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世界で一番きれいなあなた  作者: 緒田 環
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お迎えは突然やってくる!

超ド田舎で花屋をやっていたエンカティティにある日迎えの騎士がやってくる。

実はエンカティティは国王の隠し子だった!

そんなわけで幼馴染の銀髪の貴婦人美女風レース(男)とともに王宮へ。

女装癖のある幼馴染と平凡少女のハッピーエンドストーリー。

私、エンカティティ。

花も恥じらう16歳。


お母さんは去年亡くなった。

そしてお父さんはいない。


お母さんはずっとお花屋さんをやってたので、

わたしもそれを引き継いでお花屋さん。

でもまあ世間は世知辛く、お花屋さんだけでは食べていけない。

だいたいこういっちゃなんだけど、お花なんてこのご時世そんなに売れない。

そのため、いまは畑を耕している真っ最中だ。


ぽたりと頬を伝って汗が土に落ちる。

ちょっと今日は暑い。


首に下げたタオルで拭きながらかがんでいた腰を上げる。

そのまま伸びを大きくすればくはぁーなんていうとても人に聞かせられないような声。


ああ、私の青春はどこへいったのか。

とはいえ、それなりの畑とそれなりの家、そしてお店があるだけましなほうだ。

生前お母さんは私を育てながら儲からない花屋をやり、

女一人で私を育ててくれた。

このご時世のなかでは立派な教育も受けさせてもらった。

おかげで私は文字も読めるし計算もできる。

要するに一人で生きてけるってことだ。

このままお嫁に行けなくても一人でつつましく生きていける。

それは安心でもあるけど、ちょっぴり寂しかった。

まあ文句を言えるご身分でもないけど。


そんなことをつらつら考えていたら、いつの間にか向こうから人がやってきた。

奥から歩けば大人の足で5歩ってところなくらい私の畑はそんなに広くない。

その畑に入って私に向かってくるなら私に用がある人だろう。

でも、おかしなことに私に用があるような気配は全くなかった。


もう一度、汗をタオルで拭いながら目を見開く。


物語の挿絵で見たことのある、騎士のような恰好。

私の住んでいる町は田舎の中の田舎、王都からも離れた鄙びた町のため、

騎士なんて生まれてこの方見たこともない。

くわえてその男の人はさらさらと金の髪をたなびかせている。

美しい顔立ちが物語の騎士のようだ。


何もかも違和感しかない。


そんな騎士様のような人は私の前に来て、跪いた。

「エンカティティ様で、よろしいでしょうか?」


名乗ってもいない私の前に跪き私に様付けをする。

なんで私の名前を知ってるんだ。

私なんかより全然背が高いのに跪いているから必然的に私は目線を下げる。

太陽の光のような金髪の隙間からブルーの瞳がのぞいてびっくりする。


びっくりするくらいきれいな顔だ。

でも驚きすぎて声も出ない。


「エンカティティ様?」

「えーと人違いです。」

「失礼いたしました。こちらがエンカティティ様のお宅だと伺いまして。

申し訳ございませんがエンカティティ様をご存じですか、レディ。」


立ち上がった騎士様は申し訳なさそうな、洗練された動きで私に尋ねた。

やっぱり立てば今度は見上げるくらい高い。


「えーとどちらのエンカティティでしょうか?」

「レーグの街角で花屋を営んでおりますエンカティティ様です。」

「えーと、エンカティティ様?」

「そうです。」

「えーと、レーグの街角で花屋はやっています。名前もエンカティティです。

でもたぶんお探しの方とは違う気が・・。」


うまれてからこのかた、人に跪かれるようなご身分になったことなど

一度もない。ましてはこんな美男子。

なのに彼はまたすさまじい勢いで跪き、今度は手握られた。

今にも泣きそうな顔で。


「やはりエンカティティ様なのですね!エリーヌ様の娘の!!」


なぜだかこの人、私の母の名前も知ってるらしい。

ちょっと怖くなった私は握られた手を放そうとしたけど、

ひっぱってもびくともしない。

ついでに感動して涙でも流しそうな勢いだ。


怖い、かなり怖い。


助けを求めようと思った瞬間、声がかけられた。


「あら、間に合わなかった。」

「レース!!」


幼馴染のレースの声にほっとした私は首だけを後ろにやり、

姿を確認する。

でも言っていることがわからない。

間に合わなかったって?なにに?


私の表情を読んだのか、レースは肩を竦める。


「感動のご対面が、よ。」


あいかわらず、きれいな銀髪をさらりとゆらし、

レースお気に入りのひらひらした魚みたいなドレスを揺らす。

完璧な美女っぷり。


「どういうこと?説明してよ。」

「エンカティティ様私はあなた様を迎えに来たのです!」


私たちの会話に入るかのように、騎士様が叫ぶ。


この日この瞬間から私のつまらない日常が音を立てて崩れるのだった。




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