1対2 「バンス対斧・槍」
~第七十章~1対2 「バンス対斧・槍」
戦端を開いたのは、弓を使う野郎だ…。
あんな奴、以前の山賊団に居たかな?
今、此処にいる奴ら…、グラップの奴以外、俺は見覚えが無い!
しかし、グラップの変貌を見れば、他の奴らも見る影は無いのかも知れない…。
仮に山賊団に居た奴らだったとしても、精々下っ端の俺が気にも留めない様な奴らだった筈だ。
「それが、何でこんなに強ぇえんだ!?」
今俺は、かつて部下だった筈の二人を相手にしている!
それぞれに斧と槍を携えている!
名前も覚えていない奴らだ!適当に斧と槍と呼ぼう…。
それよりもこの二人!強い!
斧の奴は攻撃方法こそ振り回すだけで単調だが、とにかく一撃が重い!!
細い体の何処からこんな力が出るのか解らない!?
下手に剣で受け止めると、剣ごと叩き切られそうだ。
槍の奴は、攻撃が遮蔽物を貫通して来やがる!?
森の中、樹木を盾にするが、そんなの全く意に介さず槍で突いて来る…。
正直、避けるので精一杯だ!
そんな俺に、斧と槍が語り掛けて来る。
「頭領。…いや、バンス!逃げ回るだけかよ?俺っちの力にビビったのか?」
「所詮、アンタは旅人から金品を奪うだけで人も殺さない甘ちゃんなのさ!そんな、甘ちゃんに俺達は倒せない!!」
「なんせ、俺っち達は、グラップ様の計らいで、¥;*様から全てを見通す目「闇心眼」と個別に俺っちは「剛力」を授かったんだから!」
「俺は、「貫通」を授かった。俺はこの力で、もっともっと、暴れてみたい…。」
聞いても居ないのにペラペラと良く喋る奴らだ!
「いいから、喋ってないで掛かって来い!!俺はまだこの後、グラップの奴に落とし前付けなきゃいけないんでな!!」
「ッ!?分かった…。すぐ終わらせてやるよ。お前の命をな!!グチャグチャのミンチに成れや!!」
斧の奴が襲い掛かって来る!
しかし、斧は極端に武器のリーチが短い、躱すのは簡単だ!
俺は斧の野郎の攻撃を躱し続ける!
幾ら馬鹿力が有っても当たらなければ意味は無い!
「畜生!何で当たらねぇんだ!?当たれば一撃でミンチに出来るのに!!お前も手伝え!!」
斧が槍に呼び掛けると、槍はやれやれと言う感じに肩を竦ませて、参戦して来る。
「頭領…。俺は別にアンタに恨みが有る訳じゃ無いんだが…、まあ、死んでくれや!」
猛烈な勢いで槍を突いて来る!
槍を躱す為に大きく後ろに飛ぶ!
これで斧の攻撃は届かなくなったが、槍のリーチが長いので今度は迂闊に近付けなく成った…。
如何するかな?
槍の攻撃を捌きながら考える…。
「まあ、考えても解らん!とにかく攻撃だ!成る様に成る!!」
元々俺は、頭を使うのは苦手なんだ!!
「ふんッ!!」
俺の体を突き刺そうと突き出した矛先をガシッと掴む!!
「なっ!?なにを!?」
突然槍を掴まれ、慌てふためく!
必死に引き戻そうとするがそんな事を俺が許す筈が無い!!
「ふんっ!!」
俺は剣を振り上げると、突き出されたままの槍へと振り下ろす!
パキンッ!と槍は奴の手元から綺麗に切断された。
今、槍の奴が手に持っている槍には、矛先の無い!
幾ら、貫通する槍でも、矛先が無ければ、只の棒だ!
「な、なに!?」
武器を破壊されて慌てる槍使い!
武器を失って不利と悟ったのか、後ろに下がろうと一瞬動きが止まる。
俺は一瞬の隙を逃しはしなかった!
「下がらせねえ!!」
「グゥ!ガハッ!?」
咄嗟に槍を握り直し、槍使いに突き返す!!
槍は体に深々と突き刺さり槍使いの命を奪い取る!
「隙有!!死ねやぁ!!」
斧が俺の攻撃の隙をついて真上から切りつけて来る!!
槍を突き刺さす為に踏ん張り過ぎた為、回避が間に合わない!
「チッ!!受け止めてやるさ!」
俺は剣を横に構え、受けの姿勢を取る!!
次の瞬間!
上空より超重量が襲い掛かって来る!!
ガチィーーーン!!
金属がぶつかり合う音が響く!!
「グググッ!?ハッ!!」
剣を斜めにして刃を滑らせて斧を受け流す!!
斧は勢いよく地面に斧を叩き付ける!
しかし、斧の攻撃に耐えきれなかったのか剣がパキンッと折れてしまった!
折れた刀身はトスッと地面に突き刺さる。
「これでアンタは武器を失った!このままミンチにしてやるよ!」
斧は威勢よく叫んでいるが、地面から斧を引き抜くのに少し手間取っている隙を俺は見逃さない!
「誰の武器がもう無いって!?」
俺の左手には短く成った槍が一本…。
咄嗟に槍使いの体から引き抜いた槍だ。
「おいおい…。マジかよ…。ちょ、ちょっと待っ、グェ!?」
攻撃後の態勢を整え直す前に斧使いへと槍を突き刺す!
しかし、自慢の馬鹿力で斧を地面から無理矢理引き抜くとそのままの勢いで振り回す事で、槍が弾かれ進行方向を僅かに逸らされた!?
ついでに斧を振り回された衝撃で、俺は吹き飛ばされる!
「チッ!浅い!?」
槍は斧の肩を突き刺す程度の傷しか与えられなかった。
しかも、頼みの槍も今の一撃で完全に破壊されてしまった。
如何する!?此方は、完全に手詰まりだ…。んっ!?これは…。
「ああ…、痛っ手ぇ…。」
斧は肩に突き刺さった矛先を引き抜くとゆっくりと俺に近づいて来る。
自分の血をペロリと舐め取ると、ニヤリと笑う。
「血は良いよな。温かくって…、自分の血も悪くないけど、やっぱり他の人間の血の方が温かさを感じられて俺っちは、大好きだ!!」
斧使いは俺の元へとやって来ると、高々と斧を振り上げる!
「今度こそ…死ね!」
「お前が…、な!!」
斧を掲げた為に体ががら空きの状態の所に俺は地面から拾い上げた、折れた剣先を斧使いへと突き立てる!!
「何、だ?これ?ゴフッ!」
信じられないと言った表情を浮かべて自分の胸元を探る…。
「ヘッ…。やっぱり、血って言うのは、温かい…。」
そう言うと、斧使いは事切れた…。
俺は壊れた武器の代わりに斧を拾い上げると、グラップの元へと急ぐ。
すいません、明日は休載します。
続きは26日にUPします。




