旅は道ずれ
~第九十章~旅は道ずれ
今俺達は、ドワーフの爺さんに頭を下げられている。
「本当に、助かった!ハンマーまで取り戻してくれるとは、思ってもみなかったぞ!?」
「いえいえ、どうぞ頭を上げて下さい。俺達が勝手にした事ですから。あっ!そうそう。馬車に乗っていたと思われる品物も回収してますよ。」
「おおっ!?重ね重ね、礼を言うよ。本当に有難う。」
「で、荷物…如何しましょうか?俺達はこれからタタラトへと向かう途中なんです、良かったら、一緒に乗って行きますか?」
「うむ、すまないが、お願いするよ。ああっ!?自己紹介がまだじゃったな?儂の名前はトルバじゃ。」
「エリナ・ソラトです。」
「ペロ・シーバです。」
「大鳥 勇士です。タタラトまで、よろしく。トルバさん。」
こうして、タタラトまでの同行者が増えた。
馬車を走らせながら、道中トルバさんの話を色々と聞いた。
何でも、トルバさんはタタラトではチョイと名の知れた鍛冶師なのだそうだ。
腕の良い職人ならば、何か作ってくれないかな?
などと、思っていたら…。
「お礼と言う訳では無いが、お前さん等なら、格安で仕事を請け負うぞ!」
「本当ですか!?じゃあ、その時はお願いします。」
腕の良い鍛冶師と知り合えたのは嬉しい誤算だ。
暫く馬車を進ませると、程無くして、俺達はタタラト山へと到着した。
街道は山の上まで伸びており、どんどん登って行くと、山頂へと到着した。
「おおっ!?これは凄いな!」
山の山頂に在る火口湖をぐるりと取り囲む様に街が広がっている。
街の家々からは、煙がモクモクと立ち昇っているのが遠目に分る。
まるで、噴煙を山が上げている様だ。
「さあ、あと少しで街の入り口じゃ。行こうか。」
トルバ爺さんの指示に従って馬車を走らせると、街への入り口が見えて来た。
街の入り口には、背の低い衛兵が立って居る。
如何やらあの衛兵もドワーフの様だ。
「止まれー!そこで止まれ!」
衛兵ドワーフに街の入り口で止められる。
「検分だ!馬車の中を改めさせてもらうぞ!」
「ええ、構いませんよ。」
別段、見られて困る物は何も積んでは居ないしね。
むしろ、サイドバッグに荷物を入れているので、馬車には何も乗って無いんだよね。
「ふむ…。何も載せては居ないのか?タタラトへは何をしに?」
「鉱石を求めて来ました。」
「密輸目的では無いだろうな?少し詳しく話を…。」
やけに疑って来るなこの衛兵ドワーフ…。
そんなに密輸が多いのか?
「オイッ!」
トルバ爺さんが馬車の後ろから身を乗り出して衛兵ドワーフに声を掛ける。
「むっ!?こ、これは!?トルバ様!?気が付きませんで!」
「うむ。この人達ならば大丈夫じゃ!問題無いから、通しなさい。」
「はい!どうぞ!お通り下さい!」
衛兵ドワーフはサッと道を開けてくれた…。
遠慮なく、通して貰う。
一応、山賊を雑木林の中に放置している事を伝えておく。
「分かりました!回収しておきます!!」
山賊は、回収に行ってくれるそうだ。
お礼を言ってその場を後にする。
衛兵ドワーフの横を通り過ぎる時に見事な敬礼を披露された。
最初と態度に差が有り過ぎじゃね?
「なんか、衛兵ドワーフの人、トルバ様とか呼んでたけど?」
本人に確認を取る。
「いや、だから、儂、この街ではチョイと名の知れた鍛冶師だと、言ぅたではないか。」
チョイと?チョイとで、あの見事な敬礼をされるかな?
などと思っていたら、トルバ爺さんが馬車を停める様に言われる。
「此処で良いぞ。すまんな、命を助けて貰った上に、一緒に運んで貰って…。」
「いえいえ、それ位は、お安いご用ですよ。あっ、荷物も、出しますね。」
サイドバッグからトルバ爺さんの荷物を地面に取り出す。
「ここに置いておいて、良いんですか?」
「ああ、後は、家の若い者にでも運ばせるよ。」
「分りました。じゃあ、俺達はこれで…。」
「ああっ!そうじゃ、ユウシ君。君達はさっき、鉱石を求めてタタラトを訪れたと言ったね?当然、鉱山に潜るんだろう?」
「そうですね。そうなると思います。」
「ならば、後で、タタラト町長の家を訪ねると良い。入山の許可は町長が出しておるからのぉ。」
「分りました。今日中には、訪ねて見ます。」
「うむ。ハンマーと命を助けて貰った礼は、後ほど必ずしよう。」
そう言ってトルバ爺さんは歩いて行ってしまった。
俺達は、タタラトの馬屋にイナズマを預けると、冒険者ギルドの場所を聞く。
まずは運搬依頼の完了を冒険者ギルド:タタラト支部に報告に行く事にしよう!
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