第五話 聖剣の勇者は最強!? ~異世界で目指せハーレムライフ~
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目を覚ますと、天井がかなり近くにあった。そうだ、俺は結局ガブリの家に泊めてもらったのだ。ということは……
「はあ……」
左側の、俺の布団から少し離れたところに敷いてある布団には、やはり一人の少女が寝ていた。同じ部屋で誰かと二人きりという状況でよく眠れたと自分で思う。もしかしたら、思っている以上に疲れがたまっているのだろうか。
辺りからは物音が聞こえてこない。早朝だからみんな眠っているようだ。万が一にも起こさないようにゆっくりと起き上がって部屋から出ようとすると、
「もう出発の時間?」
と、後ろから少女の声が聞こえてきた。
「……起きてたのか、キクル」
「眠っていなかった、が正しい」
これで、俺の「早朝にこっそり抜け出す大作戦」は失敗してしまった。昨日の様子から考えると、俺がなんと言おうとキクルはついて来るにちがいない。
「俺は泉までの道がわかるから、案内はいらないぞ」
「森には強い力を持った獣がいる。あなた一人では泉までたどり着けない」
一応抵抗はしたが、やはりキクルはついてくるつもりらしい。だが、後数時間の辛抱だと考えると気が楽になった。
「そうか。じゃあもう少ししたら出発するから」
「わかった」
キクルの返事を聞いて、俺は『収納』していた胸当てと手袋を身に着けた。
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あらすじ
「俺は死んだのか……」
高校でのある出来事以来家に引きこもっていた男、大垣善光は、新作のゲームを買いに行った帰りに、トラックに轢かれそうになっていた少女をかばって死んでしまった。
しかし、目が覚めると真っ白な空間にいて、そこにいた美しい女神に異世界、「カーケル大陸」に行くように頼まれる。
「勇者様、あなたのお力がどうしても必要なのです」
え!? 俺は百年に一度しか生まれない、「聖剣の適合者」!?
女神から授かったチートを用いて、善光は魔王を倒すことができるのか?
そして女の子といちゃいちゃすることはできるのか?
「異世界といったら、やっぱりハーレムでしょ!!」
元ニートの異世界無双劇、ここに開幕!!
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森の中で、俺達は歩きながらこんな会話をしていた。
「なあ、歩きづらいから離れてくれよ……」
「そ、そうよ! 二人とも、さっきからヨシミツにべたべたし過ぎ! いい加減私と代わりなさいよ!」
「嫌です! レットはヨシミツ様の右腕ですから、常にこうしてないといけないんです!」
「どうして離れる必要があるのじゃ? わらわのような美女と腕を組んで歩けるのだから幸せじゃろう。なあ、ヨシミツ?」
「い、いやあ……」
「ちょっとヨシミツ! 何デレデレしてるのよ!」
森に入ってからずっとこの調子だ。レットとマーズが俺の腕から離れず、それをサーシャが咎めるというやり取りを何回も繰り返している。
マーズの言った通り二人は、いやサーシャも含めて全員が美少女であることに変わりはない。そんな二人に密着されて男として嬉しくないはずがないんだけど、あまり言い争いはしないでほしいなあ。
「なあマーズ、気付いてるか?」
「わらわを誰だと思っておるのじゃ。人間とエルフがこちらに歩いてきておるな」
「レットだってとっくに気付いてましたよ!」
「わ、私だって、気づいてたけどあえて言わなかったのよ!」
俺は『探知』の魔法で、誰かがこちらに近づいてくるのがわかった。マーズもレットも気付いていたようだけど、多分サーシャは気付いてなかったんだろうなあ。
「まあ、サーシャの言うことももっともじゃな。エルフはともかく、人間の方からはごく少ない魔力しか感じぬ。わらわ一人でも片手で殺せるじゃろう」
物騒なことを言うマーズだが、最強クラスの吸血鬼である「神祖」の彼女なら間違いなく可能だろう。
「あれ、ちょっと待てよ?」
だが俺は、そんなマーズの一言に違和感を感じた。
「ヨシミツ、どうしたの?」
「どうしてそんなに弱い人間がエルフと一緒にいるんだ?」
そんな俺の言葉に、三人はハッとしたような顔になった。
「た、確かに変ね……」
「そうです。エルフはプライドが高い種族ですから、自分より弱い者となれあうなんてありえません!」
「もしかすると……」
俺の違和感にレットとサーシャが賛同してくれる中、マーズの言葉に俺達は衝撃を受けずにはいられなかった。
「その男が、エルフを奴隷として連れているのかもしれぬ」
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「…………」
「…………」
無言。徹底的な無言。出発してからお互いにまったく口を開かない。たまにキクルが俺の様子をちらちらと窺うが、俺からは話すことなどないので無視だ。
「お?」
「! 何か問題? 私に任せて欲しい」
俺が声を出すと、キクルはこの機を逃さんといわんばかりに食いついてきた。
「いや、少し先に人がいてな。でも、あそこは通らないから別に大丈夫だよな」
俺は道中ずっと『大地の瞳』の能力を使っていた。そしてついさっき、東に女三人と男一人がいるのが見えたのだ。泉に行くにはここから西に向かえばいいので、彼らとはち合わせることはないだろう。
……と、思っていたのだが。
「おい、ちょっと待てよ」
「ええ……」
その一団はわざわざ俺達の進路に先回りしてきたのだ。
しかも俺の前に、道をふさぐように立っているし、女の一人は完全に臨戦態勢である。
前門の謎の連中、後門のキクル。この森に来てからろくなことが起きていないと思いながら、前の四人組が俺を早く解放してくれることを祈った。
のじゃロリって書くの心底めんどくさいですね




