表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/153

入山許可

~第九十二章~入山許可


「あ、あれ?トルバ爺さん!?何で、此処に居るんだ!?」


驚く俺達にトルバ爺さんはしてやったりと言った笑顔を浮かべて答える。


「儂がこのタタラトの町長、トルバじゃ。」


はっ!?今、何と!?

町長?

いやっ!?待て!ちょっと待て。


「トルバ爺さん、アンタ、鍛冶師じゃ無かったか?」


確か、チョイと名の知れた鍛冶師と言っていた筈だが?


「うむ。儂は町長兼鍛冶師なんじゃ。」


「何それ…。良く兼業なんて出来るな!?」


「まあのぅ。」


のほほんと答えてくれる…。


「それに町長だって事も黙ってたな?」


「それについては謝ろう。お前さんらがタタラトに来ると言っておったのでな。チョイと驚かしてやろうかと思ってな。見事に驚いてくれたのぅ。」


ホッホッホッと軽快に笑う。

御茶目な爺さんだ、まったく。

そう言えば、町の入り口の衛兵ドワーフの態度…、おかしいと思ったんだよ。


コンッコンッコンッ!


などと思っていると、扉がノックされる。


「お茶をお持ちしましたぁ。」


「入りなさい。」


お茶を持って来てくれたのは先程の少女だ。


「立ち話も何だ。掛けておくれ。」


席を勧められ、応接室に備え付けられたソファに腰を落ち着ける。


「どうぞぉ。お口に合えば良いんですけどぉ?」


そう言って俺達の前にお茶を差し出してくれる。

湯呑を手に取り、口を付ける。

少しトロリとした舌触り…、優しい味だ…。


「…旨い。」


「お口に合って良かったですぅ。」


少女は、出したお茶を褒められてホッとしている。


「これはこの山で採れる、ババルの花から作れるお茶じゃよ。」


トルバ爺さんも一口お茶を啜りながら教えてくれた。


「へぇ。これがババルの花茶ですか…。」


エリナが興味深そうにお茶を味わっていた。

エリナはこういう、ハーブティー的なお茶が好きそうだな…。

何て事を考えていると、トルバ爺さんが「オッホン!」と咳をして注意を自分に向けさせる。


「所で入山許可の件じゃが…。」


ああっ、そうだった…、許可を求めて町長宅に来たんだった。


「入山の許可はもちろん、問題無い。お前さん等には世話に成ったからのぅ。本来は数日は、許可を下ろすのに掛かるが、明日には許可が下りる様に手配しておこう。」


「おおっ!?助かります。」


許可が下りるまで数日掛かる筈だったのか!?

危うく数日を無駄にする所だったな。

危ない、危ない。


「それとじゃな…。マルル、お願いしておいた物を持って来ておくれ。」


マルルと呼ばれた少女は、「分りましたぁ。」と言って応接室を出て行くと程無くして戻って来た。

何やらガチャガチャと色々担いで来たぞ?


「おじ…、町長。持ってきましたぁ。」


トルバ爺さんはマルルから荷物を受け取ると、俺達の前に並べて見せる。

人数分のピッケルや、スコップ、ランタン…つまり、採掘用品だ。


「これらをお前さん等にやろうと思ってな…。まあ、命を助けて貰った恩を返すには全然足りんが、まあ、細やかな儂の気持ちだ。受け取ってくれ。」


いやぁ、結構助かる装備品だ。

正直、採掘用の道具の事なんかまるで考えて無かった。

精々、ピッケル程度しか思い浮かばなかったからな…。


「いえ、助かります。有難く頂戴しますね。」


「ああっ!そうじゃ、これも渡しておこう。」


そう言って応接室の机から巻物を取り出す。

あれは…、スクロールだ!


「これは、スクロールと言ってな。魔法を覚える事が出来る逸品じゃ!中にはウィンドカッターが入っておる。生憎と、一人分しかないが、悪く思わんでくれ。」


「ウィンドカッターか…。如何する?ペロかエリナが、覚えてみるか?」


「いえ、一枚しか無いなら、ペロはいいので、御主人様かエリナさんが使って下さい。」


ペロは遠慮したようだ。

エリナ目線を向けると…。


「私も、ユウシさんが覚えた方が良い様な気がします。」


結局、俺が覚える事に成った。


「なら、さっさと覚えてしまうかな。」


スクロールを掌の上に置くと、魔力を掌に集中させる…。

すると、封蝋が溶け落ち、文字が輝くと、スクロールは燃え尽きてしまう。

これで、習得出来た筈だ。

後で確認してみよう。


「後のぅ…。鉱山に行く時は案内役として、儂の孫のマルルを付けるから、使うと良い。」


「えっ!?良いんですか?こんなに小さい子供に案内を頼んで!?」


それに異を唱えたのは、当の本人であるマルルだ。


「あ、あの?ボクは、これでも19歳何ですけどぉ?」


背が低いので若干、上目使いで恨めしそうに此方に避難を向ける。


「マ、マジで?」


「ほ、本当ですぅ!」


プンスカ!と擬音が聞こえる感じに頬を膨らませているマルルを少し可愛いと思う。

しかし、全然19歳に見えない…。


「まあ、歳は問題無かろう?それにマルルも普段から鉱山には入っておるから問題は無いじゃろう。」


なるほど、この街で暮しているならば、鉱山など自分の庭の様な物なのだろう。


「分りました。鉱山へと行く時は案内をお願いしますね。」


「うん。ボク頑張るよぉ。」


一通りトルバ、マルルと話し終えて、そろそろ帰る事にした。

トルバは仕事に取り掛からねばならないそうで、見送りには、玄関までマルルが付いて来てくれる。

お邪魔しました。という所でマルルに頭を下げられる。


「ユウシ様、ペロ様、エリナ様。町…、お爺ちゃんに聞きました。お爺ちゃんの命を助けてくれたって、皆が助けてくれなかったら、お爺ちゃん多分そのまま、死んでたと思う…。本当に有難う。お礼にボクが出来る事なんて殆ど何にも無いけど、鉱山の案内は任せて下さいっ!」


「うん。鉱山の案内。しっかり頼むよ。」


「はいっ!」


良い返事だ。(…やはりとても19歳には見えない。)

マルルと別れて、俺達は宿屋に戻った。

その日は仲良く、狭いベッドで、川の字に成って眠りに就いた。


UPしました。

感想&評価をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ