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盗られたハンマー

~第八十九章~盗られたハンマー


「そんなに大事なハンマー何ですか?」


正直ハンマーなんて、又、買い直せば良いと思うのだが…。


「ああ…、希少な素材で作られている事も有るが…、亡くなった妻が、生前に贈ってくれた物でな…、あれが無ければ儂は…。」


話を聞いて可哀相に思えて来た。


「お爺さん。そのハンマーを盗られたのは何時頃だ?」


「…そうじゃな。1時間程前…かの?山賊達は馬車を打ち壊すと、雑木林の中へと消えて行ったわい…。」


一時間前位か…、その山賊を探してみようか?


「分りました。じゃあ、ちょっとその山賊を探してみますね。」


「ッ!?な、何ぃ!?止めておけ!見ず知らずのお前さん方が危険を冒す事も有るまいに!」


「まあ、大丈夫ですよ。無理するつもりは有りませんから。」


「お、おい…。」


ドワーフ爺さんは俺達の提案に戸惑っている様だ。

そんなドワーフ爺さんを余所に話を進める…。


「エリナは、その人の事を頼む。ペロは俺と一緒に山賊を探しに行くぞ。」


「はい。分りました。気を付けて下さいね。」


「ペロの鼻にお任せです。きっと見つけて見せます!」


エリナとドワーフ爺さんを馬車に残して、俺はペロと共に雑木林を突き進む。


「ペロ、匂いで追えるか?」


「はい!微かですが、あのドワーフのお爺さんの匂いが林の向うから匂って来ます!」


奪われた品物にはドワーフ爺さんの匂いが着いて居る筈なので、それを追っている様だ。


程無くして、山賊数名を発見出来た。

如何やらドワーフ爺さんから奪った品物を運んでいる最中の様だ。

思いの外、収穫が多かった様で足並みが遅かったのは、此方としては運が良い。


「早速、奪い返しますか?御主人様?」


声を潜めてペロが指示を俺に仰ぐ。


「いや、待て。アジトまで後を追ってみよう!」


「分りました。」


その後、山賊達の後を追うと、程なくして、雑木林の奥に粗末な小屋へと辿り着いた。

如何やら此処が、山賊達の住処の様だ。

山賊達は小屋へと辿り着くと見張りも立てずに全員が小屋へと入って行った。

小屋へと近づき中を窺うと、どうやら収穫の山分けをしている様だ。

山賊は全員で5名…。

一度、小屋から離れて、ペロと作戦を練る事にした。


……作戦が決まった。

作戦の内容は簡単だ。

ペロが小屋の外で注意を引き、出て来た山賊を俺が背後から気絶させるという、単純な作戦だ。

早速、小屋の扉の影で隠密を発動させて待機する。

ペロに作戦開始の合図を送ると、ガンガンッ!と盾を打ち鳴らし、大きな音を立てる!

音に気が付いた山賊達が何事かと、飛び出て来た!

山賊の目に飛び込むのは、犬耳の美少女が一人…。


「お、おい!何だ!?この犬人は…グッ!?」


ペロの姿に目を奪われている山賊に、後ろからスキル:気絶を発動させた手刀を順番に撃ち込んで、気絶させて行く。


「ホイ、ホイ、ホイっと!はい!制圧完了!」


簡単な仕事だったな!

離れた所に立って居たペロも俺の傍に戻って来ている。


「何だか、拍子抜けですね。」


「まあ、こんな物じゃないか?」


山賊の人数も少なかったからな…。

小屋の中に入ると、奪ったと思われる品物が散乱していた。

一緒に在った袋に適当に品物を詰めると、サイドバッグへと回収しておく。

更に、小屋の中からロープを見つけたので、山賊達を適当に捕縛して小屋の中へと転がして置く事にした。


「後は、ハンマーか…、あれ?何処だ?」


部屋の中に散乱していた品物の中にハンマーは見なかったぞ?

と、思ったら、捕縛した山賊の一人の腰にやけに立派なハンマーが装備されていた…。

山賊から、ハンマーを取り上げる。

銀色ピカピカのハンマーだ!

中々の逸品と見た!

他にそれらしいハンマーは見当たらないので、きっと、これがドワーフ爺さんのハンマーであろうから、キチンと回収しておこう。


「捕えた山賊は、如何しますか?御主人様?」


「連れて行くのも、面倒だしな…。このまま、放置して、タタラトの衛兵に回収させようか?」


ちゃんとロープで縛っているのでそう簡単には逃げられないだろう。

俺達は山賊を放置したまま、馬車へと戻る事にした。


「「ただいま!」」


「お帰りなさい。ユウシさん、ペロさん。」


「おおっ…、無事だったか!?…見た所、駄目だった様じゃな。」


手ぶらの俺達を見て、ドワーフ爺さんが肩を落とす。

ああっ…、サイドバッグに入れてるから、手ぶらに見えるよね。


「いえ、無事に回収出来ましたよ。」


「な、何っ!?本当か!?」


サイドバッグから銀色に輝くハンマーを取出して、ドワーフ爺さんに手渡す。


「おおおっ!間違い無い!儂の、儂のハンマーじゃ!」


ドワーフ爺さんがハンマーを抱き、飛び上がって喜んでいたのには、ちょっと笑いが零れたな!


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