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ひとつの空にあるように  作者: 長野 雪
デビュタントと仮面の宴
46/57

05.すべては皆、その為に

 アンジェラの勉強の日々はあっと言う間に過ぎて行った。

 午前はアンジェラ、午後はジェル。最初は無茶に見えたスケジュールだったが、アンジェラは精力的にそれらをこなしていった。

 そして、仮面舞踏会を明後日に控えたこの日、ジェルへの講義の最終日として、野外でピクニックをすることになっていた。


「よし、この辺りにしよう」


 ヴィクトールが選んだのは、湖畔の小さな広場だった。

 社交界シーズンが始まると、ここはガーデンパーティに使われることもあるという。さすがにシーズン直前のこの時期には訪れる人もいないとのことだった。


「景色がいいですね」


 馬上から、キラキラと陽光を弾く湖面が見渡せる。ちなみに、馬に乗れないジェルは、またヴィクトールの馬に相乗りである。

 馬の乗り方を是非教えたいという話もあったのだが、それではレティシャに講義を聴かせるという本来の目的から外れてしまうため、丁寧に辞退した。

 ただ、シーズンが近くなり、レティシャがいろいろと忙しくなってきたため、今日のこの課外授業については、カークからも進められ、了承することとなった。……了承させられたという方が近いかもしれない。

 馬から降りると、ジェルは鞍に括り付けてあったバスケットを持ち上げた。もう片方の手でシートを持つと、一人、湖畔に近づく。

 ヴィクトールは馬の手綱を引いて、手近な木に向かって行った。


「先生、どのあたりに広げますか?」

「お前の好きな所でかまわん。……湖に落ちるなよ」

「えー? 落ちませんよ」


 うろうろとしたジェルだったが、草が短くなっている場所を見つけると、そこにシートを広げてみた。上から乗っても、そんなに座り心地は悪くない。


(この辺りなら、眺めも良いし、ちょうどいいかな)


 バスケットを真ん中にどん、と置くと、適当に小石を探し、四隅に重石として置いておく。


「手際がいいな」

「手際が悪いと怒るくせに、何言ってるんですか、先生」


 ヴィクトールは湖面に向かってシートに座る。ジェルもそれにならってバスケットを挟んで隣に座った。


「今日はアンチョビサンド、サーモンサンドにマッシュポテト、それとソーセージも詰めてもらいました。デザートはオレンジだそうです」

「誰かのリクエストか?」

「さぁ? 厨房のリィナに教えてもらっただけですから。リィナはですね、赤毛がチャーミングな―――」

「そこまでは聞いていない。ただ、ラインナップに恣意的なものを感じただけだ」

「そりゃそうですよ。リィナの趣味は人間観察ですから、好物を揃えたんですね」


 ジェルは、肩をすくめて見せた。


「なんだと? だが、好物などどうやって調べた?」

「食事に来た時や、こうやってお弁当を詰めてもらったことがあるでしょう? あの時の反応とか、色々と情報収集を頑張ってるって言ってましたよー」

「……」

「どうしたんですか?」

「それだけの情報収集能力、軍に欲しいな」


 至極真面目な答えに、ジェルは思わずぷっと吹き出した。


「そんなこと言ったら、女性はすべて諜報能力がありますよ。……あ、もちろん、詰めてもらったお茶はジンジャーティーです」


 これはボクが教えました、とジェルは、バスケットを開けた。



.。:*·˚+.。:*·˚+.。:*·˚+.



「先生、これって楽しいものなんですか?」


 とてもおいしかった昼食の後、ヴィクトールの提案で二人は釣りをしていた。糸や針を準備していたところから考えて、最初からその予定だったのだろう。

 ジェルは靴を脱ぎ、裾をまくった裸足の状態で、岸辺に足を浸し、ひたすらに魚がかかるのを待っていた。竿となる棒は手頃なのを拾って使っている。


「魚を捕るのは初めてじゃないと言っていなかったか?」


 ヴィクトールは火を起こし、釣った魚を焼いている。串刺しにされた魚は計三匹。そのうちジェルの釣ったのは一匹である。


「こうやって、竿を使うのは初めてですよ」


 貧民街にいた頃は、よく外の小川に罠を仕掛けて魚を捕った。子供ができる数少ない食料確保だが、夜遅く仕掛け、朝早く揚げないと、他の誰かに取られてしまうことがある。


(誰かに見られないように、こっそり行ったっけ)


 当時を思い出して、少し苦笑いを浮かべた。

 ちらりと後ろに目をやると、ヴィクトールが加減を見ながら小枝を火の中に放り込んでいるのが見えた。


(それにしても……)


 この湖畔のことを思う。

 昼ごはんを食べながら、こういった場所についての説明を聞いたが、正直なところ、ジェルの想像の範疇はんちゅうを超えていた。

 景観を損ねないように小屋等の建築物は建ててはいけない。

 シーズン前には持ち回りの当番の貴族が草を刈りこみ、整える。

 ガーデンパーティができるぐらいの広さを確保し、なおかつ、隅には今ヴィクトールが使っているたき火のスペースを作る。

 一貴族の道楽であるならともかく、王室・貴族が一体となってこの場を保っているというから驚きだ。


(そんなお金があるなら――)


 もっと他の使い道があるだろうに、と思うが、この二週間、イヤと言うほど貴族というものを叩きこまれたジェルは複雑な気持ちだった。


(体面とか、そんなに気をつけて、いったい何が残るんだろう……)

「ジェル」

「はい」


 反射的に返事をして、現実に引き戻された。


「何をしている。引いているぞ」

「はい、……えっ」


 あやうく持って行かれそうだった竿を慌てて握りなおす。

 ぐい、と引きずられそうになるのをこらえると、相手は右に左にあがき始めた。


「ちょっ、と、これは……」


 予想以上の重さに、ジェルの足が深く沈む。


「マズい、かもっ!」


 踏ん張れば踏ん張るほど沈み込む足に、ジェルが焦りを覚える。相手は大物だ。諦めた方がいいのかもしれない。


(でも、せめて、最後にもう一回……!)


 腰を落とし、竿を握る腕にぐっと力を込めた。


(水の上に上げればこっちのもの、かなっ!)


 渾身の力で相手を水の上に引き上げる!


「ジェル!」


 慌てたようなヴィクトールの声がした気がしたが、それに答える余裕はなかった。

 勢いそのままに竿を天高く持ち上げ、糸の先に大きな魚が食らいついているのを視認する。


(よっし、これなら……あれ?)


 半歩前に置いていた右足がずぶり、と沈み込んだ。

 そこから先は、もはや反射でしかなかった。

 失くしちゃいけない高価な竿は背中に放り出すように、魚をつけたまま、勢いにまかせて後ろへ。

 そしてジェルの体はそれと引き換えにするように、湖面に叩きつけられた。

 失敗したと思う間もなく、ジェルの体は沈む。

 一歩先は、ジェルの身長ぎりぎりぐらいの深さだった。足をつければ息ができない。泳ぎは苦手ではないが、貴族の服はやたらとひらひらして布の量が多く、水の中では邪魔なことこの上なかった。


(とりあえず、岸の方に……)


 戻らないと、と思ったところで、腰に太い腕が巻き付き、勢いよく引き上げられた。


「すみません、先生。ちょっと足を取られてしまいました」


 さりげなく頭に手をやり、かつらがズレていないことを確認するジェルは、ヴィクトールに礼を言った。

 たぶん、この後は説教が待っているに違いない。


「……先生?」


 いつもならすぐさま聞こえる怒号がない。ジェルは不審に感じて声をかけた。


「やはり、女だったか」


 その言葉に、ジェルは自分の血の気が引いていくのを感じた。

 濡れた服はジェルの肌に張り付き、その体のラインを露わにしていた。


「せ、んせ……」


 声が震えるのは寒さのせいだけではない。だが、そんな自分の声に、ジェルは逆に自身を取り戻した。


「公爵様には、内緒にしていただけませんか」


 ヴィクトールの襟を両手で掴み、まるで脅すように懇願する。

 それを感情の読めない顔で見下ろしていた彼が、ふっとため息をついた。


「タオルを馬まで取りに行く。それまで濡れた服を脱いでこれにくるまっていろ」


 ヴィクトールは草の上に脱ぎ捨てていた自身のマントを放って寄越すと、何事もなかったかのように、ジェルに背を向けた。

 一瞬、唖然としたジェルだったが、その歩みがいつにもまして遅いのを見てとると、慌てて服を脱いだ。


(気を遣って、くれた?)


 黙っていて欲しいという懇願には、まだ返事をもらっていないが、少なくとも、今すぐどうこうしようという気がないのは、見て取れた。


(そもそも、そういう人じゃないし)


 二週間近く、毎日顔を合わせていたのだ。性格ぐらいは把握している。

 ヴィクトールを信じると決めたアンジェラは、潔くブラウス、ズボン、靴下を脱ぐと、渡されたマントにくるまった。


「でも、……失敗しちゃった」


 小さくつぶやき、水のしたたる自分の服をぎゅっと絞る。

 本当に情けない失敗に、穴を掘って埋まりたいぐらいだった。少しの油断が命取りになると分かっていた筈なのに、慣れに任せてしまった。

 ジェルは肩を落とすように大きなため息をついた。



.。:*·˚+.。:*·˚+.。:*·˚+.



「……何も、聞かないんですか」


 ジェルがそう切り出したのは、二人分の濡れた服を手頃な枝にひっかけ、ヴィクトールが淹れたお茶を受け取った後のことだった。

 両手で包み込むように持ったカップは熱くて、とても口をつけられそうにない。

 ここまで必要最低限の会話しかしていなかった。

 服を乾かすために枝にかけた時、湯を沸かすために手頃な枝を拾ってくるように言われた時、そしてジェルの釣りあげた大物を二枚に下ろして半分ずつ分けた時だけだ。

 ヴィクトールは口元に手を当てて、数秒、考えるようなポーズを取った。そして、彼の向かい側、湖を背にして座るジェルに「こっちに来い」と自分の隣を指差した。

 断る選択肢もないジェルは、その意図を掴みかねながらも、指示に従う。


「いつ、あいつの手先が見ているかわからないからな」


 たき火を見つめながら呟いた言葉の「あいつ」がティオーテン公爵のことだと気づき、ジェルは小さく体を震わせた。


「経緯を教えろ。話はそれからだ」


 レティシャにも関わる話であるだけに、躊躇を見せたジェルだったが、観念してすべてを話すことに決めた。下手に嘘をつくより、信用を得ることの方が大事だ、と割り切って。

 レティシャがシーズンデビューに向け、男性の領分である政治の知識を得たがっていたこと。カークが女性の教師でなければダメだと条件をつけたこと。レティシャの知り合いである自分が橋渡し役を買って出たこと。

 それらを、見張りがいるかもしれないと思いながら、声を絞って説明した。


「……なるほど、話の辻褄は合う。隣の部屋の主はレティシャか」

「気づいていたんですか?」

「これでも軍人歴は長い。要人の警護任務で場数は踏んでいる」

「……『やはり』って言いましたよね。いつからボクのことを気づいていたんですか?」


 それまで、炎をずっと見つめていたヴィクトールがはじめて隣のジェルに目をやった。


「……庭で猫を助けただろう。飛び降りた時に風に押されて体のラインが見えた」

「~~~~~~~っ!」


 そんな前から、とジェルは頭を抱えた。何も知らずにのほほんと講義を受けていた自分が憎い。というか、恥ずかしい。


「姉も事情を知っているのか? いや、アンジェラという娘は本当にお前の姉か?」


 この人はどこまで見抜いているのだろう、とジェル=アンジェラはドキリとした。


「あいつの悪趣味はよく知っている。お前が女なら、アンジェラは男かもしれないとも思ったが、どうも判断がつかない」


 女の服は色々と布が多すぎて、とヴィクトールがぶつぶつ呟いていた。

 予想外の方向に行ってしまったヴィクトールの予想に、ジェルの胸にじわじわと笑いがこみあげてくる。


「ジェル?」


 とうとう肩を震わせてしまったジェルに、ヴィクトールが怪訝けげんそうに声をかける。


「す、すみません。その、本当に、ティオーテン公爵様のことを理解していらっしゃるんだな、って」


 何とか笑いをかみ殺し、すみません、と謝る。


(やっぱり、きちんと話しておかないと、だよね)


 すー、はー、と深呼吸をする。


「たくさんの嘘をついてしまって申し訳ありません。ボク……いえ、あたしがアンジェラです。ヴィクトール様」


 ずっと、午前中はアンジェラとして、午後はジェルとして生活していました、と頭を下げた。


「レティシャ様を通してティオーテン公爵様に恩を売っておけば、万が一、だんな様が政争に巻き込まれた時にご助力いただけると考え、このようなことを致しました。

 ――改めてお願いいたします。どうか、あたしが女であることを知ってしまったことを、ティオーテン公爵様に内緒にしていただけないでしょうか」


 ヴィクトールの顔を見つめ、すべてを言い切ったアンジェラは、じっと返事を待った。まっすぐに返される視線に、ぐっと拳を握りしめ、決して目を逸らさないように、どんな兆候も逃さないように見つめ続ける。


「中央から離れている身では、政争も何もないだろう」

「一人の失敗が一族すべてに跳ね返る、それが貴族の争いでしょう?」


 二人の視線はぶつかり続ける。何か間違ったことを言っていないか、そして剣呑にも見えるヴィクトールの表情に怯えながら、それでもアンジェラは目を逸らさない。


(目をつぶるな。考えろ。どうやったら味方にできる?)


 考えることをやめてしまえば死に至る。子供でも知っている貧民街の常識だ。


「ずいぶんと詳しいことだ。カークに聞いたか?」

「いいえ、経験から。……昨年の」

(この話を口にしても大丈夫? 軍の人だと言うし、だんな様と公爵様の友人なら、きっと……)

「昨年の、メリハ将軍の一件も記憶にありますから」


 その名前を口にしたとき、ぎろり、と睨まれたような気がして、アンジェラは小さく肩を震わせた。


「……そうだな。ウィルが一時期かくまっていたと言っていたな。お前が本当にアンジェラならば、目にしていてもおかしくない」

(あ、まだ信じてもらえてなかったんだ)

「あの、お疑いでしたら、だんな様、いえ、ウィルフレード様にご確認いただいても構いません。……あ、でも、今の話、全部はしないでください。その、ティオーテン公爵に恩を売っておきたい理由とか……」


 わたわたと言い連ねたそのセリフのどこにだろうか、ヴィクトールが驚きに目を瞠った。


「そこまでウィルに尽くす理由が? 単なる使用人だろう?」

「……だんな様は」


 脳裏に昼と夜で違う顔を見せる主人を思い浮かべる。


「だんな様は、劣悪な環境から、あたしを救ってくださいました。だから、一生かけてでも恩を返したいんです。……それだけじゃ、ダメですか」


 そのまっすぐな言葉に、ヴィクトールは眩しいものを見るように目を細め、そしてボソッと「戻せ」と呟くように吐き捨てた。


「はい?」

「いい加減に口調を戻せ、こっちの調子が狂う」



.。:*·˚+.。:*·˚+.。:*·˚+.



 とりあえず、今日のことを他言しないと約束をもらい、ジェルは普段通り、ヴィクトールとたわいのない話をした。内容は主に講義の復習だったが。


「……そういえば」


 たった今、食べ終わった魚の骨を火の中に放り込み、ヴィクトールが話を振った。


「一番最初のアレは、あいつの入れ知恵か?」


 ヴィクトールの言う「アレ」に思い当たるフシがなく、魚にかぶりついたままで、ジェルは小さく首を傾げた。


「ふぁいほ? んく、最初のアレって……」

「最初に会った時のお前の発言だ」


 言われて、男色家呼ばわりした時のことだと気づき、ジェルはちょっと顔をしかめて見せた。


(う~ん、本当のことを言うとまた怒られそうだけど、公爵様に同じことを聞かれたら、すぐ分かる話だし……)


 すぐバレる嘘はついても何の得にもならない。そう判断して、正直に白状することにする。


「前日に公爵様から『軍は男色家が多い』という話を聞かされて脅かされていたものですから。ボクも性別を偽っている以上、そういうリスクはできるだけ避けたかったワケですし。……で、ついでに色々といじわるをしてくる公爵様に意趣返しができたらいいなぁ、と」

「……」

「なんて、後から理由をつけようと思えば色々つけられるんですけどね。そういう理由は本当にあったんですけど、最終的には、何となく、最初に一回、強烈なインパクトを与えた方がいいかなぁ、って」


 照れ笑いを浮かべつつ、再び魚にかぶりついた。


「……天賦の才があるのかもな」

「?」

「第一印象というのは、重要なものだ。人との交渉においても、戦においても。特に戦は最初が肝心だ。それによって勝敗は大きく左右される。―――お前はメリハ元将軍を知っていたな」


 ヴィクトールはメリハの将軍時代の話を持ち出した。

 西のバーレイ地域の暴動鎮圧に出た時だ。将軍になる前、まだ小隊長だった頃のメリハは、敵の先駆けを一刀両断し、わざとその血を浴びた。数の上では劣勢だった軍が難なく鎮圧に成功できたのは、メリハ元将軍の悪鬼羅刹のごとき所業・形相によって、相手の気勢を削いだおかげという者もいる。


「紅の将軍という仇名すらついていた。……まぁ、そんな英雄も政争に巻き込まれてあんなことになってしまったが」


 話が逸れたな、とヴィクトールが苦笑した。その様子から、メリハ将軍への思慕が透けて見え、ジェルは小さく笑った。


「それだけ、最初のぶちかましが重要だということだ。それをお前は『何となく』でやってのけた。……いるんだ。たまに。お前のように、考えるより先に動けるヤツが」


 まるで野生のカンのように、と呟くヴィクトールに、これっぽっちも褒められている気のしないジェルは首を傾げた。


「褒められているのか、けなされているのか、判断に困るんですが……」

「特に褒めてもいない。事実を述べているだけだ」


 淡々と言い放ち、ヴィクトールはじっとジェルを見つめた。


「……なんでしょう?」

「恩返しと言ったが、お前がそこまでする価値があるのか?」

「言われてみると、恩返しだけではないのかもしれないですね。ウィルフレード様に何かあると、仕事を失うわけですし」

「他の使用人は?」

「いませんよ。元々、ウィルフレード様お一人しかいらっしゃいませんから、姉が一人で切り盛りしています」

「……何だと?」

「ですから、イベロトロッサの邸は姉一人です」

「……仕事内容は」

「全般です。えぇと、具体的に挙げると、水汲み、食事の用意、薪割り、馬の世話、邸内外の掃除、……そのぐらいですかね」


 ヴィクトールは渋面を浮かべ、大きなため息をついた。


「あの、……何か?」

「いや、なんでもない。……まぁ、お前の体幹がしっかりしている理由は分かった」

「体幹、ですか?」


 ヴィクトールは「先生」モードに戻り、剣での打ち合いにおける体幹――腹筋や背筋の重要性についての講義に入った。



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