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助けに来たよ

~第六十六章~助けに来たよ


牢屋は広間の半分を利用した中々に大きな物だった。

中には村人と思しき人達が監禁されているのが見て取れる。

牢屋の外には山賊の男が数人監視をしている。


そんな中、一人の幼い女の子が泣き出した。


「ウッ…、ウエェェン…。オウチにがぇりだぁいぃよぉ…。ママぁぁ…。」


「うるせぇぞ!!糞ガキ!黙ってろ!!殺すぞ!?」


女の子の泣き声が気に障ったのか、山賊の一人が格子越しに怒声をぶつけ、格子をガンッ!と蹴り付ける!

子供は、恐怖の余り、泣く事も出来ず、ウゥ…。と嗚咽を飲み込んでいる…。

今、山賊を刺激するのは子供に危険が及ぶか…、もう少し隙を窺おう!


「子供相手に、怒鳴り散らさないで下さい!怖がって居るじゃないですか!おいで、ユニィちゃん。」


山賊を相手に、キッ!と睨み付け、抗議している女性が居る、あれは…、エリナさんだ!

如何やら無事だった様だ。

内心、エリナさんの無事にホッと胸を撫で下ろす…。

ユニィと呼ばれた少女はエリナさんの胸に抱かれ、泣いている…。


「チッ!何で俺が、捕まえた村人の見張りをしなきゃいけねぇんだよ!?グラップさんの指示で、女共を犯せねえし!見張りの役得が何にも無ぇ……。一人位なら、いいか?」


山賊はユニィちゃんを慰めているエリナさんを一瞥すると、ベロリと舌舐めずりする。


「おい、其処の女!生意気な口聞いた罰だ、俺等の相手しろよ。糞ガキ、殺されたく無いだろう?」


山賊の言葉に、俺は黒く冷たい殺意が湧き上がる…。

エリナさんは向けられた悪意に恐怖し、睨みつける様な視線を山賊から離す…。

そんなエリナさんの恐怖を理解しているのか、山賊数人は「キヒヒッ!!」と笑いをもらす。

ユニィちゃんがエリナさんを見上げて心配そうな顔をする。


「エリナおねえちゃん…。だいじょうぶ?」


「うん。大丈夫、大丈夫だからね。ユニィちゃん。」


エリナさんは抱かかえていたユニィちゃんをギュ!抱きしめると近くの人にユニィちゃんを託し、山賊に連れられ牢屋を出る…。

震えるエリナさんを舐める様に見て、山賊の男はニヤニヤと笑みを浮かべて見ている…。

素早く山賊の一人がエリナさんの後ろに回り込むと、抵抗出来ない様に羽交い絞めにする。

突然の拘束に軽く抵抗するが、女性の力では振り解けないと悟ると、抵抗を止める。

エリナさんの服に手を伸ばし山賊が呟く。


「そうそう。大人しく言う事聞いてりゃ、いいんだ、俺は、お前みたいな気の強い女が好きなんだ。そして、そんな女を無理矢理に組み敷くのが大好きなのさ!!」


「キャアァァァ!?」


山賊は服の襟首から、無理やりに服を破く!

このっ、野郎っ!!

俺はエリナさんの危機に通路から広間へと飛び込む!


「何だ!?テメェ、何者だ!?」


山賊の一人に見つかる!

何も考えずに飛び込んでしまった!

エリナさんのピンチだったのだ、仕方が無い!

見つかってしまった以上、隠密を続ける理由は無い!

それに、このままご丁寧に時間を掛けて一人ずつ気絶させる様な時間は無い!

仲間を呼ばれると厄介だ!

村人達を人質に取られ兼ねない…。

此処は先手必勝!

サイドバッグから、先程宝物庫で回収した短剣を取り出すと、山賊に目掛けて投げ付ける!

ドスッと音を立て短剣が突き刺さり、山賊が倒れる!

部屋を見渡すと、見張りの山賊は、残り三人。

突っ立って傍観して居た男、エリナさんを羽交い絞めにする男、そして、エリナさんに乱暴しようとした男だ!

最初に傍観して居た男が、襲撃者を知らせる為、笛を取り出したので、間髪入れずに短剣を投擲して、沈黙させる!


「ち、畜生!テメェ、絶対ぶっ殺す!!」


仲間を殺されて逆上した山賊が剣を抜いて襲い掛かる!

俺も剣を引き抜こうかと思ったが、如何せん洞窟の内部は天井が低い…。

山賊の持つ剣は、「カットラス」と言ったか?

狭所での使用を前提に作られた剣の様で、取り回しが良さそうだ。

仕方なく俺は腰の短剣「闇烏」を引き抜き応戦する!

キンッ!キンッ!と短剣と剣がぶつかる金属音が広間に響く!

幸い、俺の持つスキル「短剣術」のお陰か、山賊の剣を捌く事は容易だった。

しかし、剣と短剣では、リーチに差が有る為、思う様に山賊の懐に潜り込めない!

俺は、無理に距離を詰める事を止め、サイドバッグから、短剣を取り出すと、山賊に向って投擲する!


「甘ぇ!」


山賊は剣で飛んで来た短剣を叩き落とす!!

しかし…!


「グッ!?」


山賊の右手の甲には短剣が突き刺さっていた。

山賊は叩き落とした筈の短剣が自らの手の甲に刺さっている事に戸惑いを隠せない!

単純な事、単に俺が最初から二本の短剣を投げ付けていたのだ。

もちろん、只、投げただけでは、無い!

投げた短剣の影に隠れる様に重ねて投げたのだ、しかも、ご丁寧に黒い色の短剣をだ!

山賊は短剣を右手の甲に受けた際に持っていたカットラスを取り溢している!

好機!

俺は一気に山賊との距離を縮めるとそのままの勢いで短剣を山賊へと突き立てる!

山賊は低く「グッ!?」と呻くと、そのまま事切れた。

この間、僅か数秒の出来事…。

エリナさんを羽交い絞めにしている山賊は、俺の襲撃に全く対応出来ず、未だエリナさんを拘束したままだった。

しかし、残った山賊が自分一人で振りを悟ると、エリナさんの拘束を強める!

余りに強い力だったのか、エリナさんが苦しそうに呻く。


「ち、近寄るな!近づいたら、この女を殺すぞ!?」


迂闊に身動きが出来なく成ってしまった…。

短剣を投擲するにしても、エリナさんを盾にされては投げられない!

俺が手を拱いていると、山賊はエリナさんを盾にしたまま、俺を大きく迂回して通路へと向かう…。

通路への出口を目視確認する為、山賊の視線が一瞬だけ通路を向いた。

瞬間!隙を突いて、ガブッとエリナさんが山賊の手に噛み付く!!


「ギャア!?」


山賊はエリナさんの拘束を解く!

エリナさんは俺の方へと走り寄ろうとするが、人質は逃がさないとばかりに追って来た山賊に手を掴まれる!

そこに一閃!!


「グッゥ!」


叫んだのは山賊!

エリナさんが拘束を引き剥がした瞬間!エリナさんと盗賊の方へと駆け出し、エリナさんを捕まえた山賊の腕を切り付けたのだ!

切り付けた痛みからエリナさんの腕を掴む力が無くなり、エリナさんは解放される!

人質を失った山賊は、そのまま逃げだそうとしたが、そんな事は俺が許さない。


「俺の!」


逃げようとする山賊の後ろ髪を掴み、強引に引き寄せる!


「女に!」


右手を握り締めて力を溜める!


「手ぇ出してんじゃねぇ!!」


渾身の右ストレートを顔面に叩き込む!!

山賊はそのまま、気を失い、地面に突っ伏した…。

山賊が地面に突っ伏した瞬間、メッセージ画面が現れる。


『LVUP!! 15→17』


山賊の気絶を確認した俺はエリナさんの元へと向かう。

エリナさんは信じられない物でも見る様に俺の事を見ていた。


「えっ…と。ユ…ウシさん?ですか?で、でもどうし…っ!?」


俺はエリナさんの元へ駆け寄ると、エリナさんが言い終わる前に、その身を抱きしめる!


「無事で、良かった…。」


エリナさんは行き成り抱きしめられた事に驚いていたが、しばらく抱擁を受け入れてくれた。

互いに落ち着いた所でエリナさんが口を開いた。


「ユウシさん!ユウシさんは、何でこんな所に居るんですか!?」


何で?決まっているさ。


「助けに来たんだ!皆でサリオン村に帰ろう!」


ノラギツネは空気清浄機を作動した。

スギ花粉A・B・Cに大ダメージを与えた!

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