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お説教

~第七十七章~お説教


挨拶回りも終わり、村の入り口に赴くと村中の人が見送りに出て来ていた。

皆、口々に助けてくれたお礼や、エリナに別れの言葉を贈ったりと様々だ。


「エリナ、そろそろ…。」


「あ、はい。…じゃあ皆さん!お元気で!」


俺は、三人を乗せた馬をユックリと出発させる。

村から少し離れた所で馬を加速させる。

流石に三人乗りはキツイかな?と思ったが、馬は難なく走っている。

馬の前方にはエリナが、次いで俺、後ろにペロが抱き付く感じで走っている。


「(両手に花…もとい、前後に花だな!!)」


などと考えながら、来た時同様に三時間程でレミアムの街へと帰還できた。


「わあ…。何時来ても大きな街ですね。」


エリナは、キョロキョロと辺りを物珍しそうに眺めている。


「あれ?エリナは、レミアムの街は滅多に来ないのか?」


「はい、余り、来る事は有りませんね。なにせ、馬を用いても本来、移動に4時間以上は掛かりますから。」


なるほど、確かに。

三時間程で駆け抜けるこの馬の速度が以上なのだ。

早すぎて魔物も襲って来れないからな…。


「じゃあ、まずは馬を返しに馬屋へと行こうか?」


「「はい。」」


冒険者ギルドのすぐ隣の馬屋へとやって来ると、店主が俺達に気が付き出迎えにやって来た。


「おや、旦那!お帰りなさい!御無事でしたか?」


馬から降りると手綱を引いて店主の元へと向かう。


「ええ、この馬のお陰でとても助かりました。」


「いいえ、こんなじゃじゃ馬でも、お役に立てれば幸いでした。」


手綱を手渡し馬屋を後にしようとして服の裾を引っ張られる。

なんだ!?と振り向くと、馬が裾を咥えていた…。


ブルルゥゥゥゥ!!


行っちゃ、やッ!と言う様に馬が鳴く…。

ガシガシッと蹄で地面を掻き鳴らす。

それを見て馬屋の店主が笑う。


「ハハハッ!旦那、随分と懐かれましたね。如何です?いっそお買い上げに成ってみませんか?金貨2枚と、お安くしておきますよ?」


「いや、流石に馬を買えるだけの持ち合わせは無いかな…?」


「そりゃあ、残念!?まあ、お金が出来た時にでも、又いらして下さいな。」


「ああ、その時はお世話になるよ。」


物理的に、俺の後ろ髪を引っ張る馬を何とか宥めて、俺達は馬屋を後にする。

次いで赴くのはすぐ隣、冒険者ギルドだ。

もう山賊捕縛の連絡はギルドに行っている筈だが、一応俺も報告をしておきたい事が有る為だ。

冒険者ギルドの扉をくぐると、ギルドは何時も通りの喧騒に戻っていた。

俺は依頼の報告をすべく、レベッカさんの居る受付へと赴く。

俺が声を掛ける前に、レベッカさんに声を掛けられた。


「あっ!?オオトリさん!やっと戻って来ました!ギルドマスターがお呼びですよ?」


「えっ!?俺ですか?何だろう?何かやらかしたか?」


「オオトリさん、山賊討伐したじゃないですか~。」


「おおっと!そうでした。」


レベッカさんと軽い漫才をしてから、ギルマス部屋へと向かう。

ペロとエリナにはギルドホールで待っていて貰う事にした。

ギルマスのヨーゼフさんと話をしている間にレベッカさんには、エリナのギルドカードの発行をお願いしておいた。


コンコンコンッ!


「ユウシです!入ります!」


ギルマス部屋へと入ると、第一声「バッカモォォォン!!」から始まる。

・・・・・・・・・・。

正味1時間!俺はギルマス部屋で正座をしている。

何故正座をしているかと言うと、お説教を受けているからである。

内容は単純。

緊急クエストの山賊討伐を一人(ペロを入れて本当は二人)で先行し過ぎたと言う事だ。

結果として、山賊は捕縛して、村人も全員無事というこの上ない結果だが…。

幾ら先行部隊として先陣切っていたと言えど、一人で山賊一味に突っ込むなんて自殺行為だ!もっと後続の部隊と連携を取れと言う事だった。

出る杭は打たれると言う事だな…。

因みにペナルティも課されるらしい…。

というか、緊急クエストは大人数で当たる場合が殆どで、多額の報奨金が掛けられている。

しかし、今回は殆どの山賊を俺一人で片付けているので、本来は俺の総取りに成るのだが…。それでは、サリオン村まで赴いたメンバー達が納得しないだろう!と言う事で俺への報奨金は没収…。

代わりにギルドからは、ランクUPと金貨2枚分相当の品を1つ与えてくれるそうだ。


「と、言う訳で、以後気を付ける様に!」


「はい…。心配をお掛けしました。」


痺れる足で何とか立ち上がると、此処からは事件の概要をギルマスに説明して行く。

山賊の分裂、敵対、謎の宗教、威圧感を放つ像、生贄の為の村民、聞き及んだ全てを説明した。


「そして、これが…。回収した像の破片です。」


俺はサイドバッグから取り出すと、包んでいた布を広げ、ギルマスに見せる。


「ふむ…。これが、その問題の像…ね。」


「今は、砕けた事で威圧感は消えてます…。」


ヨーゼフは素手で砕けた像の欠片を掴み上げ、しげしげと眺めている。


「パッと見、変わった所は無い様だな…。」


「はい…。ですが取扱いにはくれぐれも注意をしておいて下さい。何が起こるか分りませんから…。それに、この町でも、一度、似た様な像を持った男を目撃しています。気を付けておいた方が良いでしょうね。」


「ああ、分った。此方でも捜索と警戒はしておこう。」


「お願いします。…俺からの報告は以上です。」


「うむ!御苦労!下がって良し!」


俺は未だ痺れる足を引きずり部屋を後にした。


UPしました。

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