教えられる訳でもないが、とりあえずここいらで今日は休みにして、剣と槍の振り方を教えることにしよう 」
男の人は、その後に少し待ってろと私に言って、どこかへ行ってしまった。
木陰に座って、自分の記憶のことについてもう一度考え直していることしばらく。
お腹の虫が鳴き始めた頃に、男の人が戻ってきた。
「待たせたな。 近くの村から米を買ってきた。 多くはないが、握り飯六つにはなるだろう。 まずは腹ごしらえだ 」
話しながら小さめの桶のような入れ物に詰められているお米を握って、一つ目を私に差し出してくれた。
受け取ったおにぎりはなかなか熱く、村で買ってからどこかで炊いてきたのかな? と他愛のない想像をして一口頬張った。
現代の物とか生活とかの記憶がないイメージです。
内政無双はさせません。