04
生き残っているのは魔王軍ナンバーツーの奴。ヴィガントスって名前。魔王さまの次に強い奴。
この一週間、魔王の身体に慣れるためと戦闘訓練を兼ねてヴィガントスには何度も模擬戦をつき合ってもらった。
他の魔族と比べてもヴィガントスはずば抜けて強いんだよね。
魔王さまとタイマンしてそれなりの形になるのはコイツくらい。
それでも魔王さまには一歩およばないんだけどね。
おかげで魔王の身体での戦い方も大方把握できたし、コイツにはちょっと感謝してる。
それに、話してみると意外と気の良い奴なんだわ。
見た目はチョー怖いんだけどね。
性格はひとことで言うと「バトルバカ」で、強い相手と戦うことしか頭にない。
そもそも、魔王さまがその座についたばかりの頃、ノリノリで粛清しまくりで、周りの魔族がドン引き絶対服従モードの中、ヴィガントスが恐れ知らずで魔王さまにケンカ売ってきた――それが二人の出会いだからね。
魔王さまに「オレを倒して魔王になりたいのか?」って聞かれて、「興味ない。強い奴と戦いたいだけだ」って答えるような奴だからね。
そんなわけで性格破綻者の魔王さまもヴィガントスだけは気に入ったみたいで、きっちりボコボコにした後で、「おい、ラーメン食いに行くぞ」とか言って、今のポジションに置いたんだよね。ヤンキー漫画かよって話。
俺もそういう分かりやすい奴は嫌いじゃないし、色々話したりもしたからそれなりにヴィガントスには愛着があるんだよね……。
というか、他の奴らは俺に萎縮しまくりで会話が成立しないからね。
こっちに来てからまともにコミュニケーションとれたのヴィガントスだけだし。
信頼ってほどじゃないけど、それなりに信じている相手だ。
強さは折り紙つきだし、相手が強ければ強いほど燃えるタイプの奴だから、あの勇者相手でもそこそこ善戦するんじゃないか? ひょっとしたら、勇者を倒しちゃうんじゃないか?
って「宝くじが当たるかな?」くらいの期待はしてだけど、やっぱり、五分も持たなかったね。
最後の赤い点、消えちゃったよ……。
「オレが倒してくる。魔王様はのんびりコーヒーでも飲んで待ってろよ。ハハハハハ」とか言ってたのに。
勇者の強さを知っても全然ビビってなくて、むしろ嬉しそうにしてたのに。
俺以外で一番強い奴だったのに。
魔王さまの80パーセントの威力の攻撃をしのげる唯一の存在だったのに。
怖い顔しているくせに、笑うとちょっとカワイかったのに。
魔王さまと違って、部下に優しくて面倒見がいい奴だったのに。
来月には娘が生まれるって喜んでたのに。
俺と同じで魔族では少数派のたけ○この里派だったのに。
魔界にある美味しいラーメン屋を教えてくれたのに。
コイツとなら友だちになれるんじゃないか、って思ってたのに。
バイバイ、ヴィガントス。
ちょっと切ないな…………。
つーか、次は俺の番じゃん!
まだ心構えとかゼンゼンこれっぽっちも出来てねえよ。
デビュー戦が対勇者とかマヂで勘弁。
逃げちゃおっかなー?
って今さら逃げれないんだけどね。
すでに勇者に転移阻害の魔法かけられちゃってるからね。
あー、ヤバいオーラ放ってるのがどんどん近づいて来るよ……。
今、俺は魔王城の最奥部にある魔王の居室の玉座に座ってるのね。
そんで、勇者が来るのをここで待ってるのね。
他に選択肢ないからね。することもないからね。
この部屋は百メートル四方のだだっ広い部屋で、入り口の扉もムダにバカでかいけど、城門と違って只の普通の扉なんだよね。ノーセキュリティーなの。
魔族で逆らうやついないし、ここまで来れる敵には半端なセキュリティーなんか無意味だしね。
だから、勇者が軽く剣を振っただけで、そんな扉は跡形もなく消えちゃった。
そんなわけで、勇者と魔王の感動のごたいめーん。
それで勇者は「ちょっとコンビニまで堅あげポ○ト・は○みつバター味買ってくる」みたいな軽い足取りでこっちに向かって来たよ。
俺なんか入り口でヤンキーがたむろしてるコンビニに入る時くらい内心ガクブルなのに……。
実際に、この眼で本人を見て改めて思ったんだけどさー、
「あいつワシより強くねー?」
心の片隅では、「なんだかんだ言いつつも実は魔王の方が強いんじゃない?」と希望的観測を抱いていたんだけど、そんなあまちゃんな考え木っ端ミジンコ。
無理ッス。
「死ぬがよい」なみの無理ゲー感ッス。
やべーじゃん。ピチューンじゃん。
これって確実に、
『こうして魔王は勇者によって倒され、世界に平和が取り戻されました――』
ルートじゃん。
うーん、詰んだな……。
この状況に至ってすら、未だノープラン。
一応、戦いの練習はしてきたけど、こんなん絶対無理。
ムリムリムリムリかたつむり。
勇者は一歩ずつ距離を縮め、俺の正面十メートルほどの場所で立ち止まった。
ゴクリ。威圧され思わず息を呑む俺。
身構える俺に対し、悠然としている勇者。
二人、対峙したまま、しばし時が流れる――。
これってあれか?
先に動いた方が死ぬ、とかそういうやつか?
俺がビビって動けずにいると、勇者は前触れもなく動いた。
その瞬間、目にも留まらぬ必殺の一撃で俺の命はいとも容易く刈り取られ――。




