そうだ!樽を買おう!
~第九十七章~そうだ!樽を買おう!
「御馳走様でした。」
食事を終えて、俺達はお店の前へと出て来た。
すると、先程の大樽の前に数人のドワーフ達が集まって何やら話をしている。
声が大きいので此方まで話の内容が聞こえて来る。
「だから!樽ばっかり有ってもしょうがないんだから!バラして薪にでもすれば良いんだよ!」
「バカを言うな!再利用すれば又、この樽で酒を造れるだろうが!」
「いや、しかし、空樽を麓まで又、運ぶと言うのも…。」
ああでは無い、こうでは無いと、あれこれ言っているのが聞こえる。
視線を移すとペロとエリナが何やらお喋りしている。
「坑道内は、埃っぽかったですね。」
「尻尾の毛に細かな土が入っちゃいました…。」
「宿に戻ったら、お湯を貰って綺麗にしてあげますね。」
「ありがとうございます、エリナさん。」
そこで、閃いた!
「後は…。アレを置くスペースか…。なあ、マルル?」
俺は、マルルに事の次第を説明して、可能かどうか問うてみる。
「えっと…。あっ!?はい!有ります!今は使って無い小屋が有りますぅ。」
良し!後はドワーフにお願いして、あの樽を手に入れるだけだ!
俺は、樽の前に集まっているドワーフ達に近づいて行く。
「あの~。すみません。」
「んっ!?な、何だ?誰だ?アンタ?」
突然声を掛けられて戸惑うドワーフ達に交渉を持ちかけてみる事にする。
「すみません、突然。皆さんのお話が聞こえて来てしまって…。何やら、樽の処分方法に意見が割れている様子でしたので…。」
「だから?…アンタに何の関係が有るんだよ?」
「ええ、良ければ、この樽…。俺に譲って貰えませんか?」
「…空樽だぞ?」
「ええ、空樽が欲しいんです。」
俺の突飛な提案にドワーフ達は顔を見合わせて困惑している。
「オ、オイ!?どうする?」
「いやっ。どうするって?」
いまいちハッキリと答えが出ない。
「勿論、きちんとお金もお支払しますよ?」
「金?金か…、そうだな…、それなら。いや、しかし…。」
「お礼にお酒も付けましょう!」
「「「良し!売った!!」」」
…ぶっちゃけ、お酒だけで良かった気がする。
まあ、提案してしまった事はしょうがない。
ドワーフ達に樽代で銀貨2枚と以前に山賊アジトで回収した酒の入った樽を一樽進呈する。
「悪いな、兄ちゃん!手間が省けて助かるよ。で、この大樽、如何するんだ?運ぶなら力貸すぞ!それとも加工するか?」
ドワーフ達から先程までの攻撃的な感じが無くなって、友好的に感じる…。
「(酒樽一つで此処まで、フレンドリーに成る物なのか?)」
人見知りと言う事で、最初は確かにぎこちないが、一皮剥ければ気の良いオッサン達ではないか。
酒の力は偉大と言う事だな。
「加工…出来ますかね?高さをもっと低くしたいんですよね。」
トンッと樽を指差して、「これ位」と高さを提示する。
「そこで、切れば良いのか?それ位なら俺が切ってやろう。何、すぐに終わる。」
そう言ってドワーフの一人が何処に持って居たのかノコギリを取り出すと、樽を切断してくれた。
樽は、まるで、大きなタライの様な形に成った。
「こんなの何に使うんだ?」
ドワーフの一人が疑問の声を上げる。
「これは、浴槽に使おうと思っているんですよ。」
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