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「おーおーおーおー、おおーおーお、おーおおーおおー、おーおーおーおー」


 ヒスイちゃんが歌いながら、魔王の下半身を斬りつける。

 太ももが切り裂かれ、青い血が飛散する。

 深い傷に魔王が片膝をつく。それでもヒスイちゃんを超える長身だ。


「「おーおーおーおー、おおーおーお、おーおおーおおー、おーおーおーおー」」


 魔王と感覚を共有している俺も、あまりの痛みに膝をつきそうになる――しかし、俺はひとりじゃない。俺の隣にはリリアスノートがいる。俺と同じ痛みに顔をしかめつつも、懸命に叫び続けている戦友がいるんだ。

 こんなところで俺が弱音を吐いてられるか。

 拳をぐっと握りしめ、俺はリリアスノートに負けないよう大声を張り上げた。


「おーおーおーおー、おおーおーお、おーおおーおおー、おーおーおーおー」


 俺たちのレスポンスが届いたのだろう。ヒスイちゃんの動きがよくなっていく。

 無駄な動きが排除され、洗練されていく――その動きはまさに芸術だ。

 ヒスイちゃんは片膝ついた魔王の足とは反対の足に思いっきり剣を突き立て、薙ぎ払う。

 堪らず魔王は両膝をついた。

 ヒスイちゃんの透き通る歌声がどこまでも、どこまでも響き渡っていく――。


「「おーおーおーおー、おおーおーお、おーおおーおおー、おーおーおーおー」」


 今度はリリアスノートが倒れそうになる。

 オレと同様、リリアスノートも魔王の痛みを共有してるのだ。

 だが、俺はリリアスノートの身体をしっかりと支え、励ますように一段と大きな声を上げる。

 思いが通じたようで、リリアスノートも負けじと声を張り上げる。


「おーおーおーおー、おおーおーお、おーおおーおおー、おーおーおーおー」


 魔王が両膝をついたことによって、ジャンプせずとも魔王の上体を攻撃できるようになった。

 しかし、その痛みのせいか、怒り狂った魔王が闇雲に残った3本の腕をムチャクチャに振り回す。

 ヒスイちゃんは魔王の攻撃を華麗なステップでかわし、舞うような連撃を続けざまに放つ。

 ひとつ。ふたつ。みっつ。

 魔王に接近し、大きく振るわれた剣撃。

 その一瞬後、3本の腕は全て地に落ちた。


「「おーおーおーおー、おおーおーお、おーおおーおおー、おーおーおーおー」」


 今までとは比べものにならない激痛が俺とリリアスノートを襲う。

 だけど、平気だ。耐えられる。

 俺たちはひとりじゃないんだ。

 俺たちは――ひとつなんだ。


 頑張れ、ヒスイちゃん。

 俺は思いを込めて、喉が張り裂けんばかりに叫びをあげる。


 コール・アンド・レスポンスもクライマックスを迎える。

 次が最後の一回だ。

 魔王も弱り切っている。

 トドメの一撃で、しっかりと封印しちゃってくれ。

 頼んだ。ヒスイちゃんなら、絶対にできるからッ!!!


「おーおーおーおー、おおーおーお、おーおおーおおー、おーおーおーおー」


 コール・アンド・レスポンスが繰り返される中、会場ホールの空気がだんだんとひとつになっていく。


 モッシュしていた奴ら。

 走り回っていた奴ら。

 突っ立ていた奴ら。

 歌っていた奴ら。

 数万人のオーディエンスたち。


 その全員が立ち止まり、拳を振り上げ、隣の見知らぬ奴と肩を組み、腹の底から声を上げる。

 全員がひとつになって『菊野ヒスイ』が完成する――。


 ヒスイちゃん高く掲げた剣が、よりいっそう強く緑色に輝きを放つ。

 両膝を地につき、すべての腕を失い、抵抗する術を失った魔王が大きな咆哮をあげる。

 だが、それは――断末魔の叫びとなった。

 ヒスイちゃんが魔王の心臓の位置に剣を突き刺す。

 剣がまとっていた緑色の闘気オーラが魔王の全身を包み込む。


 全身がバラバラになりそうな、かつて味わったことがない苦痛が襲いかかってきた。

 俺もリリアスノートも歯を食いしばり、必死になって激痛に耐える。

 そして、全身全霊、すげてを絞り出すように全力のシャウトを吐き出したッ!


「「おーおーおーおー、おおーおーお、おーおおーおおー、おーおーおーおー」」


 最後のレスポンスを歌い終えた瞬間、白い光が俺たちを包み込んだ――。

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