プロローグ
桜藍火月、初投稿です。どうぞ生暖かい気持ちで読んでいただければ幸いです。皆さんよろしくお願いします。
森を見渡せる崖の洞穴、僕はスコープを覗き込み敵と味方の動きを把握する。
あるいは、木々を渡り飛び移るクエスト対象のゴブリン達。
あるいは、空飛ぶ箒にまたがって木々を掻い潜り、ゴブリンを追う者。
あるいは、刀を持ちゴブリンと同じく木々を飛び移って追いかける者。
今でも味方のあらゆるアバターを見ると羨ましく思う。僕はそんな嫉妬を胸の奥に追いやり、改めて冷静に考える。
(あと3匹…あれ?ゴブリンは匹扱いでいいのかな?あ、今タクマルさんが一匹やったから二匹か…まぁ、いっか匹で…)
スコープのなかではゴブリンが侍に切り伏せられていた。首と胴体がさよならしている。正直ぐろい。
『えー、えー、こちらタクマル、一匹やったからあと頼んだー』
「うん、タクマルさん見てたよ」
話を終えたと同時にマークしてたもう一つのところから爆音と煙が立ち込める。そこだけ、木々などが灰になっている。なかなか過激だ。そして通信が入る。案の定パイナップル大好き!さんからだ。
『はい!はい!こちらパイン娘!こっちもやったよ!』
『お前はもうちょっと火力考えろ!火力変態!馬鹿か!!』
『うるさいなー、侍は今ごろ遅いんだよ!この、じ、だ、い、お、く、れ!』
『なぁんだ
ブツッ
たまらず通信機の機能を断った。狙撃に集中出来ない。僕は、残りの岩影に隠れているゴブリンをスコープ内に入れる。
(このジョブ、マーキング機能だけはいいんだよな…一度視界に入れればどこにいるか見なくても確認し直せるし…)
岩影から少しはみ出た頭部をよく狙ってスコープを絞る。照準をあわせて、トリガーを引き、リロードする。簡単だ。何回もイメージする。
……パンッ!……
僕はトリガーを引いた。そしてこの発砲音はクエストクリアの狼煙になり、機能を入れ直した通信機では二人の怒鳴り声がまだ続いていた……
★☆★☆★☆★☆★☆
ここが、これこそが、僕たちの僕たちによる僕たちのためだけにある分身達の世界、無限分身世界、つまりは3Dネットゲームである。