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はじまり②

4 


 目を覚ますと、そこはさっきまでいたあの白い空間ではなかった。あたり一面に背の低い草が生えている。上空では太陽が輝いているが、暑いということはない。季節は春くらいだろうか。

神の言葉が本当なら、ここはカーケル大陸という日本とは別の、それどころか地球とも別の場所だということになる。

ふと足元に目をやると、そこには一枚の紙が落ちていた。何やら文字が書かれていたので、とりあえず拾って読むことにする。


 『やあ、神だよ。この手紙を読んでいるということは、今頃君はカーケル大陸に無事に着いているということだね。よかったよかった。さっき君は死んだなんて言ったけど、この世界では君はちゃんと生きている。魔王を倒すのが最優先の目標だけど、ぜひこの世界での生活を満喫してくれ。日本ではたった十七年で終わってしまった人生だからね』


 ああ、やっぱり俺は死んだのか。とはいってもまったく嘆くような気持が湧いてこない。死んだときの記憶がないのと、俺が今生きているせいだろう。

 しかし死んだとなると当然もう日本には帰れないのか。友人や部活の後輩たちは元気でやっているだろうか。どうか車にだけは気をつけて生きてほしい。

 ……物思いにふけるのはこの手紙を読み終えてからにしよう。


 『話は変わるけど、君のその服装はカーケル大陸の一般的な服装だ。制服では目立ちすぎるからね。それと同じ服をあと三組あげるから、これを読み終えたら周りを探してみてね。ついでに手袋と胸当てもプレゼントしよう。安物だからすぐに破れると思うけど。

 神である私にここまでしてもらうなんて君は幸せだね。でも私が手伝ってあげられるのはここまでだ。大丈夫、君には私が与えた力がある。きっと魔王も倒せると私は信じているよ。ちなみに神器は魔法で『収納』されているからちゃんと取り出してくれ。健闘を祈る。


 追伸 カーケル大陸では、名字があるのはふつう王族か貴族だけだから、誰かに名乗る時は気をつけてね』


 名字の話はしっかりと心にとどめておくとしよう。

 書いてある通りに辺りを探すと、少し離れたところに俺が今着ているものと同じ服、そして皮の手袋と胸当てがあった。安物と書いてあったが、どちらも俺が見る限りではかなりしっかりしたものに思える。だが、これを一体どう持ち歩けばいいのだろうか。手袋と胸当てはとりあえず身に着けたが、服はどうにもならない。どこかの町でかばんを買うしかないのだろうか。

 いや、まてよ?

 確か俺は『収納』とかいう魔法が使えるはずだ。名前から察するに、物をしまっておける、例えるなら四次元○ケットのような魔法に違いない。そうでなくては困る。早速魔法を使おうと思ったが、肝心の魔法の使い方がわからない。これでは服もしまえず、神器も取り出せない。神が『沈黙』とかいう魔法を使ったときは何をしていただろうか。

 ……あいつ、何もしてなかったな。

 ということはあれか、頭の中でイメージするだけでいいのか? 本当にそれで魔法が使えるのか? まあいい、とりあえずやってみよう。

 

 試行錯誤の末、『収納』の魔法のことはよくわかった。あるものを初めてしまうときは、そのものに触って、『収納』と声に出せばいいようだ。しまってある物を取り出す時と、そのものをしまうのが二回目以上の時は、声を出す必要がない。これで荷物の問題は解決した。取り出した『大空の盾』を持って、とりあえず歩いてみる。ちなみにこの盾は半球状で、飾りも模様もまったく付いていなかった。



 それにしても、ここは一体どこだろうか。今はここがカーケル大陸だということしかわかっていない。とりあえず現在地を知りたいし、ここから大きな町にも行きたい。

 だけど俺は地図もコンパスも持ってないしなあ……。

 そんなことを考えていると、後方から何かが走ってくる音が聞こえてきた。



 

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