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視点切り替え ルーカス

『その転校生、殺しましょうか。我々の計画の邪魔になるでしょうしねぇ。それに、ちょうど学長は遠征に行っていますから、排除するなら今です。潜入させている者を使っていいから、確実にしとめてくださいねぇ』


 そう言って、あのお方の魔法残像が消えた。

 ルークから暗殺者を預かった後、人気のない所に向かったワイは、既に暗殺者が死んでいることに気づく。拷問が出来なくなったので、本来、その後にする筈だった、あのお方に報告するのを繰り上げて行って、そして、今さっき終わったところやった。

 

 言われたとおりワイは、まず件の転校生を探す為に、校舎へと向かった。

 しっかしまぁ、あのお方が、ワイと同じ発想で助かったわ。正直、昨日の奴が転校生として来とったら、確実に邪魔になる。ワイの勘がはずれて、転校生が昨日とは違う人物やったとしても、どういう了見か、ワイのターゲットである王女様を助けたんや。どこかで、ワイの邪魔をしてくるはずや。

 どちらにしても、ワイ一人で殺すには荷が重かったから、あのお方が助けてくれる言うて助かったわ。


 そんな事を考えながら歩いていたワイは、校舎に入り、あのお方が言っていた潜入者を呼ぶ為に、同族しかわからない魔力波を発生させた。特殊な訓練を積んだ者にしかわからない魔力波や。

 ワイは、その魔力波が、校舎内全体に行き渡ったのを確認して、しばらく待った。

 すると、どこからともなく七人の全身黒ずくめの奴が、ワイの目の前に現れる。


「あのお方からの指令や。今日転校してきた奴殺すで。奴は今どこや?」


 簡潔にそう言うと、黒ずくめの中の一人が食堂だと教えてくれた。

 

「よっしゃ、んなら食堂に向かうで。あんさんらんは姿消して、付いてきてくれなはれ。ワイの合図で攻撃開始や」


 ワイは、人を殺すと決めて向かうこの瞬間がたまらなく好きや。そんで、人一人の人生を終わらした時、ワイは天にも昇る気持ちになれるんや。

 だから、昨日ワイの邪魔したあいつだけは許せへん。願わくば、転校生が昨日の奴でありますように。

 そう願いながら、ワイらは食堂に向かった。




 そうして食堂に付いたワイは、転校生を見て歓喜した。

 間違えるはずがあらへん。あいつや。昨日のあいつや! 

 しかも、昨日仕留め損なったエミリアの嬢ちゃんまでおるやんけ。これは、棚からぼたもちどころの騒ぎやあらへん! おお神よ! 昨日の不幸は、この瞬間の幸福のためやったんですね!

 ワイはステップしながら、お二人さんに近づいていった。

 

「お? エミリアの嬢ちゃんやん! 奇遇やのぉ! ん? マリア先輩もおるやん! こんちゃーす!」


 テンションで誤魔化したが、内心ひやひやもんやったで。

 なんで会長がおるねん! 歴代最強の盾がおると、ちぃとやっかいやのぉ。……ま、いくら会長と言っても七人の刺客を同時に止める事はできへんか。計画は続行するでぇ。

 ほんで、今日の一番の狙いにワイは話しかける。


「ん? んんん? もしかして、あんさんが噂の転校生なん? ……おっひょー! ワイはルーカス言うんや!」


 ちぃとテンション上がりすぎたわ。今からこいつの人生終わらす思うと興奮してあかんわ。

 深呼吸。深呼吸や。……ふぅ。


「クロード。よろしく」


 それだけ言うと、転校生のクロードはんは、黙々と目の前の料理を消化していく。

 つれへんのぉ。まぁ、まずは、日常会話でもして隙を作るでぇ。


「そういえば、高級学食にマリア先輩がおるなんて珍しいのぉ。いつも、ここは高い! 一般学食で十分だ! とか言ってるのに」


「なぁにぃ? 私では場違いとでもいいたいのぉ? そういうルーカスだって珍しいじゃない。ルークといつも一緒なのに、今日は一人だなんて」


「ルークは王女様のお守り中や。なんでも、王女様の命を狙った不届き者がおるいうてな。ほんで、何を隠そうここにおるクロードはんが、刺客から王女様を救った英雄言う話や。……そういえばクロード、あんさん、アイリスの嬢ちゃん助けたとき、どうやって助けたん? ルークが知りたがっとったで」


 ワイは、黙々と食べるクロードに話を振った。マリア会長と話しとったら、いつかボロが出そうで怖すぎるわ。


「ん? 秘密」


 素っ気ないのぉ! われはそんなに食うのが大変か! しかも、食べるのに夢中の癖に、全然隙があらへん。何なんやこいつは!


「秘密主義なんやなぁ。あ、それと、昨日エミリアの嬢ちゃん助けたのって本当なんか?」


 ほれほれほれ、さっさとワイに隙を見せんかい!


「うんっ、そうだよ。クロード君が私を助けてくれたんだよっ」


 何故かエミリアの嬢ちゃんが答えてくれた。違う! ワイはクロードはんに聞いとるんや!


「そ、それは本当なの? エミリアを助けたのはクロード君だったの!?」


 会長まで……。……ん? あれ? もしかして会長はクロードはんが昨日、エミリアの嬢ちゃん助けた事知らんのか? ……これは、少々まずいかもしれへんで。


「え、えぇまぁ。成り行きで」


「そんな……、アイリスだけじゃなく、エミリアも助けていたなんて。ありがとう、可愛い後輩達を守ってくれて。本当にありがとう」


 ……どうやら気づいとらんみたいや。しかも、何故かクロードはんが動揺して、ほんの少し隙が出来とる。……チャンスや。ここで攻撃を仕掛けて、ワイの言葉に疑問を抱かれる前に殺すで!

 

 ワイは、この食堂で隠れとる七人の同胞に合図を送った。こいつらを呼んだときと同じ、魔力波を発生させる。これは便利や。いくら会長でも、特殊な訓練を積んどらんと、これを察知するのは不可能や。


 そして、ワイの合図通り、同胞はクロードはんに魔力で作られた矢を放つ。これは、暗殺するのに最適の技や。刺さると消えて、証拠が残らへん優れものやで。


 七方向からの攻撃を対処するなんて芸当、ワイのオセを倒したからと言って、流石に無理やろ。フフフ。ワイの邪魔をした事を後悔しながら死にさらせや!


――だが、一向に死ぬ気配があらへん。それどころか、忙しなく腕が動きまくっとる。

 ま、まさか、こいつ七方向からの攻撃を対処した言うんか!? 


「……? どうしたの?」


 エミリアの嬢ちゃんは、クロードはんが何をしたのかわからへんのやろうな。それが普通なんや。普通、魔力で作られた矢は視覚しにくいはずやのに……。

 ま、まだ気づかれたと決まったわけやあらへん。ワイは、攻撃続行するように、魔力波を発生させる。

 と、同時に、クロードはんが喋りだした。


「いや、虫けらがね。結構、よっ、いるらしくて、ほっ、やになっちゃうよ、はっ」


 む、虫けら!? ま、まさか、奴には同胞がどこにおるんかわかるんか!? ……あり得ない話じゃあらへんか。ルークですら見破れんかった暗殺者をこいつは倒しとるんや。

 だが、だがしかし、まだこいつは人数までは把握できてないっぽい。まだこちらに勝機があるっちゅうことや。……喋りながらいとも容易く攻撃を凌いどるけどな。


「あぁあ! ここは虫けらを入れるような、ずさんな管理で運営する学食なのかよ!」


 うおぉ! なんや!? 何でこのタイミングで大声だしたんや!? 

 ……だ、ダメや。意図が全然わからん。ここは話しかけて様子を見るで。


「む、虫けら? こ、こないな場所に、お、おるわけないやろ?」


「俺も最初はよぉ! いるわけないと思ったさ。そんで、いるわけないと思って、安心して入ったらこれだよ。あぁあ! 確認できるだけでも七匹もでかい虫がおるわぁああああああああああああ! ここはどうなっとるんじゃおらぁあああああああああああ!」


 人数ばれとるぅうううう! ……も、もしかして、さっきいきなり叫んだのは、同胞の人数を知るためやったんか!? 聞いたことがあるぞ。魔力を帯びた音を発生させて、敵の位置を知る方法があると。まさか、クロードはんはそれの使い手!? じゃ、じゃあさっきの叫びで同胞の位置がばれてしもうたんか!? とんだ化け物に喧嘩うってもうたで……。

 し、しかも、ワイを睨みながら、叫んどったな……。まさかワイが仕掛けた事もばれとるんか!?


「おぅ? 姉ちゃんよぉ。ここは、虫けらと一緒に食事する所なのかぁああああ!? 五万ジルも払わせといて、こんなずさんな管理なのか!? あぁあああああああ!?」


 ワイを威嚇するように、ワイの方を向いて尚も叫ぶクロードはん。

 こえぇぇぇ……。もしかしたら、もう全部ばれとって、降参するなら今のうちやぞって言ってくれとるんかもしれへん。


「いるだろ!? ほらっ! ほらぁああああ! ……クソッ! すばしっこい虫けら共めッ!」


 ひ、ひぃいいい! さっさと降参しろっちゅうことなんやな!? そうなんやな!?

 わいは、慌てて魔力波を送って、攻撃を中止するよう伝えた。

 

 瞬間、クロードはんの腕がブレる。

 バタタタタタタタッ! と、人の倒れる音が、同胞が隠れていた場所から聞こえてきた。


 ま、まさか一瞬で七人も倒したんか!? こんな化け物、ワイではどうしようもでけへんわ! 

 ワイは、すぐに逃げた。逃げる事に集中したおかげか、すんなりと逃げれた。

 

 とんだ化け物が転校してきもうたで……。

 ワイは、嘆きながら、その化け物から逃げる為に走り続けた。


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