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どのくらい、こうしてボーっとしていたのだろうか。
気づけば辺りは真っ暗になっていた。
「まずい、鍵!!」
急いで部室から出て駅へと向かう。
もうさすがにこの時間には他の部員もいなかった。
「なにしてんだろ・・・」
一人で虚しく呟きながら駅までの道のりは、まだ少し肌寒かった。
「まだカーディガン着てればよかったな」
もうこの時間だし、お母さんに遅くなると連絡するために携帯を取り出そうとした時
いつもなら入っている定期券がない。
「え、まって。ない。なんで??ないないない」
ついてなさすぎる今日を憎んだ。
「ねえ、これ」
「あっ」
「落ちてたよ」
「ありがとうございます!!!」
「いいえ」
それだけの会話をすれば、すぐに行ってしまったその人。
同じ高校の制服を着ていた。
スラっと背が高くて少し焼けた肌に整った顔立ち。
どこかで見たことある顔だった。
あの部室から眺める校庭の賑やかな声の一人であることは、きっと間違いない。
そして、多分サッカー部。いや、サッカー部だ。
リュックに付いているキーホルダー。
わたしも好きな、歌手のものだった。
思わず声をかけてしまいそうになったけど、たかが拾ってもらっただけの
関係で馴れ馴れしいと思われても嫌だった。
グッと堪えて、その人の後ろを歩いていった。






