2 仏さん
何かに影響されやすい性格っていうのは中々不便です。
長い糸が途切れたかのように、私はハッと目を覚ました。
辺りを見渡すと、周囲は木々で覆われており、先程まで走っていた高速道路も、乗っていたバスも見当たらない。
「ここ、どこだ? 」
全く見覚えのない景色だ。 なんだか空気も澄んでいて、少し肌寒く感じる。
とりあえず、ここにいてもどうにもならないので、辺りをうろついてみることにした。 もしかしたら、近くに誰かいるかもしれない。
━━━そんなこんなで歩き続けること数十分。
私は一度、森の中で立ち止まった。
なにやら変な匂いがするのだ。
食べも夜を腐らせたような。 ツーンと鼻につく異臭が飛び込んできた。
そして私は見つけてしまった。
怖くなったので周囲を見渡していたとき、 前方の茂みの中にボロボロな布のようなものが目にはいった。
恐る恐る、その茂みの中を見てみると……
異臭の原因がそこに転がっていた。
身長は百六十センチ半ばほど、激しく悶絶した表情で、布地の切れ目から見える肌の一部が白骨化している男の死体だ。
「!!!━━ウェッ!………ウゥゥ…ングッ!………ハァハァ 」
それを見た瞬間、私は盛大に胃に収まっていた朝食を、黄色い液体と共に吐き出した。 前に嘔吐したのは小学校にも上がる前で、長いことその感覚に触れていなかったからか、涙まで込み上げてきた。
少し経った頃に、ドッと疲れが押し寄せてくる。 頭の中で様々な考えが行き来して、ごちゃごちゃな言葉だけが生まれては消えてを繰り返す。
そして終いには疑問と、訳のわからない怒りが混乱と共に頭を支配するようになる。
……………やっと落ち着いてきた。
吐瀉物も、仏さんも、もう見ないようにして、足早にその場から立ち去った。
疑問に不安、恐怖が渦巻き、もう動かないで泣きわめいていたい弱気を押さえ込んで、必死に走った。