第二話 見える人、見えない人 あやかし関連係就任
「だから! なんで俺なんですか」
上司である柳瀬の机にバンッと書類を置いて、澤田が朝から叫んだ。
「九月のあやかし係も北野がやるはずですよね。先月一つもあやかし係の仕事をしなかったからって」
「まあな」
「それがなんで俺に話がくるんですか。まさかまた忙しいからとか言うんじゃないですよね」
「いや。昨日北野に柊家へ行ってもらったんだが、澤田が担当なら引き受けると言われてしまったらしくてな」
「柊さんが?」
彼がそんなことを言うなんて意外だ。
「そういうわけだから、行ってくれるか澤田」
「まあ、別にいいですけど」
ちょうど、先日に黄昏駅前で起こった傷害事件の書類をまとめ終わったところだ。酒に酔った者同士の喧嘩だったので、お互いにあまり記憶が残っておらず、他者からの目撃証言などを集めるのに少々苦労した。
「ついでにお前をあやかし関連係にしておいたから」
「は? ちょ、なんで勝手に」
「柊家の人間とうまく付き合えるやつがいないから月替わりで交代していたんだがな。いやあ、さすがは澤田だ」
「いや俺、別に何かした覚えないんですけど」
だが警察嫌いだと思っていたのが、思いのほか文句を言わずに捜査に協力してくれたので、それが気に入られたということなのだろうか。
不愛想な柊の考えていることはいまいちよくわからない。
「頼んだぞ。あやかし関連係の仕事をうまくこなしてくれたら良い評価つけてやるから」
「はあ」
評価にあまり興味のない澤田には響かなかったが、断ったところで、じゃあやらなくていいということにはならないんだろうな、と思った。
二話スタートです。
よろしくお願いします。




