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和久記  作者: 華燈始
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5 仕官先


私がやると返したら、男の人は喜びつつ少し心配もしながらわかったとうなずいた。

そして、詳しいことは明日話すとして、今日はもう休むように言われた。

そういえば男の人の名前をまだ聞いていないことに気づいたが、男の人が外に出てしまい聞き出せず、しぶしぶ眠りについた。


━━━━━


翌朝。


眩しい光と、空腹感で目が覚める。

そういえば昨日は朝からなにも食べていないような……

そもそも朝何をしていたのかも思い出せない。というか、この家にいる以前の記憶がまるまるないことに気づいた。

記憶喪失というやつだろうか。

本や物語でよく見たが、まさか現実で自分がなるとは。 昨日からしている激しい頭痛の原因はどこかに頭をぶつけたからかもしれない。 それで記憶が飛んだのだろう。

そう結論付けて、自分で納得していると、引き戸が開いて男の人が入ってきた。


「おお、起きたか。 近くの川で魚取ってきたから待ってろ、今焼いてやる 」


そういって、籠に入れていた魚に串を刺し始めた。




美味しそうな焦げ目がついた魚を渡されて、ふーふーと少し冷ましてからお腹のあたりを噛みついた。

味付けはなく、魚そのままの味だが、過度の空腹状態だったためか、とても美味しく感じた。


私が食べ終わったのを見計らい、男の人が話を始める。


「さて、それじゃあ腹休めがてらに昨日の続きを話すぞ。 まず、お前にはどこぞの武家に仕官してもらう。 田を耕すなら男だろうが女だろうができないことはないからな。 お前は武士になるんだ。 ここまではいいか?」


武士……

単語は聞いたことが、いまいち何をするのか思い浮かばない。 あまり馴染みのない言葉なのだろうか。

しかし、いちいち話の腰を折っていては、昨日の決心が揺らぎかねないので、とりあえず頷いた。


「よし。 それで、お前の仕官先なのだが、普通はこんな身元の知れない怪しい輩なんて雇う家はない。 怪しまれて体を見られたら一発で男でないことがバレてしまう。 だが、その心配がいらない家がひとつある。 そこに仕官するんだ 」


なんだか聞いていて自信がなくなってくる。 本当に騙しきれるのかな?


「尾張の那古屋に本拠を置く、織田家だ。あそこの若殿は身の上も知れないような者共を集めて傭兵として訓練させているらしい。 大垣から少し移動することになるが、織田ならなんの心配も要らずに仕官できる。 どうだ? 尾張の織田に仕えてみるか? 」


おだ?

おだ……織田?


どこかで聞いたことあるような……

どこで聞いたんだっけな?


……

駄目だ、思い出せない。 何か、何か重要なことに関わっる人だったはずなんだけど……

まぁ、思い出せないなら仕方ないか。


潔く思い出すことを諦めて、「行きます」と短く返事を返した。






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