思いを告げる
~第七十六章~思いを告げる
「どうぞ、適当にベッドにでも腰かけて下さい。」
「は、はい。有難う御座います。」
二人の間に沈黙が訪れる。
沈黙を破るべく、エリナさんに言葉を掛ける
「「あ、あの!」」
思わずエリナさんと言葉が被る。
「あっ、えっと…、エリナさんからどうぞ。」
「えっと、は、はい。」
それから、少し、沈黙が続き、言葉を紡ぐ。
「実は、お聞きしたい事が有って…。」
「はい。何ですか?」
「山賊アジトで私を助けた時なんですが…。」
「…はい。」
何か有ったかな?
「その…。「俺の…、女に手を出すな!」って…、ユウシさんが…。」
……言ったかな?アハハハ…。はい…、言いました。
だって、状況が状況だったし、つい流れで、ポロッと…ねぇ。
気恥ずかしいので、適当に誤魔化そうかとも、思ったが、エリナさんの目は真剣だ。
「はい。…言いました。」
「それは、その…、そう言う意味で捉えて良いんでしょうか?」
「ええ、そうですね。」
またも、沈黙が二人の間に訪れる。
沈黙を破ったのは又してもエリナさんだった。
「ユウシさん。ユウシさんは私の事…、好きですか?私はユウシさんの事…、好きです。」
「えっ!?」
突然の告白に少し戸惑う。
「さっきのお話…。私は、ユウシさんと一緒に行きたいです。でも、此処から離れる事を怖がっている私も居るんです。だから、私に理由を下さい。私を…ユウシさんの女にして下さい。」
エリナさんは真っ直ぐな瞳で俺を見る。
「俺なんかで良いんですか?」
「他の誰でも無い、ユウシさんが良いんです。」
「エリナさん…。」
「エリナ、と…、呼んで下さい…。」
「…エリナ。」
「…はい。」
見つめ合う二人…。
二人の唇は互いを惹き合うかのように触れ合うと、そのまま、エリナさんの体をベッドへと押し倒すので有った…。
翌朝、微睡の中で両腕に掛かる重みを感じ、目を醒ます。
瞳を開けると、左腕を枕にする、エリナさ…、エリナと目が合う。
「お早う御座います。」
「お早う、…エリナ。」
軽く触れ合うだけの口付けを交わす…。
右手でエリナに触れようとして、違和感を腕に覚える。
…重い。
何だ?と右腕を見ると…。
ペロだ…。
ペロが右腕を枕にして寝ている。
……慌てる事は無い。大丈夫…大丈夫!
自分の心に言い聞かせる。
実は昨日、エリナにこの世界の婚姻に付いて聞いているのだ。
この世界、夫に甲斐性さえ有れば、一夫多妻はOKらしい…。
実際、昨晩、事に入る前にエリナには、俺とペロの関係を説明してある。
当のエリナは、はい、そうですか。と言った感じの反応だった…。
実際には、ペロの身分が奴隷だった事(出会った時に、俺のお手付きであると確信していたらしい)と、村人を助けに来てくれた事、更に俺へ好意が本物という事柄から悪い印象は持っていなかったそうだ。
問題はペロの方である。
全くの事後承諾で申し訳ないのだが、ペロ曰く、実力の有る男がハーレムを作るのは当たり前だと、逆に力説されたので、問題は無い様である。
「じゃあ、御主人様!エリナさんもこれからは一緒に行くのですね?」
「ああ、そうなる。」
「あ、あの、ペロさん。これから、よろしくお願いしますね。」
「はい!これからよろしくお願いします!エリナさん!」
ペロは、同年代の女の子が一緒に来るのが嬉しいのか、エリナに飛びついて、エリナを困らせている。
俺達は出立の為に着替え終わるとエリナさんを連れて村中を挨拶の為、回る。
村長宅を始め、村の家々、そして教会へとやって来て、司教様に挨拶をする。
「そうですか…。この村を出て行きますか…。」
「はい、すみません。村の立て直しで忙しい時に…。司教様にはお世話に成ってばかりで、碌に恩をお返しする事も出来ずに申し訳ありません。」
エリナは深く頭を下げる…。
「頭を上げて下さい。シスターエリナ。」
「ですが…。」
「良いのですよ。私は、友のゴータス亡き後、貴方の事を本当の孫の様に思って来ました。そんな貴方が選んだ殿方と一緒に歩みたいと思えた事を、私は祝福しますよ。」
司教様は俺に向き直ると、頭を下げる。
「ユウシ様。シスターエリナの事をよろしくお願い致します。」
「はい。分りました。」
その後、エリナは教会のシスター達と別れ挨拶を交わすと、教会を後にした。
去り際に、司教様の瞳に涙が浮かんでいたのは、気のせいでは無いだろう。
その後、村の集合墓地へと向かう。
ゴータスさんへと報告する為だ。
ゴータスさんのお墓の前に来ると、エリナがゴータスさんのお墓に語り掛ける。
「おじいちゃん。私、ユウシさんと一緒にサリオン村を旅立つ事にしたよ。危険な事も有るかも知れないけど、何とかやってみるね。見ていて下さい。」
そう言うと、お墓に祈りを捧げる。
俺も報告しておこう。
「ゴータスさん。エリナさんは、ちゃんと幸せにするから!」
そう言うと、エリナに習って祈りのポーズを取り、冥福を祈る。
お墓参りも終わり、戻ろうかと、後ろを向いた時に一陣の風が吹き抜ける!
何となく、「頼んだ!」と、言われた気がした…。
「さあ、出立だ!」
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