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片瀬浩一は魔王を倒してない。  作者: 惨状ポスカ
5/9

夜空ノ雨

「えっと、酒のことは別にいいんだけど、その、何で膝枕?」


「ん?この方が話しやすいかと思って」

いや、恥ずかしくてそれどころじゃありません。


こんなとこ誰かに見られたら‥‥

そう思い、辺りを見渡すと遠くで宴会をしてるような騒がしさを感じる。

俺達の周りは森の入り口のような場所、あるのは小さな小屋と小屋にくっつくように作られたベンチ。

そして、そのベンチの上で俺は膝枕されていた。


「ここドコ?」


「村の入り口からちょっと出た森の入り口。静かで星も観えるし、ベンチもあってちょうどいいだろ」


「そうだな」


それから俺達は静かに夜空の星を観上げていた。


どれくらい経っただろうか。

静寂を破るようにリーサは口を開いた。


「あの村、あたしの故郷に似てんだよね」


夜空を見上げたまま、少し哀しそうな声で彼女はそう言った。


「ここよりももっと東にあって何にもないような村だったんだけど、大家族でさ、兄妹が5人居て毎日騒がしいったらありゃしない。

長女だったからホント弟達の世話すんのが大変だったよ」

そう言いながらリーサは夜空を観あげたままだった。


「弟達は今何してんだ。」


俺がそう訊くと、しばらくの沈黙の後「皆、死んだよ」

小さな声でリーサはそう言った。


「父さんも母さんも、ルイス兄さんにマルコ、アスターシャにシフォン。シフォンなんてまだ産まれたばっかりだったのにさ‥‥」


それから憎しみのこもった声でこう言った。


「あたしの村は魔王によって滅んだ…いや、あたしだけじゃない、アルクもエルフの村を滅ぼされてる。

たぶんアイツに滅ぼされてる村はそうとうあるだろうね。

それに親族を殺された人達だって数え切れない」


ごくりとツバを飲む。

今更だが魔王はそれほどまでに恐ろしい男だったのだ。


「あたし今でも夢に出てくるんだ。

おつかいから帰ってきたら村が燃え、魔獣の群れが人を襲い、悲鳴が飛び交う。

家にはバラバラになった家族がいて、いつもそこで目が覚めるんだ。


この10年間ずっとアイツを殺すことだけを考えて生きてきた。

そして、やっと皆の無念を晴らすことが出来た。


あたし、コーイチとアルクとマオに会えて本当に良かった」


そう言って夜空を見上げたままの彼女の表情は分からなかったが、俺の頬に一滴の雨が落ちた。



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