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掌編小説集4 (151話~200話)

前例

作者: 蹴沢缶九郎

死んであの世にやってきた老婆に閻魔は言った。


「お前は生きていた間の行いが良かったので天国に行くがいい」


「ありがとうございます」


老婆は喜び天国への門をくぐって行った。続けてやってきた男に閻魔は、


「お前は悪事ばかり働いていたな。地獄だ」


と判決を下し、項垂れた男は待ち構えていた地獄の鬼に両脇を抱えられ連れられて行った。三人目の男には、


「お前は可もなく不可もなくといったところだな…。犬に生まれ変わるがいい」


と言い、現世に魂の状態で転生させた。


しかし、四番目に現れた者を見て、閻魔は困惑した。そこに、くらげの様な姿をした地球人とは似つかない宇宙人、グルトパ星人がいたからである。あの世に宇宙人がやってくる事など、今までに前例がない事だった。


未だ事態が把握出来ないでいるグルトパ星人が言った。


「乗っていた宇宙船が突然爆発し、気づいたらここにいた。一体ここはどこなのですか?」


「ここは亡くなった者がやってきて、生前の行いによって天国や地獄に…」


「テンゴク? ジゴクとは何ですか? あなたは誰なんですか? 何故このような事をしているのです?」


グルトパ星人の質問攻勢に閻魔はほとほと困り果て、星人の質問を一旦遮り、この状態を打開出来るかもしれないとふと思い浮かんだ質問を逆にしてみた。


「あなた方は亡くなった後の事をどう考えていますか?」


閻魔の問いに、グルトパ星人は当然と答えた。


「死んだ後の事なんて考えてどうなるのです。生きている間は生きている事を懸命に考えればいい。そういうものだと思いませんか?」


「は、はあ…。まあ…」


「ここにいても仕方ないので、そろそろ帰りますね。さよなら」


グルトパ星人はそう言うと、星人特有の能力で甦り、その場から消えた…。


今まで地球人しか裁いた事がない閻魔にとって、宇宙人の存在自体が衝撃であり、前例のなかった出来事がこれからは起こるかもしれないと思うと気は重く、それと同時に自分の存在意義が薄れていくのを感じた…。

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