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第四話 十一年前の事件  事故か事件か

 妖の家族を町から離れた森の中で放ったあと、途中のコンビニに寄った。

 九月も終わりに近づいて、夜になると長袖一枚では肌寒いくらいに気温が下がるようになった。それでもまだホットを飲む気にはならず、澤田はアイスコーヒーを二本買って車に戻ると、一本を助手席の柊に渡した。

「はいよ。お疲れさん」

「ああ。ありがとう」

 しかしあやかし関連の件を解決したあとにいつも思うことだが、書類をまとめるのが困る。いや、事実をありのままに書けばいいのだが、上司の柳瀬に必ず「これは本当なんだな」と確認されるのだ。その後、署長に呼び出されて、また「本当なんだな」と聞かれた上で説明を求められることもある。

 父は、どうしていたんだろうか。同じように疑われたり、何度も説明を求められたりしていたんだろうか。

 などとつい父のことを考えてしまうのは、十一年前の事故のことが頭から離れないからだ。

「なあ。何かあったのか」

「ん?」

 唐突に、柊がたずねてくる。

「なんかいつもと様子が違う気がするんだが」

「そうかな」

「考え事か」

「あー……」

 十一年前の一件は、柊の父親も当事者のようなものだ。柊自身もそのときのことは覚えているだろうし、確証もないことを言って無駄に不安をあおることもない。

「悪い悪い、大したことじゃねえんだ。仕事とも関係ないことだから」

 事件にしろ事故にしろ、調べてはっきりさせなければ。

 こんなに気になり続けていては、そのうち何も手につかなくなってしまいそうだ。


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