ただいま、プロローグ
~第八章~ただいま、プロローグ
「何でこうなるんだ!?」
森の中を息も絶え絶えで全力疾走で走る。
10人近い男達が動き出す前に逃げ出せたのは幸運だった。
男達は皆揃って革製の鎧や動物の毛皮らしき物を身に着けており山賊の様で、手にはそれぞれに武器を携えていた。
顔に大きな傷のある大男が先頭を走り大声で何か叫んでいるが、よく聞こえない。
山賊(仮)一人が弓を構え矢を放つ。
ヒュ…と横を矢が掠め飛んで行き冷や汗が背中を伝うのが分かる。
「俺が何したってんだよ!」(宝箱開けちゃったけど…。殺す事ないだろ!)
後ろの男たちに文句を言いながら逃げる。
「しまったな!走りながらじゃ、アイテム画面を表示する事も出来ない!」
流石に走りながらでは、コントローラーの操作は出来そうにない。
せめて短剣くらいは持っておくべきだったか?悔やんでも遅い、後悔先立たずだ。
サイドバッグに手を突っ込んで今、取り出せる物は、
・フライパン
・懐中電灯
・水入りペットボトル
・乾パン(空き缶)
・アイテムBOX
使える物が何もない…。
「い、一応、フライパンを持っておこう。」
護身ぐらいには使えるだろう。
後ろの状況を確認する為後ろを振り向いた瞬間、矢が顔の位置に飛んで来るのが分った。
とっさにフライパンで防ぐと、カァァァンと良い音を鳴らして矢を弾いた。
「あっ、あぶねー!!」
取り出していて良かった、フライパン!さすがテフロン加工!(特に意味なし)
気を取り直して、とにかく逃げる。
森の中を5分ほど走っていると、急に前方の木陰から1人の男が斧を掲げて現れた。
どうやら先回りをされた様だ、後ろからはまだ男達が追い掛けて来る。
ここは突破しかあるまい!!
俺は速度を維持したまま斧を振り上げていた男の脇をすり抜ける!!
が、襟を掴まれてしまった。
思わず手に持っていたフライパンを男の顔側面に叩き付けてしまった。
先ほどの矢の時とは違い、甲高い金属音は響かなかったが、いい手ごたえが伝わって来るのが分る。
男は綺麗に気絶してしまった。
内心、謝りながら逃走を再開する。
森の中、木立を右に左に避けながら走る。
時には先回りされたが上手く切り抜ける事が出来た。
森の中の地理は向こうに利がある。
このままでは、いずれ前後を挟まれてしまうだろう。
逃げ道は無いかと見回すと、守りの薄い所があった。
今はこっちに逃げるしか無いだろう。
方向を変えダッシュする。草が生い茂り走りにくいが、それは向こうも同じだろう。
目の前の草むらを飛び越えた時だ、急に足元から地面が消えた。
「あ、あれ!?地面が無いぃぃぃぃぃ!?」
草むらを越えた向こう側は20メートルはある断崖絶壁だった。
下は河が流れているが落ちて無事では、いられないだろう。
守りが薄い訳である。誰も好き好んで崖から飛び降りる奴など、そう居ないだろう。
俺も好き好んで落ちた訳では無い!
落ちて行く最中、崖の上から覗き込む男達が見えた。
スローモーションの様にゆっくり水面が近づくのが見える。
もうダメだ!俺の人生ここで終了だ!!
水面に落ちると共に俺は意識を失った。
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