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謎の像

~第六十七章~謎の像


「脱出する前に、その…、エリナさん。服を…。目の置き場に、困るので…。」


先程から、破れた服の隙間から、チラチラと白い肌が顔を覗かせるので、目の遣り場に困る。

俺は、サイドバッグから替えの布の服を取り出すとエリナさんに差し出す。


「わわわっ!?す、すいません…。」


咄嗟に破れた服の前を手で隠す。

顔を真っ赤にしながら、俺から服を受け取る。

服を着替え終えたエリナさんと、助けを待つ村人が待つ牢屋へと赴く。


「サリオン村の皆さん!助けに来ました!」


俺がそう言うと、牢屋の中から「おおっ…!」と声が上がる。


「余り大声は出さない様にして下さい。まだ、山賊が残っているかもしれませんから。」


そう言うと、牢屋の中の村人は皆して、口を閉ざす。


「今、牢屋を開けますね。開錠魔法!」


すると、牢屋の扉がカチャリと音を立てて外れる。

扉を開け中に入る。


「怪我をしている方は居ませんか?」


村人達に尋ねると、牢屋の奥に怪我人が寝かされて居た。

見た所、怪我をしているのは、男達だけの様だ。

現在の頭領グラップの指示で女に手を出すなと、山賊達は命令されていたが、男達については何も言われては居ないのだろう…。

話に聞くと山賊共の憂さ晴らしに痛め付けてられていたそうだ。

数人は小ヒールで回復出来たが、残り三人の傷は、小ヒールでも癒せない程深い!

正直まだ生きているのが不思議になる位だ!

三人の内、一人の傍に、男の子が寄り添って心配そうに此方を見つめている。

男の子が口を開き、懇願する。


「お願いします!お父さんを助けて下さい!」


男の子は今にも泣き崩れそうに、瞳に涙を溜めている。

子供の涙を無視するほど、俺も無慈悲じゃ無いさ!

男の子の頭をワシャワシャと撫でてやる。


「大丈夫!何とかしてみるよ。」


俺はサイドバッグからアンブロシアを三本取り出すとそれぞれ飲ませて行く。

暫くすると、男達は目を醒ました。

村人の体力が心配だったが無事、回復出来て良かった…。


「あ、ありがとうございます。」


男の子が頭を下げて、お礼を行って来る。

下げた頭から涙が零れ落ちているのが見て取れる。

そんな男の子をみて、ホッと胸を撫で下ろす、失敗しなくて良かった…。


怪我人の治療を終え、俺は脱出の為に男達に武器を配る。

村人の数が多く、俺一人では手が回らないからだ。

ちなみに深い怪我を負っていた三人は、無事だった他の男達に背負われている。

準備を整え終わり、広間を後にする俺達。

先頭を進んで山賊が潜んで居ないか通路の分かれ道を確認する。

すると、通路の向う側に大きな扉を発見した。

まだ、入った事の無い部屋だな…。

村人達を少し待たせて、部屋の確認に向う事にした。

山賊が残ってて、後ろから襲われても困るしね。


「ユウシさん!私も行きます。」


エリナさんが俺の後を付いて来る。

まあ、近くに居てくれる方が守りやすいかな?


「分りました。俺の傍を離れない様にして下さい。」


俺とエリナさんは大きな扉へとむかうと、扉に耳を当て中の音を拾う…。

無音…。

ソッと扉を開けると、人の姿は無かった。

他の部屋等に比べて上等な家具が並べられている、あくまで、山賊基準だが…。

広間は壁で二部屋に分かれている様だ。

恐らく山賊の頭領の部屋なのだろう。

もう一部屋は、差し詰め寝室と行った所か?

扉をガチャリと開くと途端に部屋の内部から死臭?が立ち込める!


「ウッ!?スゴイ臭いだ!」


部屋の内装は寝室では無かった…。

部屋の中央にはベッドらしき寝具の他、家具らしい物は何も無い…。

ベッドらしき…、とは布団等は敷かれておらず鉄板が敷かれており、ベッドの支柱には、手足を拘束する為と思われる鎖が見える…。

更には、このベッドに付いたおびただしい黒いシミは…血か?

壁の窪みには、異様と言える程の威圧感を放つ像が飾られている…。

食堂に居た山賊が、グラップの奴が怪しい宗教にのめり込んでいるって話をしていたが、カルト教団だったか…。


「ユウシさん。何か有りましたか?」


入り口で立ち尽くしている俺を心配してエリナさんが此方に近づいて来るので、此方に来ない様にお願いしておく。


「しかし、この像…。気に成るな…。」


何の像か、全く分らないが、妙にこの気持ち悪い像が気に成る。

盗賊の鑑定眼で確認しようとしたが…。


『像・¥;*像・LV:?・ΣθφΔ・買取不可』


「何だ、これ?」


気味の悪い像を鑑定しようとしたら、出て来た説明文が文字化けしている?


「おかしいな?今までこんな文字化けする事は無かったんだが…。」


試しに他の物品を調べて見ると普通に鑑定出来た。

やはりこの像だけ鑑定眼が通じない…。

マジマジと眺めていると、この気味の悪い像、どこかで見た記憶が有る様な気がして来た。


「こんな気味の悪い物、何処で見たかな?」


記憶を手繰り寄せて思い出してみる…。


「…あ!思い出した!サリオンの街の曲り角でフード男に衝突した時に男が抱えていた像だ!」


しかし、フード男の持っていた像は此処までの威圧感は発してはいなかった筈だ。

それに男に会ったのは、昼間の事だ。

時間的に考えて此処に持って来る事は出来ない筈だ。

男の抱えていた像と、棚に飾られている像は別物だろう。

それよりも、この像は回収しておいた方が良い様な気がする…。

像に手を伸ばし掛けて、躊躇をする。


「何だか…、呪われそう…。」


そう思える位、禍禍しいのだ。

俺は皮手袋を装備し、宝物庫から回収していた厚めの布をサイドバッグから取り出すと、直接像を触らない様に梱包して回収した。

これ以上は、此処に留まる理由は無いだろう。

部屋を後にして、村人達を連れて外へと向かい歩き出す。


洞窟を抜けだすと、バンスとペロが入り口で待っていてくれた。

二人の足元には山賊達が数人転がっていた。

数人は生きて捕らわれている、恐らくペロが捕まえたのだろう。

洞窟から出て来た俺を確認したペロが俺の元へと寄って来る。


「御主人様!御無事でしたか!?心配しました…。」


「ゴメン。心配させた。」


俺はペロの頭をナデナデと撫でてあげると、嬉しそうに尻尾を振る。

そんなペロとのやり取りを見たエリナさんが俺に聞いてくる。


「あ、あの…。ユウシさん。此方の方々は…?」


バンスの事は簡単に説明してから、俺はエリナさんに紹介するべく、ペロを前に立たせる。

俺が紹介するより早く、ペロが自己紹介を始める。


「初めまして。ペロ・シーバと言います。御主人様の奴隷をしています。ギルドの依頼で村人の皆さんを助けに来ました。」


「えっと、御主人様って…?」


エリナさんが疑問符を浮かべ俺を見て来るので、ウンッと首を縦に振っておく…。


「え、あ…、そ、そうですか…。」


何だろう?エリナさん少し元気が無い様だ。

無理も無い、さっきまで捕まっていたのだ、肉体的にも精神的にも限界が近いだろう…。

だが、もう少しだけ、頑張って貰わないと…。

俺は、バンスに状況を確認する。


「バンス。そっちの状況を教えてくれ。」


「こっちは、楽なもんだったぜ。洞窟全体に響く程の爆音を鳴らしたのに、下っ端の数名が出て来ただけだ。その場で返り討ちさ。中で、何かやったな?」


「ああ、今頃、殆どが食堂で泡喰ってる最中だろう。」


ペロとエリナさんの頭には?マークが浮かんでいたが、バンスに至っては「アア!ナルホド!」と納得している。

しかし、バンスが言葉を続ける。


「で、グラップの奴は居たか?」


「いや、そんな奴には会わなかった。留守だったのかな?」


そんな筈は無いんだがな?とバンスが呟いている、が今は村人達の避難を優先させなければ!

バンスに先頭を任せ、ペロに中央を、俺は最後尾で殿を請け負う形で村人達を連れ、森の中を行進する。

一番後ろを付いて行く俺の隣にはエリナさんが並んで歩く。


「そう言えば、ユウシさん。」


「はい?何ですか?」


「私まだ、助けて貰ったお礼を言って居ませんでした。…助けて戴き有難う御座います。」


エリナさんは俺に向い、深々と頭を下げてお礼を言う。


「ど、どうぞ頭を上げて下さい!?エリナさん!俺は大した事はして無いんですから!」


「そんな事は、有りません!ユウシさんが来てくれ無かったら私は…。貞操を、奪われて居たでしょう…。」


頭を下げたままのエリナさんの肩はフルフルと震えていた。

強気に振る舞ってはいるが、エリナさんはまだ年端の行かぬ少女だ。

こんな目に合えば当然怖いだろう…。

その後、何とか頭を上げて貰い村人達の列に追いつこうとして、並んで向かおうとして気が付いた!!

スキル:視線感知に反応が有る!

殿である俺の後ろから、視線が一つ飛んで来るのが分った瞬間、ヒュッ!と風切り音!!

咄嗟に妖精の剣を引き抜き、飛んで来る矢を払い落とす!


「敵襲!!エリナさん!逃げて下さい!ここは、俺が食い止めます!行って下さい!」


そう言ってエリナさんの背中を押して、村人達の群れへと送り出す!


「は、はい!」


少し強めの口調で退避を促すと、エリナさんは素直に他の村人の元へと向かって走り出す。

直後、エリナさんに向って矢が放たれる!

しかし、既に予想済み!飛んできた矢は全て剣で払い落す!

やがて、無駄と悟ったのか、木々の間から、一人の男がゆっくりと姿を現す…。


なんと、スギ花粉は起き上がり仲間に成りたそうに此方を見つめている。

仲間にしますか?

 はい

⇒いいえ

スギ花粉は寂しそうに去って行った。

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