白キ魔術師ノ夜
白いとんがり帽子がピョコピョコ。
私の名前はマオ。
白いとんがり帽子に白い髪に白いマント。
全身白の白をこよなく愛す白魔術師です。
今日は魔王討伐で宴会なのですが、マオは人混みが苦手なので食べたい物だけ食べてさっさと寝ます。
そういうことなのでこの話はここでおしまいです。
皆さんおやすみなさい。
宿に足を向けようとしたそのとき、マオの動きがピタリと止まった。
宴会の所にアルクと女の子が楽しそうに話している。
その女の子の両手には真っ白な本が抱えられていた。
真っ白な本!!
その瞬間マオの目は効果音付きでピカーンと光る程輝いた。
私の得意魔術、空間魔術。
一瞬全神経を心臓の辺りに集中させ、魔力を通す。
身体が熱を持ったと思った瞬間には、マオは一瞬にして女の子の背後に現れていた。
女の子の後方に居た人達は驚いて飲み物を吹き出したが、それは気にしないでおこう。
そして、後は真っ白な本を見せて貰うだけなのだが、ここでマオの動きはまたしても止まる。
どっ、どうやって話しかけていいか分からない……
そうやって話しかけれないまま固まって約1分。
「何してるんですかマオ?」
アルクに見つかるのだった。
「ひぐっ」
「いやぁ、空間魔術使ったときから気づいてたんですけどね。ちょっと面白くて観察してました」
ふふっ、と不敵に笑う耳長女もといアルク。
「それで、マオのことですからリオちゃんの本に興味があるんですよね」
アルクは、そう言って女の子の抱えている本を指差す。
女の子は「ん?」といった感じに首を傾けながら「これ読みたいの?」と問いかけてくれた。
その問いにマオはすぐに頷く。
「はい」
そう言って女の子は本をマオに差し出した。
「あっ、ありがとうリオちゃん」
そう言って本を受け取るとうっとりしたまま動かないマオであった。
それからどれだけの時間が経っただろうか。
女の子はマオから本を取り返そうと頑張ったがマオの腕力に勝てず、後でアルクが返しに行くからと約束し仕方なく帰って行った。
村人達も皆家へと帰り、残すわアルクとマオの二人だけになっていた。
そして、異変は突如起きた。
「マオ!!」
突然の大声にビクッと本を落とすマオ。
本を拾おうとしたとき、マオの表情はみるみる険しくなっていく。
「何この嫌な感じ‥‥それも村全体を囲んでる」
マオが恐る恐るそう口にすると、アルクはぎゅっと強く拳を握り、静かに口を開いた。
「間違いありません。この気配、魔獣です」