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言葉  作者: 愛月夢
3/10

どのくらい、こうしてボーっとしていたのだろうか。

気づけば辺りは真っ暗になっていた。

「まずい、鍵!!」

急いで部室から出て駅へと向かう。

もうさすがにこの時間には他の部員もいなかった。

「なにしてんだろ・・・」

一人で虚しく呟きながら駅までの道のりは、まだ少し肌寒かった。

「まだカーディガン着てればよかったな」

もうこの時間だし、お母さんに遅くなると連絡するために携帯を取り出そうとした時

いつもなら入っている定期券がない。

「え、まって。ない。なんで??ないないない」

ついてなさすぎる今日を憎んだ。

「ねえ、これ」

「あっ」

「落ちてたよ」

「ありがとうございます!!!」

「いいえ」

それだけの会話をすれば、すぐに行ってしまったその人。

同じ高校の制服を着ていた。

スラっと背が高くて少し焼けた肌に整った顔立ち。

どこかで見たことある顔だった。

あの部室から眺める校庭の賑やかな声の一人であることは、きっと間違いない。

そして、多分サッカー部。いや、サッカー部だ。

リュックに付いているキーホルダー。

わたしも好きな、歌手のものだった。

思わず声をかけてしまいそうになったけど、たかが拾ってもらっただけの

関係で馴れ馴れしいと思われても嫌だった。

グッと堪えて、その人の後ろを歩いていった。


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