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a  作者: ちひしん
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さまざまな出会い、つながり

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 オーシャンの香取コーチはずっとサッカーをしてきた上で熱い人だ。自分の息子が在籍しているオーシャン四年生チームを少しでも強くしたいと願っている。

 その足がかりとして大東SCと親交を深めている。今では、カップ戦を企画したり、大会を開催するほどだ。

 大会についての話し合いや打ち上げの飲み会、またカップ戦にかかる費用はその大半を香取コーチが支払っていた。大手通信会社の部長なだけあって金に糸目は付けない。

 大祭運営やカップ戦の準備は全てオーシャンのママさんたちにやらせていたのでますます香取コーチとママさんたちとの亀裂が深まっているようにみえた。

 ママさんたちには偉そうな香取コーチも僕らにはとても低姿勢だった。僕は香取コーチより七歳も年下なのにもかかわらず、僕の意見を尊重してくれ、僕の主張が通らないことはなかった。事前に何かが決まることはなく、必ず僕のところに相談がきた。

 「いつも練習試合じゃつまらないので、カップ戦でもやりませんか」

 「いいですね。どれくらいの規模で企画しますか」

 「河川敷の一番奥のコートを一日取れれば一面で三コート作れますから大東さんとウチを入れて九チームは参加できるぐらいいけると思います」

 「すばらしいですね」

 「カップとかメダルは私の方で準備はします。その試合とは別に、リフティング大会とか、そういうのをやりたいんですが何かいい案はありませんか」

 「そうですね。リフティングはありきたりなので、他のこともやりたいですね。そうだ、キックスピードコンテストなんてどうですか」

 「スピードコンテストですか。いいですね」

 「スピードガンを使って全員のスピードを計る。休憩時間中にできるから、時間をかけなくて済みますし」

 「わかりました。スピードコンテストで行きましょう。スピードガンはどうしますか」

 「大丈夫です。塾の生徒で野球をやっている子がいて、その子が持っているそうなので借りてきますよ」

 「助かります。ありがとうございます。声をかけるチームはどこがいいですか」

 「お任せします。香取コーチの顔の広さに期待してます」

 香取コーチは、一般人とは比較にならないほどの人脈があった。そのおかげで普通なら練習試合なんかしてもらえないようなチームとも交流することができた。

 なかでも強烈に印象に残るチームが二チームある。

 一つはリトルビッグSCだ。リトルは藤沢FCより数倍強いクラブチームだ。一人一人の技術がしっかりしていて、こちらが手薄になっている弱点を見極めた上でパスを出す。市内では上位に入れるようになったちひろチームをもっても全く勝てる気がしない。

 リトルの特長は強いだけではない。それよりも僕を魅了したのは、子どもたちのしつけのすばらしさだ。

 専用バスで会場入りすると、誰に指示されるでもなくビックシートを敷き、その上にわずかなズレもなく自分たちのサッカーバッグを整頓する。そして、ただ一人の引率者である若いコーチの前に整列する。

 頼る大人が周囲にいないがゆえに、成長著しいのだ。大東SCのように「ママが何でもやってあげまちゅからねー」という超過保護な少年団チームでは、いつまでたってもリトルには追いつけない。

 リトルがさらにすごいのは、練習試合における試合当番をリトルの子どもたちが行うところだ。その判定が下手な大人よりもよっぽどしっかりしたものだったからさらに驚いた。

 休み時間には、コーチとたわむれていて、みひろたちと全く変わらない。それなのに、サッカーは県一、二を争う強さで、しつけは間違いなく県内一。みひろチームの目標とするのに、これ以上ふさわしいチームはないだろう。こんなチームと親しくなれただけで、みひろたちに好影響を与えられると自然に思えた。

 もう一つのチームは川浜Fジュニアユースだ。このチームは、言わずと知れたJリーグの下部組織で、将来の川浜Fを担う子どもたちで溢れているチーム。そこらへんの小さな町の少年団なんかと練習試合をするほど暇ではないチームなのだが、香取コーチと同級生でチームメイトだった元Jリーガーが川浜Fのスカウト担当をしているという縁で、川浜Fとの練習試合を組んでもらえたのだ。

 広大なFタウンに到着し、いくつもある一般駐車場ではなく、クラブハウス前の関係者専用駐車場に降り立った時の何とも言えない優越感は自分の小ささの裏返しに思えて苦笑いした。

 試合はFジュニアが練習で使用しているとてもきれいな人工芝のグランドで行われた。二試合とも負けてしまったが、一点差だったこともあり決して大きな力の差があるようには感じなかった。また僕の予想に反し下部組織の子どもたちはとてもおとなしく、ラフプレーも全くしてこなかった。その子たちを率いている若いコーチも「わざわざおいでいただいてありがとうございます」ととても丁重にあいさつしていただいて恐縮してしまうほどだった。

 Jリーグ下部組織と互角にできたということもさることながら、Fジュニアほどの強豪チームでも決して偉そうに振舞うこともなく謙虚な姿勢をとるかっこよさを学べたことは、みひろチームの子どもたちの今後の成長にプラスになるに違いなかった。

 オーシャンの香取コーチから受ける恩恵はこれにとどまらず、みひろチームのグランド事情をも一変させた。

 公共施設のグランドを使用するには市に申請してカードを作る必要がある。

 僕は公園組メンバーで以前に申請していたため、すでに一枚カードを所持している。一方、山下コーチもみひろチームをメンバーとして一枚作ったので、みひろチーム内に二枚あることになる。

 しかし、香取コーチはオーシャンのメンバーをはじめ、さまざまな人脈を使ってカードを十枚以上所持していた。それだけ持っているということは当然グランド抽選会で当選する確率は高くなるわけで、結果としてたくさんのグランドを確保できる。その香取コーチがさらに欲を出す。

 「今よりももっとたくさんグランドを取れるようにしませんか」

 「香取コーチの力だけで十分じゃないですか」

 「私は出社してもずっとパソコンで予約サイトを見てますからね。でも、お互いのカード番号と暗証番号を教えあって予約状況をみられるようにしておいた方が、同じグランドで時間をつなげて取れる可能性が高くなりますよね。そうすれば練習試合だけでなく、終日大会が企画できるようになるじゃないですか」

 これに同意した僕と山下コーチは香取コーチと情報を交換し合った。こうしてお互いの予約状況をいつでも確認できるようになった。香取コーチからの話が続く。

 「それと、成島さん。八月に川島Fスカウトの久門が練習会をやってくれることになりました。オーシャンはもちろん参加しますが、大東さんはどうしますか。この練習会は夏休み中の金曜日にやる予定ですが」

 「そうですね、僕の仕事の日程は臨機応変にできますので、僕が子どもたちを引率できますから大東も参加でお願いします。」

 「わかりました。ではあと一、二チーム、陸奥小あたりを呼んで、練習会終了後にウチと大東さんで練習試合でもやりましょう。それから練習会当日は、友人でJリーグ公式カメラマンをやっている奴も呼びます。」

 香取コーチの脳裏には案が次々と浮かんでくるのだ。僕も山下コーチも何か協力しないと悪いなとは思いつつ、おんぶにだっこの状態なので、香取ワールドが着実に形成されていくことになるのだった。


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