山越え
~第八十四章~山越え
モーラ山を上り始めてから、数回程、魔物に襲撃された。
襲ってきたのは、以前に討伐した事の有る、ワイルドボアや、初見と成る、上半身が女性の姿をした魔物ハーピー等だ。
それ程手強い相手では無かった。
ワイルドボアは、ペロのシールドスローで怯ませた瞬間にエリナがメイスで気絶させた所に俺が魔法弓で止めを…。ハーピーについては俺が直接、魔法弓で撃ち落とした。
ワイルドボアは以前に食した際、結構美味だったので、今夜のメインに据えても良いかも知れない。
流石にハーピーは食べる気には成らなかったので素材だけ取得しておいた。
それからもモーラ山を順調に進んで行くと、折り返しである山頂へと登り着いた。
「おおっ…。良い景色だ。」
「風が気持ちいいですね。」
「レミアムの街があんなに小さく成って見えますよ!?」
完全に観光気分で進んでいる気がしてならない…。
まあ、急ぐ必要も無いし、良いけどね。
再び馬車を走らせてモーラ山を下っていると、突然ペロに停止を求められた。
「ペロ?如何した?」
「御主人様!今、あそこの岩場が少し動いた様な気がします!」
ペロが指差す方を見ると、岩場が広がって居るだけだ。
「何も居ませんよ?」
エリナが首を傾げる。
確かに、一見すると何も無い様に見えるが…。
「ペロ、エリナ。戦闘準備をしておいて。」
俺の言葉に、緊張が走る!
「きっとペロが感じた違和感の正体はコイツだろう…なっ!」
岩場に向って矢を射掛けると、突如岩の塊が動き出す!
そう!ゴーレムだ!
動き出したゴーレムは4体!
しかし、その姿は俺の知るゴーレムでは無い。
鋼鉄製でも無く、岩石でも無い…。
何だか、ボロボロで、叩けば崩れそうだ…。
盗賊の鑑定眼で確認すると『魔物・クレイゴーレム・銅貨5枚』と出た。
「ストーンゴーレムの下位魔物かな?」
「御主人様。切り込みましょうか?」
見た所、クレイゴーレム達の動きは緩慢だ。
ペロならば問題無いだろう。
「よし!行って来い!」
俺の言葉を待ってましたと、言わんばかりにペロがクレイゴーレムに走り出す!
ギャリィィィン!と、金属が擦れる音の後、クレイゴーレムの片腕が切り落とされる!
如何やら、剣で腕を叩き切った様だ…。
ペロはゴーレムの倒し方知ってるのかな?
一応、注意しておこう。
「ペロ!ゴーレムには核となる部分が有るから、其処を壊すか、取り外さないと、攻撃しても意味が無いぞ!」
俺が大声で叫ぶと、「は~いっ!」と間の伸びた返事が返って来た。
結構余裕そうだ。
しかし、ゴーレムは他にも3体居る!油断は禁物だ。
「じゃあ、エリナは俺と一緒に!ゴーレムの注意は俺が引くから、攻撃してみてくれ!」
「まかせて下さい!」
メイスを片手に、やる気を見せるエリナ…。
不意に、撲殺天使と言うフレーズが頭を過ぎるが…、余り深く考えないでおこう…。
俺がゴーレムのターゲットを取り、エリナが背後から殴る…。
結果から言って大成功だった。
剣や、弓矢の攻撃には強い反面、打撃には弱いみたいで、力の弱いエリナが殴り付けただけで、土塊の体はボロボロと崩れ落ちて行った。
ペロも、ゴーレムを退治して此方に戻って来た。
残りのクレイゴーレム1体と成った所で、少々試してみたい事が出来た。
「ペロ!エリナ!一旦下がって!魔法を試したい!」
そう、俺はまだ、魔法を戦闘で用いた事が無いのだ…。
アクアにヒート、戦闘向きの魔法では無いと言っても、これらは、れっきとした攻撃魔法!
魔物相手にどれ位通用するのか確かめておきたい!
と、言う訳で、ペロとエリナを後ろに下がらせた俺は早速、魔法を準備する。
まずはヒート…と思ったが、あの赤熱した手で掴まれれば如何なるか、大体想像出来るので良しとしよう。
気持ちを切り替えて、アクアを唱え、水球を出現させる。
「くらえっ!」
水球をクレイゴーレムへと投げ付ける!
水球はバシャとクレイゴーレムの頭から体全体を濡らす…。
土塊の体が水を吸ったのか、動きが悪くなる。
悪くなる所では無かった!
土塊の体は大量の水分を含んで、泥状と成り、クレイゴーレムはそのまま崩れ去ってしまった!
崩れたゴーレムからは核が無傷で取り出せた。
「なるほど、一見攻撃力の無さそうな水球でも、使い様か…。」
などと、考えていると、お知らせ画面が現れる。
『LVUP 17→18』
おっ!?LVが上がった。
後で確認しておこう。
素材を回収し、周囲の安全を確認してから馬車に乗り込むと、再びイナズマを走らせる。
その後は、魔物の襲撃等も少なくなり、程なくして、モーラ山を下山し終える事が出来た。
UPしました。




