1
晴れて高校生になりました、花瀬心美です。
空と花と風と空気と・・・
自然が大好きで、それをずっとおさめたくて写真部に入部しました。
校庭から鳴り響くキラキラした声の一員にはなれなかった。
高校デビューするのもよかったかもしれない。
でも、わたしには到底無理だった。
入学して1か月。友達と呼べる人は一人もまだできていない。
中学からの友達とは同じ高校には行かずに、あえて一人の高校を選んだ。
その方が楽だと思ったから。
そんなことを考えながらボーっと外を眺めていれば
「みーみちゃん、何してんの?」
「うわっ、樹先輩」
「うわってなんだよ、失礼な笑」
「あ、すいません・・・」
いきなり声をかけてきたこの人。
一つ上の、東条樹先輩。
「俺の事、ちゃんと覚えてたんだ」
「もちろんですよ。一番最初に話しかけてきてくれたじゃないですか。」
「うわ、めっちゃ覚えてんじゃん」
「逆によく話しかけてくれますね」
「うん、可愛い子には話しかけたくなるのは普通じゃない?」
「!?!?」
「顔赤いよ~??なになに、可愛いんだけど」
「からかわないでください!!!」
「ごめんって笑」
先輩は高身長でかっこいい。一部ではファンクラブが作られているくらい。
やっぱり、イケメンって余裕がある。怖すぎる。
「あ、ごめん。みみちゃん、俺バンド戻んなきゃ」
「はい、頑張ってください」
軽音部にも所属してる先輩はいつもこんな感じで、いきなり現れてはわたしのうぶな心を
かき乱してはすぐに立ち去る。
「風みたい・・・」
先輩の後姿を見届けながらそう呟いた。