聖者様?
~第六十二章~聖者様?
エリナさんが山賊に捕まった!?。
ゆっくりと手を拱いては居られない状況に俺は踵を返し教会を出て様とする!
「急いで助けに行かないと!!」
「お待ちください!!ユウシ様!」
慌てて教会を後にしようとする俺に声が掛かる!?
声を掛けて来たのは教会の司教様だった。
「お待ち下さい、ユウシ様。今、村の者が、山賊の後を追い、住処を探っています。今しばらく、お待ちを…。」
そうだ…、山賊を追おうにも、山賊が何処に行ったのか解らない…。
ここは、司教様の言う通り、偵察に出ている人を待つ方が得策か…。
「すいません。司教様。取り乱してしまいました…。」
「いいえ、取り乱しもしましょう。私達も連れ去られた人達の事が、心配ですから…。それよりも、お久しぶりですね。」
「はい、お久しぶりです、司祭様。俺達は、冒険者ギルドで、緊急依頼を受けて、此処に来ました。」
「おお、無事に、知らせは街に届いたのですね。お二方だけですか?他の方は…。」
「俺達は、一足先に此処に来まして…。夜には、第二陣が来る筈です。」
「そうですか…。私達だけでは、連れ去られて村人を奪還する事は出来そうに有りませんから…、助かります。」
俺達は、偵察に出ている村人が戻るまで、教会で村人達の怪我の治療に当たって時間を潰す事にした。
「小ヒール!」
魔法が、村人の傷口を塞ぐ。
「兄ちゃん、ひょっとして、キラービーの時の兄ちゃんだか?」
「はい、そうですよ。」
俺がそう返事をすると…。
「聖者様だ…。」
誰かがポツリと呟く。
途端!!
「聖者様だ!」
「何!?聖者様だって!?」
「聖者様!」
村人に詰め寄られる!?
え!?なに!?どういう事!?何で俺が聖者様?
「聖者様!お願いします。連れ去られた私の子供を助けて下さい!」
「俺の女房をお助け下さい!」
「落ち着きなさい、皆さん!ユウシ様がお困りですよ。」
司教様が村人を嗜めると、俺から村人は離れて行く。
俺は司教様に事情を窺う。
「あの…、何で俺が聖者様なんて呼ばれて居るんですか?」
司教様は俺に説明してくれた。
何でも、キラービー騒動の時に、子供達の無事を祝う為に祭りを開く事に成ったのだが、主役の俺の姿が無い事に気が付き、大騒ぎだったそうだ。
奇跡を起こし、お礼も受け取らないまま姿を消した俺の事を、村人は口々に聖者様と呼ぶ様に成ったとか…。
……まあ、別に何と呼ばれようと構わないけどね…。
「聖者様か…。」
重い!重すぎる肩書だ!そんな大層な人間じゃないよ!
俺は手を顔に当て、項垂れる…。
そんな俺を見て司教様は声を掛ける。
「あの…ユウシ様?」
「あ、いえ、何でも有りません。気にしないで下さい。」
悩んでいても仕方が無いだろう。
取り敢えず治療を終えてしまおう。
一通り治療を終えると、一人の村人が教会に飛び込んで来た!
「わ、分ったぞ!山賊の住処!」
俺は村人に詰め寄り情報を聞く!
「どこだ!?村人は何処に連れて行かれた!?」
「あ、ああ、エ、エルフの森だ!エルフの森の奥だ!奴ら、バンス山賊団の一味だ!」
バンス山賊団…。
懐かしい名前だ。
俺がこの世界に来て初めて襲われた山賊集団だ。
確か、顔に傷が有る熊の様な大男が、バンスと言ったか?
コイツ等に追われて、崖から落ちたのは良い思い出だ…。
サイドバッグから、地図「旅人の軌跡」を取り出して、住処の大体の場所を聞くと、教会の出口に向かう。
「行かれるのですか?」
司祭様に話掛けられる。
「はい!場所が判明した以上、ぐずぐずしては居られませんから。」
「…分りました。どうぞお気を付けて…。教会は、村の男衆で守りますから。」
俺とペロは馬に跨り、日の暮れ始めた草原をエルフの森、目指して走り出すのだった。
バレンタイン?何それ?……。(涙)




