第一話 刑事と町守 呼び出しは突然に
突然呼び出されると、ろくなことがない。
「柊家に、ですか」
たずね返した澤田圭介に、上司の柳瀬が頷く。
「そうだ。知っているだろう」
「知ってますけど、なんで俺が? 俺、強行強盗犯係なんですけど」
「そんなことは知っている」
黄昏市警察署の刑事課には、特殊な係が一つある。
あやかし関連係。
どう考えても人間の仕業とは思えないような不可思議な事件を担当する、ということなのだが。
「お前も知っている通り、あやかし関連係は月替わりの持ち回り制だ」
「そうですね。でも八月の担当は俺じゃないですよね。えーっと、誰だっけ」
「北野だ。だがあいつは今、もう一方の刑事生活安全係の仕事が忙しいらしくてな。で、北野がお前ならちょうど事件の報告を終えたところで手が空いているんじゃないかと」
どうやら諸悪の根源は同僚の北野のようだ。
確かに、あやかし関連係は刑事課全ての刑事が月替わりで担当していて、担当している間は本来自分が所属している係とのかけ持ちとなる。
「両方の仕事が被ったら、あやかし関連係の方を優先するってことになってましたよね」
そうでなければ、担当者が一人しかいない妖関連係の仕事が回らなくなってしまう。
「まあそうなんだがな。先日補導した少年がやっと話を聞いてくれるようになったから、他のやつには任せたくないそうなんだよ」
本当かよ、と澤田はつい心の中で思ったが、本人がここにいないので今それを確かめるすべはない。
「で、どうなんだ。手は空いているのか」
「まあ、忙しくはないですけど」
「じゃあ悪いがこの事件だけ変わってやってくれ。これ、柊家に渡す捜査依頼書だ。頼んだぞ澤田」
「はあ」
柳瀬に差し出されて受け取った茶封筒には、柊誠殿、と書かれていた。
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