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若干チートな英雄(?)は、無双と呼ぶには弱すぎる  作者: まとりーる
第五章 決戦は終点ではなくて
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第一話 決戦の地へ

今日は短い話をたくさん投稿します



 王都を目指す俺の足取りは軽い。何もない平野でここまで浮かれているのは初めてだが、ペースを上げ過ぎるわけにはいかなかった。


 「ご、ごめんなさい。ヤバネさん……」


 「いいよ。休憩にしようか」


 誰かと歩幅を合わせるというのは中々に難しい。その相手が、あまり運動をしたことがないユリアならなおさらだ。

 強引に押し切られて一緒に旅をすることになったが、やっぱりユリアのためには断った方がよかったのかもしれない。

 

 

 『連れて行ってくれないなら私、裸で夜の海に飛び込みます!!』



 とはいえやはりいたいけな、泳ぎ方も知らない少女に裸ダイビングさせるわけにはいかなかった。


 「自分から言ったのに、私、情けないです……」


 急ぐ理由もないから休憩をはさむのは問題ないのだが、純粋にユリアの体が心配だ。マーガレットもいるから万が一の事態は起こらないと思うが。


 「はあ……はあ……」


 ……でもまあ、どうせなら旅は楽な方がいいよな。





 はるか昔の話だ。

 この大陸は繁栄していた。魔物が出没するのは一部の地帯だけで、定期的にそこに兵を派遣すれば平和は保たれていた。不安要素といえば森の種族との戦争くらいだが、エルフとオークに数で、ゴブリンに質で勝る人間側は戦いを有利に進めていた。

 

 しかし、繁栄にも陰りが見え始める。

 まず、魔物の生息地帯に派遣した兵隊が敗走した。生き残った兵によると、強大な力を持った統率者がいたという。国はもう一度、前回の二倍の規模の兵士を派遣した。そして、それが壊滅させられるにはあまり時間がかからなかった。


 『我は魔王。魔物の王にして魔法を極めし者。ただ今からこの大陸を制圧する』


 その統率者、魔王は世界に向けて宣戦布告した。

 魔王は何体もの強大な魔物を作りだした。包囲網は破られ、統率された魔物が大陸全土で猛威を振るった。

 いくつもの町が、村が滅んだ。数えきれないほどの人間が死んだ。数か所の町が辛うじて抵抗するが、最早敗北は目の前にあった。


 絶望をもたらす魔王が突然現れたのなら、希望をもたらす者もまた、予兆なく現れる。


 大陸の南端の町を攻めていた魔王軍が全滅した。それも、一人の人間の手によって。

 

 その人間の名はカケル。のちに勇者と呼ばれ、世界を救う男だ。


 



 「わあ! すごい、すごいです! ヤバネさん、私今飛んでますよ!」


 「あんまりはしゃぐと落ちちゃうよ?」


 結局『大空の盾』にユリアを乗せることにした。自分の足で歩きたがると思っていたけど、喜んでくれたようでなによりだ。これなら王都まであと二日といったところだろうか。

 もう怖くはない。戦う覚悟はできている。何もない開けた平野を、俺たちはゆっくりと、着実に進んで行った。




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