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桜
私は流れ作業のように、お客様のグラスにお酒を注いでいた。
何も考えられない、ただの操り人形だった。
パン屋の仕事は体力が必要で、病気だった為に体力もなくて、
始めの頃は毎日筋肉痛になった。湿布を貼っていたのを見て、
店長が苦笑いしていた
季節なんてどうでもよかったあの頃
目の前に広がる桜並木
なんて綺麗なんだ
今日は、パン屋が休みなので、
店のみんなで、花見をしている。
青空に揺れる桜
散り始めた花びらが風に舞う
『綺麗』
私の横には、微笑んだ沙耶がちょこんと座り
微笑んでいる。
ただそれだけで
心はぽかぽかと暖かく
手の甲には、瞳に溜まった涙が落ちた
強い風が吹き、目を閉じると
そこに、沙耶の姿は消えていた




