1対2 「ユウシ対弓・盾」
~第七十二章~ 1対2 「ユウシ対弓・盾」
カッ!カカッ!
俺目がけて飛んでくる矢が、盾にした木に突き刺さる!
中々の命中精度だ、視認できるギリギリの距離から射掛けて来る!
相手との距離を詰めよう近寄るが、近づいた分だけ信者は逃げる…。
俺達は弓を打ち合いながら森の中を追い掛けっこしている状態だ!
そんな俺の前に盾を持った信者が踊り出る!
「これ以上は進ません!!私は、¥;*様から全ての攻撃から身を守る「自動防御」の力を…!?」
「邪魔だ!!」
サイドバッグから取り出した「聖騎士の斧槍」を振るい、斧の部分で盾を構えた信者を盾ごと切り裂く!!
自動防御!?そんなの「防御貫通」の前では無意味だろ?
自分から切り裂いてくれと言ってる様な物じゃないか!
盾信者の相手をしている隙を突いて弓を射掛けて来る!!
「甘い!」
咄嗟に剣を抜き、払い落す!
払い落した矢にはドロリと何かが付着しているのが見て取れた。
恐らくこれが、毒と、麻痺毒なのだろう…。
この矢だけは受けては不味い!
木の後ろに隠れ様子を伺う…。
ポッ。と突然、森の暗闇に明かりが灯る!
なんだ!?と思った瞬間!!明かりが俺目掛けて飛んで来るのが見て取れた!?
カッ!
音を立てて木に突き刺さる!これは…、火矢だ!
「森の中で火矢なんか使うんじゃねぇ!!」
俺の非難を無視する様に弓使いは火矢を辺りにばら撒き始めた!!
枯草に引火して、所々火が上がり始める。
「不味い!このままじゃ火事になるぞ!?アクア!!」
咄嗟に水魔法「アクア」を用いてバレーボールサイズの大きさの水球を作り、周りの炎を続々と消火してゆく!!
辺りに木が燃えるツンとした臭いと共に煙が辺りに立ち込める…。
煙が立ち込める事で視界が悪く成ってしまった!?
「もしかして、これが狙いか!?」
相手は元々、瞳を用いて此方を補足している訳ではない…。
此方側に一方的に不利な状況だ…。
「とか、思ってる間に見失った…。」
このままでは又、不意の一撃を貰ってしまう!
背後を取られない様に背中側は樹木に預けて慎重に行動する…。
ヒュン!
風切り音!咄嗟にその場を飛び退く!
煙の中、風穴を開け、トスッ!と今まで立っていた場所に矢が突き刺さる!
「危ない!?風切り音が無かったらやられていた!!」
しかし!今の射撃で大体の場所は分かった!
俺は煙の立ち込める中、矢が飛んで来た方向へ走る!!
「居た!!もう逃がさないぞ!!」
俺がそう言うと弓使い信者は逃げずにその場でパチパチと手を叩く。
「素晴らしい!私の必殺の矢を受けても死なぬ強靭な身体…。毒に侵されてもなお、立ち向かう胆力…。獲物を追い詰める機動力!どれを取っても素晴らしい!」
「何を言ってる!?」
「決まっているでしょう?狩りの話ですよ?互いが互いに殺しあうそんな刹那の瞬間が最も血沸き肉躍ると言うものです!しかし、私が¥;*様から授かった力は「麻痺矢」でした…。ですが麻痺矢による一方的な狩りに私は納得してはいないのですよ。しかし!貴方は麻痺矢でも屈しない!障害を乗り越えてなお私を追い詰める!!私にとって貴方は最高の獲物であり、狩人なのです!!後は…私を殺せるだけの手腕が有るかどうかでしょうか?」
そう言って再び弓使い信者は森の中に身を隠す!
咄嗟に矢を射掛けるが木々が邪魔で弓使いまで届く事は無かった。
「畜生!木に防がれた!」
幸い弓使いは近くの木を背に隠れているのが、木々の隙間から確認できるのだが…。
「木々の隙間を狙って撃つしか無いのか!?」
やってやろうじゃないか!!
俺は弓を引き絞る!
「…立った状態じゃ体が固定できない!」
俺は片膝を地面に付け体を固定すると、狙いを付ける為に集中する…。
弓は限界まで引き絞り、構えたままだ。
しかし、そこで違和感に気が付いた。
「MPが徐々に減っている!?」
10…20…30…40…。
MPが10づつ減少している、それに比例するように魔法矢からキィィンと甲高い音が漏れる?
これはもしかして…、矢が魔力を溜めているのか?
MP50に達した所で矢がパチパチと音を立て始める!
これ以上は危険か…。
狙いを弓使い信者に合わせ、限界まで引き絞った矢を放つ!!
キュゥン!
放たれた矢は目に追える速度では無かった!?
まるで光線!そう言っても差支えの無い速度だった…。
矢は信者の体を貫いていた…、身を隠していた直径50cm程の樹木ごと…。
「か、貫通した!?なんて威力だよ!?」
『スキル:チャージショット(弓)を取得』
メッセージ画面が現れスキルを取得した事を知らせる。
なるほど、やっぱり魔力を溜めていたのか…。
しかし、今は戦闘中だ!
俺は信者の生死を確認する為に、急いで信者の倒れる場所に走る!
信者は大穴を胸に開けられ、完全に息絶えていた…。
その死に顔は何処か満足そうな笑みを浮かべていた…。
きっとこの男は戦いの中で自分の死に場所を探していたのだろう…。
何となく、会話の節々からそんな事を感じさせる物が有った…。
まあ、俺の勝手な想像だけど…。
「戻ろう…。まだグラップが残って居る。ペロやエリナさんが心配だ。」
思いの外、弓使いを追って森の奥まで入って来てしまったのが悔まれる。
手早く「チャージショット(弓)」にSPを振り分けると、俺は元居た場所へと戻るべく森の中を走りだした。
ちょっと最近設定が甘くなってきてる様な気がする…。
勢いで書く物じゃないね。
プロットはやっぱ大事だねぇ。




